仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

読書録 2024年3月上旬

2024-03-10 21:04:00 | 読書録(備忘)

3月5日
『氷川清話 付 勝海舟伝』 勝海舟(1898年) 勝部真長編 1972年

初読。
勝海舟の、名前だけは知っている著作(語録か)。
いま働いている会社が赤坂にあり、勝海舟の居宅が氷川神社の近くにあったというのも何かの縁だろうと思い、読んでみることにした。
勝海舟といえば、海軍創設者、江戸城無血開城の立役者、その程度しか知らなかったが、どうやら大政奉還の影の功労者だったようだ。坂本龍馬はその実現に向けて薩摩・長州の中を執り持ったということなのだろう。人を動かす達人だったのだな。
幕末・維新といえば人物が輩出した時代だったが、なかでも勝海舟が最も評価したのは西郷南洲隆盛だった。江戸の民を救った功績は大きいが、何よりその人物の度量の大きさを評価している。
あとは横井小楠。小楠については多くを語っていないが、その眼識に推服すると語っている。
どうも勝海舟の中には陽明学が根をおろしていたようだ。理屈や議論ではダメで、体験、行動することが重要なのだと幾度も語っている。
付属の『勝海舟伝』がよくまとまっていて面白い。

3月8日
『明治文学小説大全』 (全50篇)
明治20年(1887年)
『浮雲』 二葉亭四迷

初読。
中学の文学史で必ず登場する、言文一致体の小説。
学生時代に中学3年の国語を教えていた時にも、言文一致という当時としては実験的な試みとして教えていたにもかかわらず、読んだことはなかったのだった。
で、読んでみて。
地の文がたいそう饒舌で、まるで落語のよう。
漢語の使い方が面白い。まさに実験的なのである。例えば、
道理らしい
隠蔽そう
憤然となり
断念のよさ
熱気となり
存生らえている
嫣然
が、それぞれ、
もっともらしい
かくそう
やっきとなり
おもいきりのよさ
やっきとなり
ながらえている
にっこり
となる。
文三とお勢。いとこ同士の淡い恋物語かと思いきや、文三が失業するとすべてが一転する。
文三のうだうだとした心理描写がうざったい。
最後はどうにも尻切れトンボ。
言文一致はいいとしても、小説としては大したものではない。

3月9日 
明治23年(1890年)
『うたかたの記』 森鷗外

初読。
擬古文。格調高き言文不一致。なぜかルビは現代かなづかい。
主人公は画家の巨勢。ところはミュンヘン。
6年前に12歳くらいの菫売りの少女に救いの手を差し伸べた巨勢。
その少女に再会するのだが…
消えて迹なきうたかたのうたてき世をかこちあかしつ。

3月10日
明治23年(1890年)
『舞姫』 森鷗外

再読。
舞台は明治21年のベルリン。
主人公は官僚で官費留学している豊太郎。
高校3年だったか、現国の教科書で読んで以来だから、なんと45年振り!
覚えているのはわづかに2箇所。
冒頭の、
「石炭をば早や積み果てつ」
と、エリスが主人公と共に帰宅した箇所の、
「エリス帰りぬ」。
後者はなぜ覚えていたのかわからない。不思議だ。
それにしても、いくら短篇とはいえ電子書籍で52ページもあるのに、ほんとうに教科書に全篇掲載されていたのかな?ストーリーを全く覚えてないし。不思議だ。
エリスが豊太郎の子をやどして幸せだったのはわずかの間だった。
豊太郎が病に倒れた間に、相澤謙吉から豊太郎が帰国することを聞かされて、「我豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺き玉ひしか」と叫んで倒れ、そのまま狂ってしまったエリスよあはれ。
森林太郎はん、そらあかんやろ! 
 
 


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