フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

訂正

2014年09月18日 | Weblog

 Chers amis,

 もう多くの方がお気づきでしょうが、昨日の投稿で「ラスティニヤック」と「ラスコーリニコフ」を混同していました。ブログはすでに訂正してあります。記念すべき300回でみっともないことです。お詫びして、訂正いたします。


トマ・ピケティ『21世紀の資本論』について(1)

2014年09月17日 | Weblog

 [注釈]
 *[les] salariés, rentiers, cadres, super-cadres : salariés は自らの労働によって給与を得ている人々のこと。それに対しrentiers は、多くは世襲した財産から生まれる金利や、年金などで生活している人々。cadresは、一般的には管理職を指しますが、super-cadres との対比を踏まえれば、日本でもかつてはそれなりの厚みがあった、中間給与者層を指しています。
* le dilemme de Rastignac : バルバック『ゴリオ爺さん』を皮切りに、『人間喜劇』に登場する重要人物。ジレンマとは、働いて立身を目指すか、富裕者との婚姻によって出世を果たすかの選択を指します。
 
 [試訳]
 『21世紀の資本論』の内容
 ピケティによると、所得の再分配は今後給与所得者から資本所有者に向かうようになるだろうし、もし何もなされなければ、こうした傾向は加速されることになるであろう。彼はこうした傾向を危険だと判断している。というのも、経済成長には今後も生彩が見られないままである一方で、資本はより高い収益を示すことを考えれば、社会内部の不平等は増大するからである。
 20世紀私たちは金利社会から中間給与所得者社会への移行を果たしたのに、その中間給与者が以後「超給与所得者」の前で姿を消していくことになるであろう。彼らの所有する資本からの配当によって、[政治に頼らず]オートマティックに自らを維持してゆく社会階層が誕生しているのだ。
 こうした状況は、もうひとつ別の時代の不平等と肩を並べることになるかもしれない。ピケティは「ラスティニヤックのジレンマ」や、バルザックやオースティンによって描かれた世襲財産社会との比較を試みている。それは金利収入からなる社会であり、「民主主義と敵対するもの」であった。
 富めるものはさらに富めるものとなる。実際ピケティは(社会を生活レベルに応じ分割する際)1/10はおろか、1/100という尺度でももはやなく、1/1000という尺度を採用している。アメリカにおいては、この三、四十年で、給与格差はヨーロッパよりも大きくなってしまっている。
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 いかがだったでしょうか。ビケティの分析によれば、いわゆる「アメリカン・ドリーム」は、戦争後の荒廃から生まれた需要によってによってこそ可能であったのです。そういえば、朝鮮戦争から生じた「特需」によって高度成長への跳躍を準備した日本にも、ビケティの分析は当てはまりそうです。
 ぼくは数を覚えたり操作するのが苦手で、昨年夏もCarte bleueの暗証番号を間違え、カードをダメにしてしまい、その後の現地での再発行手続きには苦労しました。mozeさん、ちゃんとカウントして下さっていてありがとうございます。300回を迎えたのですね。やはりちょっと小さな達成感があります。みなさんとこうしてLeconの回をここまで重ねてきたことで、ぼくもわずかばかりフランス語のDiscoursをよりよく生きることが出来るようになったと思います。長い間おつきあい下さっているみなさんに、あらためてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 それでは、次回は10月1日(水)に残りの部分の試訳をお目にかけます。
 A biento^t et bonne lecture, mes aims ! Shuhei