[試訳]
移民の貢献
フランスはヨーロッパにおいて移民を頼りにした最初の国です。19世紀の中頃、ドイツ、北欧、イギリス、イタリアが、100万単位で貧しい人々を新大陸に送り出していたその一方で、フランスはすでに移民を迎え入れていました。こうした政策はほとんど途切れることなく続いていました。ただ1930年代と戦時中、それから1974年に労働移民の受け入れを中止した時は別ですが。こうした追加の人口流入が、年間の人口増の1/3を越えることは一度もありませんでしたが、それでも数十年にわたって、こうした人口流入が人口構成の更新を可能にして来ました。1999年の国立人口統計研究所の家族調査によると、フランスで生活する22%の人の祖母か祖父の、少なくともどちらかは、フランス国外で生まれています。
高齢化の二つの要因
要因の一つは単純なことで、第二次大戦の終結以降、寿命が驚くほど伸びたことです。1970年代の人口調査からはこれほどの伸びはまったく予期できませんでした。子供の死亡率が下がりつつあることははっきりしていましたが、高齢者にこれほどの寿命が約束されているとは考えてはいませんでした。こうした進歩は医学の発展によるものですが、また高齢者に向けられた様々な介護のおかげでもあります。例えば、2003年の猛暑でわかったことは、お年寄りに規則正しく水を飲んでもらったり、高齢者施設にエアコンを設置するだけで、その年記録された15000人の死者を救うことができたということです。1960年代以降、私たちは毎年3ヶ月寿命を延ばしています。これは人類史において未曾有のことです。
二つ目の要因は、戦後のベビーブームです。フランスでは、ヨーロッパの他の国と比べて、ベビーブームはずっと長く、ずっと盛んでした。1946年、フランスは突然20万件の予想外の出産を記録しますが、この現象がその後ほとんど30年間続いたのです。調査をしてわかったのですが、こうした出生の1/4は望まれたものではなく、同時に別の1/4は折悪くもたらされたものでした。つまり、当時避妊が大変必要とされていたことがわかります。この戦後のベビーブーム世代が今日退職年齢に達しようとしています。そのため一層フランスの高齢化が進むことになります。
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今回は注釈としてとくに加えることはなにもありません。みなさんの的確な読みを心強く思うばかりです。
ウィルさんのみなさんに対するコメントを見て感じたのは、今さらですが、やはりみなさんフランス語でつながっているのだなぁ、ということです。この記事にもあったように、時に日本のことは(朝鮮半島が含まれる場合もありますが) l'extrême Orientと表現されますが、「極東」のこの国にあって、ぼくたちがフランス語でこうしてつながっているというのは、なんとも「あり難き」ことですね。
さて、かの国フランスでは、今、与党のイニシアティヴで l'identite' nationale が政治の場で論じられようとしています。次回はその動きに対する、哲学者 Michel Serres の投稿記事を読むことにします。みなさんには追ってテキストをお送りしますが、またあらたにテキストをご希望の方は、
smarcel@mial.goo.ne.jp
までその旨ご一報下さい。
smarcel
移民の貢献
フランスはヨーロッパにおいて移民を頼りにした最初の国です。19世紀の中頃、ドイツ、北欧、イギリス、イタリアが、100万単位で貧しい人々を新大陸に送り出していたその一方で、フランスはすでに移民を迎え入れていました。こうした政策はほとんど途切れることなく続いていました。ただ1930年代と戦時中、それから1974年に労働移民の受け入れを中止した時は別ですが。こうした追加の人口流入が、年間の人口増の1/3を越えることは一度もありませんでしたが、それでも数十年にわたって、こうした人口流入が人口構成の更新を可能にして来ました。1999年の国立人口統計研究所の家族調査によると、フランスで生活する22%の人の祖母か祖父の、少なくともどちらかは、フランス国外で生まれています。
高齢化の二つの要因
要因の一つは単純なことで、第二次大戦の終結以降、寿命が驚くほど伸びたことです。1970年代の人口調査からはこれほどの伸びはまったく予期できませんでした。子供の死亡率が下がりつつあることははっきりしていましたが、高齢者にこれほどの寿命が約束されているとは考えてはいませんでした。こうした進歩は医学の発展によるものですが、また高齢者に向けられた様々な介護のおかげでもあります。例えば、2003年の猛暑でわかったことは、お年寄りに規則正しく水を飲んでもらったり、高齢者施設にエアコンを設置するだけで、その年記録された15000人の死者を救うことができたということです。1960年代以降、私たちは毎年3ヶ月寿命を延ばしています。これは人類史において未曾有のことです。
