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海老玉の世界、年に一度は浸って酔いたい~7月歌舞伎座昼の部

2008-07-23 00:19:08 | 観劇
昼の「義経千本桜」と
夜の鏡花ワールド「夜叉ケ池」「高野聖」、
玉三郎・海老蔵の精力的な意気込みがうれしい!!
それに猿之助一座をはじめ、歌六さん、吉弥さんたちの実力派の活躍、
これがい~い舞台をつくっているのですねー。

「義経千本桜」
お馴染みの時代物、何度観ても、観るたびに新しい発見があるのは、
本当に不思議なものです。
それだけ奥が深い、のでしょうが、
わたしの場合、浄瑠璃の語りが全部耳に入ってこないので、
ある時、ふとそういうことを言っていたんだー、とか、
まあ、鳴り物なんていいんでしょ、とか、なんですが。

今日は義経*段治郎さんの明瞭なセリフで、ふと気がついたんです。
伏見稲荷「鳥居前」の場
なぜ静は鼓の紐で木に縛られなくちゃならないのか、
慕って追って来られては大変だからといって、
あんまりじゃない!! ですよね!
そうじゃ、なかったのね、
静(春猿)は自分の感情を素直にあらわして言っていました、
義経さんに置いてきぼりにされたら…、死んだほうがまし。
頭に血が上っていて、自害する恐れがあったのね。
これ以上付いて来られたんじゃ、義経の足手まとい、
都で待っているくらいの分別があっていいのは、静のほう。
(実際は永久の別れになったのですが)
家来たちは、頭冷やしてもらうために縛ったのね。
お能の「船弁慶」が同じ別れの場面を扱っているわけですが、
船弁慶は勧進帳の弁慶ですし、
静は白拍子の霊的なものを持っていて、単にだだをこねていたわけではない。
「鳥居前」の子供のようにおいおい泣く弁慶、身をよじってすがる静、
早見藤太のような芸達者な見せ場もあり、
歌舞伎らしい軽みがあって、面白い!

もう一つ,忠信狐(海老蔵)に源九郎義経の名とともに「着背長」(鎧)が与えられますが、
これって、静を守るため義経の影武者になれ、という含みがあるらしいこと、はじめて知りました。
「吉野山」で見立として飾り置くのは、そういう意味なのね。
舞踊として単独で演目に上がることが多い「吉野山」
清元と竹本で鳴り物も聞かせどころの華やかな踊りですが、
ここは通し狂言の中の一場面という、原点を大事にして
義太夫一本で締めます。
ここで登場する静*玉さまは、その凛とした気品といい、
手の動き、足の運びの隅々まで、その存在感圧倒されます!
主従の道行を立雛に見立てる海老玉のショット、見たかったですが、
(背合わせでちょっとありましたけど)
これも筋立てに沿ったこと。
海老さまはあくまで忠臣に徹して甲斐甲斐しく玉さまの世話をやくのね~

「川連法眼館」での海老さま源九郎狐の活躍、
その声に会場に笑いが起こるのは前回と同じですが、
今回はそれも愛嬌のある源九郎狐だから、と見ました!
早変わり、出・回転の早さ、飛ぶ高さ、海老反り、
もちろん宙乗りも、堪能しましたわー

 2008/7/22 歌舞伎座


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