面白い日本語と英語の慣用句(イディオム)とことわざ

日本語と英語の慣用句やことわざには、表現や発想がよく似たものがある。
たとえの面白さをいろいろな角度からながめる。

面白い日本語と英語の慣用句(イディオム)やことわざ(97)

2010年06月22日 | 日本語の慣用句、英語の慣用句
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27.2 反復した語根が連濁する例「A B A゛B」

 「さまざま(様々)」、「はればれ(晴れ晴れ)」などのように、続けて使った二つの語根のうち一番目の最初の文字が清音で、二番目の最初の文字が濁音である、すなわち、反復した語根が連濁する例を以下に示す。濁音になりうる「か行」、「さ行」、「た行」および「は行」で始まることばが当然この分類に属する。
 この分類に属するものは、すべてが漢字を使って表現できるものである。そして、動詞、形容詞、名詞などに語源を求めることできるものが多く、これらの表現は純粋の意味でのオノマトペではない。
 (1) かさねがさね(重ね重ね)  「~お礼を申し上げます」
 (2) かわるがわる(代わる代わる)  「~やってみる」
 (3) きれぎれ(切れ切れ)  「~に話す」
 (4) くちぐち(口々)  「~に叫ぶ」
 (5) こなごな(粉々)  「~に砕ける」
 (6) こまごま(細々)  「~した道具」、「~と礼を言う」
 (7) こりごり(懲り懲り)  「そんなことはもう~だ」
 (8) さきざき(先々)  「~から頼んでおいた」、「行く~で歓迎された」
 (9) さまざま(様々)  「~な人が集まった」
(10) さむざむ(寒々) 「~とした冬空」、「~とした空き家」
(11) しもじも(下々)  「~の我々には関係のないことだ」
(12) すみずみ(隅々)  「~まで探したが落とした金はみつからなかった」
(13) たかだか(高々)  「~千円ぐらい」
(14) ちかぢか(近々)  「~お伺いする予定です」
(15) ちりぢり(散り散り)  「一家は~になった」
(16) はしばし(端々)  「ことばの~から強い意志が感じられる」
(17) はなればなれ(離れ離れ)  「~にならないように手をつなぎましょう」
(18) ところどころ(所々)  「~に雪が残る」
(19) はしばし(端々)  「彼の無念さが言葉の~に出ている」
(20) はやばや(早々)  「~と宴会を切り上げた」
(21) はるばる(遥々)  「遠くから~やって来た」
(22) はればれ(晴れ晴れ)  「~とした顔」
(23) ひえびえ(冷え冷え)  「~とした夜」
(24) ひとびと(人々)  「下町に暮らす~」
(25) ひろびろ(広々)  「~とした草原」
(26) ふかぶか(深々)  「~とソファーに腰を下ろす」、「~と頭を下げる」
(27) ふしぶし(節々)  「体の~が痛む」
(28) ほそぼそ(細々)  「~続く道」、「~暮らす」
(29) ほのぼの(仄々)  「~と夜が明ける」、「~とした気分」
(30) ほれぼれ(惚れ惚れ)  「見事な作品に~した」

 「よく似た英語と日本語の慣用句集」(文芸館 : http://www.books.co.jp)ものぞいて見てください。

面白い日本語と英語の慣用句(イディオム)とことわざ(96)

2010年06月13日 | 日本語の慣用句、英語の慣用句
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27 同じ語根を続けて反復した日本語の表現
 ここでとりあげたものは慣用句やことわざではないが、日本で広く使われている興味深い表現である。たとえば「ぬけぬけ」や「だましだまし」のように、同じ語根(単語で意味の上から、それ以上には分けられない部分)を続けて反復した日本語の表現は非常に多く、枚挙のいとまがない。
 あまり学問的な意味はないと思われるが、表現の形式からこれらを五つの項目に分類した。各項目に属する表現30例を選び、以下に示す。意味は明らかなものが多いので記載せず、例文を併記するにとどめた。

27.1 反復した二つの語根の最初の文字が清音である例「A B A B」

 「くすくす」や「そろそろ」のように続けて使った二つの語根の最初の文字がいずれも清音である例を以下に示す。この分類に入るのは濁音になりえない「あ行」、「な行」、「ま行」、「や行」、「ら行」および「わ行」で始まることばである。
これらの表現のなかにはオノマトペ(onomatopoeia)と呼ばれる表現が非常に多い。オノマトペは、擬態語(事物の状態、人間のしぐさ・動作、人間の感情・心理状態などを象徴的に表したことば)や擬音語(自然の物音を真似てつくられたことば、動物の鳴き声や人間の声を模写してつくられたことば)に分類され、ほとんどの場合「ひらがな」で表記される。一方、「青々」や「黙々」などのように漢字を使って表記されるものも多く、「青」や「黙」を二度繰り返すことにより「青いこと」や「黙っていること」を強調している。これらの中には「一般語彙」の他に「(さんさん)燦燦」や「もんもん(悶悶)」のように漢語のオノマトぺに起源をもつものも含まれる。

