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面白い日本語と英語の慣用句(イディオム)とことわざ

日本語と英語の慣用句やことわざには、表現や発想がよく似たものがある。
たとえの面白さをいろいろな角度からながめる。

面白い日本語と英語の慣用句(イディオム)とことわざ(3)

2007年11月04日 | 日本語の慣用句、英語の慣用句
 9 慣用句やことわざに見る性格・能力No.1の動物/植物は?

 (1) 最も働き者の動物は?

 働き者であることを示唆する英語の慣用句として、「work like a beaver」、「an eager beaver」、「as busy as a bee」、「work like a bee」、「work like a dog」、「work like a horse」、「a workaholic」、「a workhorse」などがある。一方日本語には「コマネズミのように働く」、「馬車馬のように働く」、「働き蜂」、「仕事の鬼」、「仕事の虫」などがある。両者で一致した働き者は「馬」と「ミツバチ」である。

 (2) 最も速く動ける動物は?

 速さを表すたとえに動物を使った慣用句として、英語には「like a bat out of hell」がある。日本語の対抗馬は「脱兎のごとく」である。「地獄から出てきたコウモリ」と「脱兎」。果たしていずれが早いのか?

 (3) 最ものろい動物は?

 英語でのろいことのたとえに使われている動物は、「at snail's pace」と「till [until] the cows come home」に見るように「カタツムリ」と「ウシ」である。後者は「長いこと、いつまでも、永遠に」の意で、搾乳の時、牛舎へのウシの戻りが遅いことから。一方、日本語では「カメのようにのろい」、「ウシの歩み」および「牛歩」に見るように「カメ」と「ウシ」がのろい動物の代表である。両者で一致しているのは「ウシ」である。

 (4) もっとも成長の速い植物は?

 「sprout like mushrooms (after a spring rain)」は何かが成長する速さを「キノコ」でたとえた英語の慣用句である。日本語にも同じ発想の「雨後のタケノコのように増える」がある。「キノコ」も「タケノコ」も非常に成長の早い植物である。

 (5) 最も大食いの動物は?

 大食いのたとえに選ばれた動物は、英語では「eat like a horse」の「ウマ」である。一方、日本語でも「牛飲馬食」と「鯨飲馬食」と大食漢はやはり「ウマ」である。「ウマ」が「大食い」であり、かつ、本項の(1)に示したように「働き者」である点は両者で一致している。英語に「eat like a pig」と「ブタ」を使った表現があるが、これは「がつがつ食う」という意で、「大食い」とはややニュアンスが異なる。

 (6) 最も小食の動物は?

 逆に英語で小食であることのたとえに使われた動物は、「eat like a bird」に見るように「鳥」である。日本語にはここに採用できる表現はないようである。

 (7) 最も生命力の高い動物は?

 「A cat has nine lives.」は「ネコ」が生命力の高いことを表現した英語のことわざである。「ネコ」が生来の敏捷、狡知のため、他の動物よりもしぶとく生きのびると考えられたことから。日本語では「ツルは千年、カメは万年」と何といっても長寿のチャンピオンは「カメ」である。ただし、「ツル」と「カメ」には「しぶとさ」というイメージはない。


 (8) 最もおとなしい動物は?

 英語でおとなしい動物のたとえとして選ばれたのは「(as) meek as lamb」と「(as) quiet as a mouse」に見るように「子ヒツジ」と「ハツカネズミ」である。これに対し日本語では「借りてきた猫のようにおとなしい」と「ネコ」が選ばれている。ただし、「借りてきた」という限定がつく。ネコは家につき、イヌは人につくというように、活発にねずみを捕るネコをかりてきても、よその家ではおとなしくなってしまって動かないことから。日本語の「猫をかぶる」も「ネコ」がおとなしい動物であることを示唆している。

 (9) 最もずる賢い動物は?

 「ずる賢い」ことを表現する英語の句として「crazy like fox」、「(as) cunning as a fox」、「(as) sly as a fox」などがある。ずる賢さの No.1 は「キツネ」のようである。一方、日本語には該当する表現は見当たらないようである。なお、「(as) cunning as a fox」は主に《英》の語法である。

(10) 最も記憶力のよい動物は?

 「An elephant never forget.」ということわざが示すように、西洋では「ゾウ」は非常に記憶力のよい動物とされている。これについても日本語には該当する表現は見当たらないようである。

(11) 最も貧乏な動物は?

 英語には「(as) poor as a church mouse」という直喩表現がある。教会では普通食べ物を食べたり捨てたりしないので、そこに住みついているネズミは飢えていることから。貧乏なのはただの「ネズミ」ではなく「教会のネズミ」である。

(12) 最も多産な動物は?

 英語の「breed [multiply] like rabbits」と日本語の「ネズミ算式に増える」が「やたらに増える」という意味で使われる。多産であると考えられている動物は、英語では「ウサギ」、日本語では「ネズミ」である。

(13) 最も泳ぎのうまい動物は?

 英語には「慣れないことにどぎまぎして、場違いで」の意をもつ「like a fish out of water」がある。日本語にも「陸に上がったカッパ」という同じ発想のことわざがある。「魚」も「カッパ」も水から出ると自由が利かないのである。このことは逆に「魚」や「カッパ」が「泳ぎの名人」であることを示唆している。

(14) 最も酒飲みの動物は?

 英語の「drink like a fish」は「(習慣的に)大酒を飲む」ことを意味する。日本語では大酒を飲む人を「うわばみ」という。大酒のみは「魚」と「ヘビ」である。

(15) 最も強い動物は?
 
 動物の強さを示唆する表現として、英語には「an ass in lion's skin」、日本語には「トラの威を借るキツネ」がある。「an ass in lion's skin」は、ライオンの皮を着たロバがいなないたため化けの皮がはげたという話から、「おどしの鬼面をかぶった小心者」の意。「ライオン」は「皮」だけでもおどしに使えるわけである。「トラの威を借るキツネ」の出典は中国の古典『戦国策』で、トラがキツネを捕らえたとき、狐は「私を食べれば天帝の命に逆らうことになる、うそだと思うなら私の後ろについて来なさい」と言う。そこで出かけると獣はみなトラを見て逃げ出したが、トラはそれに気づかず、キツネを恐れているものと思い込んだ。そこから、「権力者の威勢をかりて威張る小人物」のたとえとして使われるようになった。最も強い動物は「ライオン」か「トラ」か?

(16) 最も意地悪な動物は?

 英語には「自分は不要なのに人に譲ったり使わせたりしない人、ケチで意地悪な人」を意味する「a dog in the manger」という慣用句がある。意地悪な動物として「イヌ」が使われている。イソップ物語で、牛小屋の飼い葉桶を寝床として占領し自分は食べもしないのに牛には干し草を食べさせない犬の話から。日本語には動物を使って意地悪であることをたとえた慣用句はないようである。

 今後も、2回/月のペースで続けて投稿する予定です。

1 コメント

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はじめまして (しらゆ)
2013-10-28 10:07:31
とても興味深いブログですね。
これから遡って読ませていただきます(*^∇^*)
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