二つ目の要因は、戦後のベビーブームです。フランスでは、ヨーロッパの他の国と比べて、ベビーブームはずっと長く、ずっと盛んでした。1946年、フランスは突然20万件の予想外の出産を記録しますが、この現象がその後ほとんど30年間続いたのです。調査をしてわかったのですが、こうした出生の1/4は望まれたものではなく、同時に別の1/4は折悪くもたらされたものでした。つまり、当時避妊が大変必要とされていたことがわかります。この戦後のベビーブーム世代が今日退職年齢に達しようとしています。そのため一層フランスの高齢化が進むことになります。
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今回は注釈としてとくに加えることはなにもありません。みなさんの的確な読みを心強く思うばかりです。
ウィルさんのみなさんに対するコメントを見て感じたのは、今さらですが、やはりみなさんフランス語でつながっているのだなぁ、ということです。この記事にもあったように、時に日本のことは(朝鮮半島が含まれる場合もありますが) l'extrême Orientと表現されますが、「極東」のこの国にあって、ぼくたちがフランス語でこうしてつながっているというのは、なんとも「あり難き」ことですね。
さて、かの国フランスでは、今、与党のイニシアティヴで l'identite' nationale が政治の場で論じられようとしています。次回はその動きに対する、哲学者 Michel Serres の投稿記事を読むことにします。みなさんには追ってテキストをお送りしますが、またあらたにテキストをご希望の方は、
smarcel@mial.goo.ne.jp
までその旨ご一報下さい。
smarcel
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誤り
論説
ミッシェル・セール スタンフォード大学教授 アカデミーフランセーズ会員
セールと私の身分証明書には記載されている。それはある山の名前であって、スペイン語ではシエラ、ポルトガル語ではセーラである。少なくとも三つの国において、こう呼ばれる人は五万といる。ミシェルについては、もっと多くの人々がこの姓を名乗っている。私は、たくさんのミッシェル・セールを知っている。つまり、私はロート・エ・ガロンヌ県出身の人のグループというような、この名のグループに属しているのだ。要するに、私の身分証明書には、私の同一性を表すものは何もないが、いくつかの帰属は示されているというわけだ。そこには他に二つも示されている。身長1m80cmの人、フランス国民であることだ。同一性と帰属の混同は、論理の誤りであって、数学者によって規定されている。aがaであるとか、私が私であるということ、これが同一性だ。一方、aがある集団に属するということ、これは帰属だ。この間違いによって、何でも示せることになりかねない。しかし、その誤りは政治的な罪を伴う。人種差別主義である。
今回の課題では、Ou vous dites a est aからet voilà l’appartenance. までの一文が解りませんでした。
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Serresと私の身分証明書に書かれています。スペインのSierraやポルトガルのSerraと同じ山の名前です。少なくとも三カ国で多くの人がこのように名乗っています。一方Micehlについては、さらに多くの人々がこの名前を使っています。Michel Serres について私はよく知っています。私が、Lot-et-Garonneに生まれた人々と同じグループに所属していることが示されています。要するに、私の身分証明書では、私が誰であるかについてなにも語っていません、属性については多く語っているのにですが。他に二つの事柄がそこに記載されています、すなわち背が1,80mあり、フランス国籍の人物ということ。私が誰であるかということと私の属性との混同は、数学に基づく規則的論理性の誤りです。あなたがaと言えばaであるというときに、私は私ということです、それが身分証明です。この誤りは、それが重要なことではないと言ってしまう危険にさらしています。しかしその誤りはまた同時に政治的犯罪でもあります。すなわち人種差別です。
今回の課題では、終わりあたりに出てくるfauteの訳し方がわかりませんでした。