 (1) あおあお(青々)  「~とした秋の空」
 このほか、色を使った表現として「あかあか(赤々)」、「くろぐろ(黒々)」、「しらじら(白々)」などがある。
 (2) おいおい(追々)  「そのことについては~説明しましょう」
 (3) かさかさ  「枯れ葉が~なる」、「手が~になる」
 (4) かりかり  「肉が~に焼けた」、「そんなに~するな」
 (5) くすくす  「~笑う」
 このほか、笑う様子を記述するこの項目に属する表現として「えへらえへら」、「からから」、「けたけた」、「けらけら」、「にこにこ」、「にたにた」、「にやにや」、「へらへら」などがある
 (6) くしゃくしゃ  「勝利の瞬間、選手の顔は汗と涙で~になった」、「長雨のせいか気が~する」
 (7) くるくる  「風車が~回る」、「彼の意見は~変わる」
 (8) けちょんけちょん  「自信作を~にけなされた」
 (9) こんこん  「ドアを~とノックする」、「~と咳き込む」、「お山で~が鳴いているよ」、
           「泉が~と湧き出る」(滾々を音読みした漢語由来のオノマトペ)、「子供を~と諭した」(懇懇を音読みした漢語由来のオノマトペ)
           「~と眠り続ける」(昏々を音読みした漢語由来のオノマトペ)
(10) さんさん(燦々)  「太陽が~と降り注ぐ」(燦々を音読みした漢語に由来するオノマトペ)
(11) しゃーしゃー  「よくもまあ~と帰って来れたもんだ」
(12) せーせー  「問題が片付いて~した」
(13) そろそろ  「~と歩く」、「~彼が来るころだ」
(14) たらたら  「汗が~と流れ落ちる」、「彼は不満~だ」
(15) ちらちら  「~揺れる火」、「目が~する」、「~と盗み見をする」
(16) とんとん  「~と戸をたたく音がした」、「彼は~拍子で出世した」、「収支は~であった」
(17) にょきにょき  「つくしが~と出てきた」
(18) ぬけぬけ  「~と嘘を言う」
(19) ねちねち  「~とした性格」、「あの上役は部下を~といびる」
(20) のびのび(伸び伸び)  「子供は~育つ」、「気が~する」
(21) ひーひー  「赤ん坊が~泣いている」、「先輩にしごかれて部員は~いっている」
(22) へとへと  「長旅で~に疲れた」
(23) むずむず  「鼻が~する」、「本当のことを言いたくて~していた」、「腕が~する」
(24) めきめき  「厳しい訓練で技量は~上達した」
(25) もくもく(黙々)  「~と勉強する」
(26) もんもん(悶々)  「~と日を過ごす」(悶々を音読みした漢語由来のオノマトペ)
(27) よなよな(夜な夜な)  「~飲みに出かける」
(28) るんるん  「宝くじで一万円当たっちゃったの。~よ」
(29) ろくろく  「~おかもいもしませんで」
(30) わなわな  「怒りで手が~と震えた」

 「よく似た英語と日本語の慣用句集」(文芸館 : http://www.books.co.jp)ものぞいて見てください。

面白い日本語と英語の慣用句(イディオム)とことわざ(95)

2010年06月02日 | 日本語のことわざ、英語のことわざ
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26.2.2 同じことばを連続しないで使った例(続き-2)

(26) if (the) worst comes to (the) worst
 「worst」の繰り返し。「最悪の場合に」の意。
 (例文) “It’s a bad storm. What if the airport shuts down?” “If worst comes to worst I’ll take a train.”(「すごい嵐だな。空港が閉鎖したらどうする?」「いざとなれば電車で行くよ」)

(27) it takes one to know one
 「one」の繰り返し。「他人の性格の特徴を知るのは、その人と同じ性格をもった人にのみ可能だ」の意。他人から非難を受けた場合、「それはあなたにも当てはまることだから、私に対してそういうことが言えるのでしょう」と、相手の矛先をかわす時などによく使われる。
 (例文) Mary’s husband says that Jim is being unfaithful to his wife. Well, you knows what they say. It takes one to know one.(ジムが浮気しているってメアリーの亭主は言っていたけど、ほら、よく言うじゃないか。二人とも同じ穴のムジナだよ)

(28) Ill gotten, ill spent.
 「ill」の繰り返し。「悪く得られたものは悪く消費される」の意。日本のことわざ「悪銭身につかず」が近い意をもつ。

