真実を求めて Go Go

今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

宇宙の崩壊「ビッグクランチ」 シナリオ1

2013年03月10日 | 宇宙

 今日の多くの物理学者の大部分は、私たちの宇宙の真空状態 - 量子ゆらぎによって生成しては消滅する粒子を除いて何も物質が存在しない空っぽの空間 - は永久に安定ではなく、準安定だと信じている。

 もし彼ら理論物理学者の言うことが正しければ、この真空はいずれ崩壊し、宇宙は壊滅的な影響をこうむるだろう。
ただし、その気がかりな結末は、太陽が消滅し、ブラックホールが蒸発し、陽子が崩壊するよりはるか先まで訪れないかもしれない。
長期的に何が起こるか、正確なところは誰にもわからない。
さかし、現在の状態は永遠ではなく、やがて何らかの真空崩壊が起こるという見解も一部の学者では一致しているようだ。
完全に安定な真空のエネルギー、いわゆる宇宙定数は、ひも理論と矛盾すると多くの研究者は考えている。
そして、ひも理論自体もまったく証明されていないことを忘れてはならない。

 余剰次元として隠れた六次元の終末もまた、私たちの住んでいる宇宙の一領域の終末と関連があるかもしれない。
しかし、幸いなことにこの宇宙の終焉に関する決定的な実験はまだおこなわれていない。
隠れた六次元に何が起こりうるのか、それを物理学者がどう考えているのかを知るチャンスでもある。

 アンドリュー・フレイとその同僚たちは、2003年に雑誌『フィジカル・レヴュー・D』に次のように書いている。
「本論文で考察した種の[真空]崩壊は、不幸なことにそれを経験するすべての人にとって、きわめて現実的な意味で宇宙の終焉を意味する」。
考察されているおもなシナリオは二つある。
いずれも現在の状態を劇的に変化させるが、第一のシナリオの方がより徹底的で、私たちの知る時空の終焉をもたらす。

 はじめに、各点の標高が真空エネルギーのレベルに対応した緩い傾斜面の上を、小さなボールが転がるという描像をもう一度考えよう。
いまのところボールは、起伏の多いランドスケープに空いた小さなくぼみ、あるいは穴に喩えられる、「ポテンシャル井戸」と呼ばれる準安定状態に留まっている。
その穴の底でも、標高はいわば海面より高い、つまり真空エネルギーは正のままだとする。
このランドスケープが古典物理学的なものだとしたら、ボールはそこに限りなく留まっているだろう。
そこがボールの終の棲家だ。
しかし、このランドスケープは古典物理学的ではない。
量子力学的であって、量子力学が作用すると奇妙なことが起こりうる。
ボールがとてつもなく小さく、量子現象が顕著となる状況では、いわば穴の側面を掘り進んで外の世界に出てこられるのだ。
それは、量子トンネル効果と呼ばれる完全に現実の現象である。
そのようなことが可能なのは、量子力学に本質的な不確定性が組み込まれているからだ。
ヴエルナー・ハイゼンベルクが定式化した不確定性原理によれば、位置はただ一つではなく、しかも絶対的でさえない。
一個の粒子はある一カ所で見つかる可能性が最も高いだろうが、もっとありえない場所で見つかる可能性もある。
理論によれば、もしそうなる可能性があるのなら、十分長く待っていればやがてそれが現実となる。
この原理はボールの大きさに関係なく成り立つが、大きなボールではその確率はさらに小さくなる。

 奇妙に聞こえるが、現実世界でも量子トンネル効果は観測されている。
十分に検証されているその現象が、たとえば、越えられないと思われる障壁を越えて電子を移動させることにより動作する、走査型トンネル顕微鏡の基本原理となっている。
また、マイクロチップの製造過程では、トランジスターを薄くしすぎると、トンネル効果による電子の漏れによりデバイスの性能が損なわれてしまう。

 電子のような粒子が壁をトンネルするという考え方は了解できるが、それでは時空全体についてはどうなのだろうか? 
真空全体があるエネルギー状態から別のエネルギー状態にトンネルするという考え方は、確かにもっと受け入れがたいが、その理論は、一九七〇年代を皮切りにコールマンらによってかなりよく展開されている。
その場合の障壁は、壁というよりある種のエネルギー場であり、それが、真空が低エネルギーで安定なより好ましい状態へ再構成されるのを防ぐ。
その場合の変化は相転移によって起こり、それは液体の水が氷や水蒸気に変化するのに似ているが、転移するのは宇宙の大部分、おそらく私たちの住み家も含んだ部分だ。

 そこから導かれる第一のシナリオのポイントとして、現在の真空状態は、わずかに正のエネルギー値 - ダークエネルギーや宇宙定数と呼んでいるもの - から負の値へトンネルする。
その結果、現在私たちの宇宙を加速的に膨張させているエネルギーが、逆に宇宙を一点にまで圧縮し、ビッグクランチと呼ばれる凄まじい現象を引き起こす。
その宇宙の特異点では、エネルギー密度と宇宙の曲率の両方が無限大になり、原理的には、ブラックホールの中心や、ビッグバンへ時をさかのぼったときに見られるのと同じ状態になる。

 ビッグクランチの後に何が起こるかについては、何一つ予想できない。
そして、「時空に何が起こるか、ましてや余剰次元に何が起こるかは、わからない」と、物理学者スティーヴ・ギディングスは言う。
ほぼあらゆる面で、私たちの経験や理解の範疇を超えているのだ。


 真空状態の変化を引き起こすのは、量子トンネル効果だけではない。
もう一つ、熱的ゆらぎと呼ばれるものがある。

 再び、ポテンシャル井戸の底にある微小なボールを考えよう。
温度が高いほど、その系に含まれる原子や分子などすべての粒子はより速く動き回る。
粒子が動き回っていると、そのうちいくつかがランダムにボールに衝突し、どちらかの方向に押し出す。
平均では、その押し出される効果は互いに打ち消し合い、ボールはある程度安定状態を保つ。
しかしここで、何らかの統計的なきまぐれにより、多数の原子が同じ方向から次々に衝突したとしよう。
そのような連続衝突によって、ボールは穴から飛び出してしまうかもしれない。
そして起伏の多い地表へ出てきて、もし途中で別の井戸や穴に捕まらなければ、ゼロエネルギーへ転がり落ちていくだろう。

 マシュー・クレバンによれば、蒸発現象にたとえる方がもっとふさわしいかもしれないという。
「コップから水が這い出してくる場面なんて見たことはない。でも、とくに水が熱せられたときには、水分子は衝突を続け、ときどき衝突が激しすぎてコップから飛び出してくる。この熟的過程でも似たようなことが起こる」。
しかし、二つ重要な違いがある。一つの違いは、いま論じている過程が、従来、物質も粒子も存在しないことを意味していた真空の中で起こるという点だ。
それならば何が衝突するというのか?

 まず、温度は決してゼロには到達しない(膨張宇宙の特徴)。
さらに、空間は決して空っぽでない。
仮想粒子のペア - 粒子とその反粒子 - が絶えず出現と消滅を繰り返しているが、その時間間隔があまりに短いため決して捕まえられないだけだ。
そしてもう一つの違いとして、この仮想粒子の生成と消滅の過程は量子力学的であり、そのため、先ほど熱的ゆらぎと呼んでいたものには量子の寄与も含まれる。

 これで、第二のシナリオを取り上げる準備が整った。



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