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私の身分証にはSerresという名が記されています。これは山の名前のひとつで、スペイン語ではSierraで、ポルトガル語ではSerraとなり、少なくとも3つの国では多くの人がこうした姓で呼びます。Michelという名に関していうと、この名前の人も随分います。Michel Serresという名前の人がかなりいることも知っています。つまり私は同姓同名のこのグループに属し、またロット・エ・ガロンヌ県出身のグループにも属しているわけです。ということは、私の身分証には幾つかの帰属が書かれていますが私のアイデンティティについては何も記載がないということです。他のふたつの記載もあります。身長180センチ、国籍フランス人と。アイデンティティと帰属を混同することは、数学者らが規定した論理の過ちのひとつです。aはa、私は私、といえば、aは或る分類に属し、帰属を示しているのですが、こうした誤りはどんなことでも言ってしまう危険性があります。しかしこの誤りは政治的犯罪のようなものが込められてしまうのです。それが人種差別です。
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間違い
社説
ミッシェル・セール、スタンフォード大学教授、アカデミーフランセーズ会員
「セール」と私の身分証明書には記されている。それはスペイン語ではシエラ、ポルトガル語ではセラと称される山の名前である。少なくとも3カ国で大勢の人がこの名を名乗っている。「ミッシェル」についてはさらに多くの人々がこの名を持っている。私はミッシェル・セールという名前の人をかなり知っている。つまり私は、ロット=エ=ガロンヌ県出身というグループに属しているというわけだ。要するに私の身分証明書は、私のアイデンティティについて何も語りはしないが、幾つかの私の帰属を明らかにしている。他の二つのこともそこから分かる。そのカテゴリーに属する人の身長は180センチほどあり、フランス国民であるということである。アイデンティティと集合を混同するのは数学者の論理の落ち度である。あなたが「a」と言えばそれは「a」なのであり、私が私であるということ、それがアイデンティティである。またあなたが「a」がある集団のなかに属していると言ったとき、それが集合である。この間違いはあることないこと、なんでもいいということになりかねない、というところにある。だが、この間違いは政治的犯罪でもあるのだ。つまり、人種差別である。
今回の課題は、みさよさんと同じくCette erreur expose à dire n’importe quoi の部分がよくわかりませんでした。
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Serresと私の身分証明書には記されている。これは、スペイン語ではSierra、ポルトガル語ではSerraである、山という姓である。少なくとも3つの国で、1000人はそういう名前である。Michelについては、もっと多くの人がこの名前を持っている。私は、かなりの数のMichel Serresを知っている。私は、このグループに属している。ロ・エ・ガロンヌに生まれた人々のグループに属するのと同じように。要するに、私の身分証明書には、私の同一性についてはなにも記されておらず、所属がいくつか書かれているだけだ。あと2つそこに表れているものがある。それは、身長1メートル80センチの人ということと、フランス国籍の人ということである。同一性と帰属を混同することは、数学者に規律されている論理を誤っているということである。aはaであるとか、私は私である、と言うこと、これが同一性である。aはある集まりに属している、と言うこと、これは帰属である。こうした過ちを通じて、どんなことでも言われかねない。しかし、この過ちは政治的な犯罪を伴うものだ。すなわち、人種差別主義である。
の部分がよく分からなかったのですが、前後関係からこの訳にしました。
間違い
Serres と私の身分証明書には書いてある。これは山岳地方の名前だ。スペイン語だとSieera ポルトガル語ではSerra になる。少なくとも三カ国では、多くの人がこのように呼ばれている。Michel について言えば、もっと多くの人がこの名前を名乗っている。私はMichel Serres をかなり良く知っている。私は、ロート・エ・ガロンヌ県生まれの人々といったようなグループに属している。要するに私の身分証明書には私の自己同一性を何も示していないのに、多くの帰属を示している。他に二つのことが記載されている。180cmの身長がある人々の一人であり、フランス国籍を持っている人々の一人であると。自己同一性と帰属を混同することは、数学者によって決定されている論理の間違いだ。言うなればa はa であり、私は私である。これが自己同一性だ。また、a はこれこれの集団に属している。これが帰属なのだ。この間違いは、何でも言えると説明している。しかしこの間違いは政治的犯罪、つまり差別主義を裏に秘めている。