(29) know (who’s who and) what’s what
 「who」および「what」の繰り返し。「(誰が有力者か、そして)世の中「組織の仕組み」がどうなっているのか分かっている」の意。
 (例文) To succeed in any business, you’ve got to know who’s who and what’ s what.(どんな仕事でも、成功するにはだれが有力者なのか、そしてその業界の動きはどうなっているのかが分かっている必要がある)

(30) Let bygones be bygones.
 「bygones」の繰り返し。「過去のことはわすれるべきだ」という意のことわざ。

(31) Like father, like son.
 「like」の繰り返し。「似たもの親子だ」の意。「like mother, like daughter」ともいう。

(32) Live and let live.
 「live」の繰り返し。「この世の中を渡るには、お互いに助け合っていかねばならない」の意のことわざ。現代では「他人のことに干渉せずに『人は人、自分は自分』でやっていけ」の意で使われるのが普通のようである。

(33) Love me, love my dog
 「love」の繰り返し。「私が好きなら、私にかかわるすべてを好きになって」の意。日本語の「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」は裏返しの表現であるが、発想は似ている。

(34) Love me little, love me long  「長く続く愛情の方が短く終わってしまう情熱的な愛情よりも望ましい」の意。

(35) Money begets money.
 「money」の繰り返し。「金は金を産む」の意。

(36) Monkey see, monkey do.
 「monkey」の繰り返し。「サルまねをする」というたとえ。何の独創性もないと言った軽蔑が含まれている。

(37) No news is good news.
 「news」の繰り返し。「便りがないのはよい便り」と和訳されて、日本のことわざになっている。

(38) No pains, no gains.
 「no」の繰り返し。「苦労をしなければ利益は得られない、苦は楽の種」の意。

(39) Nothing venture(d), nothing gain(ed).
 「nothing」の繰り返し。「危険を冒さなければ欲しい物は手に入らない」の意。

(40) Out of sight, out of mind.
 「out of」の繰り返し。「目の前に見えなくなると、そのことを考えることもなくなる」という意のことわざ。「去る者は日日に疎し」と和訳されて、日本のことわざになっている。

(41) Over shoes over boots.
 「over」の繰り返し。直訳は「短い靴が没する水の中に入ったからには、長い靴が没する水の中まで入って行こう」で、日本のことわざ「毒を食らわば皿まで」がこれに近い意をもつ。

(42) Pretty is as pretty does.
 「pretty」の繰り返し。 「好ましい人だと思われたいのなら、好ましいことをすべきだ」の意。

(43) set [it takes] a thief to catch a thief
 「thief」の繰り返し。「悪者仲間の知恵と経験を使うなどして悪者を捕らえようとする」の意。日本語の「蛇の道は蛇」がこれに近い意をもつ。

(44) So many men, so many minds.
 「so many」の繰り返し。日本のことわざ「十人十色」がこれに近い意をもつ。

(45) Soon ripe, soon rotten
 「soon」の繰り返し。「将来を有望視されていた早熟な子供が成人して全く平凡な人間になってしまうこと」のたとえ。これに近い意を持つ日本語の表現として「十で神童、十五で才子、二十歳すぎては只の人」がある。

(46) That takes care of that.
 「that」の繰り返し。「それは片づいた」の意。

(47) That’s that.
 「that」の繰り返し。「これで終わりだ、もうそうするしかない」の意。
 (例文1) Thank you, everyone. That’s that. The experiment is all set up. We’ll start tomorrow morning at 8:00 o’clock.(皆様、お疲れ様だした。これで終わりです。実験の準備は完了です。あしたは朝8時から開始します)
 (例文2) No arguments. You are going, and that’s that.(つべこべ言うんじゃない。おまえは行くんだ。それしかない)

(48) What is done is done.
 「done」の繰り返し。「済んでしまったことは仕方がない」の意。

(49) What is sauce for the goose is sauce for the gander.
 「sauce」の繰り返し。「ある人にとって適当なものは、別の人にも適当である」という意のことわざ。

(50) When in Rome, do as the Romans do.
 「do」の繰り返し。日本のことわざ「郷に入っては郷に従え」に相当。

(51) Where there’s a will, there’s a way.
 「there’s」の繰り返し。「Where there’s a will, there’s a way.」は「意志ある所に道あり」と和訳されて、日本のことわざになっている。日本のことわざ「精神一到何事か成らざらん」も比較的近い意をもつ。

(52) You scratch my back and I’ll scratch yours.
 「scratch」の繰り返し。「お互いに助け合おう、持ちつ持たれつだ」の意。日本のことわざ「魚心あれば水心」が比較的近い意を持つ。

 「よく似た英語と日本語の慣用句集」(文芸館 : http://www.books.co.jp)ものぞいて見てください。