紫苑の部屋      

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阿弖流為

2015-07-08 23:03:16 | 観劇
平安初期、都を遷したばかりの桓武天皇の御代、
これは史実ではありますが、
帝の巫女の御霊御前(みたまごぜん)が詔を言い渡し、
藤原氏一族とともに実権を握っている。
 史実上はどうなんでしょう、でも帝専属の巫女は確かにいたはずです。
余談ですが、この御霊御前のメイクをした萬次郎さん、なんときれいだったことでしょう!

さて大和朝廷の蝦夷派遣軍は、帝人(みかどびと)軍との呼称、
蝦夷(えみし)に住む民を、まつろわぬ(服せぬ・順わない)民、とします。
坂上田村麻呂は実名にしても、
登場人物の名は、虚実交えたとしても、それぞれ十分謂れのある、ようなのです。

立烏帽子、女盗賊によく似合っていました、とくに宣伝用のパンフの造形、衣裳も含めて
それ用のスタッフで臨んでいるようで、よくできてます。

北の狼、これは当時そのように呼ばれていたとしても不思議はないです、

右大臣藤原稀継(まれつぐ)、
脚本作家の中島かずきさんは、古代に通じている方のようで、
もしかしたら、藤原種継のパロディ?
確かに暗殺され、藤原氏族が大伴氏を追い落とすきっかけを作ったのでした。

ところで、
土俗の蝦夷の神々、荒覇吐(あらはばき)は確かに東北に生きつづけた伝承の神、
それは、武蔵一宮氷川神社にも受け継がれ、「客人神」として今も祀られているとか。
いっぽう、大和の神に祀られたみかどという存在、
 その実体をあると思えばあり、ないと思えばなし
と言わしめる、なかなか意味深長です。

いずれにしても、文献にわずかに残る、アテルイの胆沢でのたたかいぶり、
田村麻呂のアテルイの命請う申上をする正義感、
それらを軸にして、壮大な物語を作り上げていく世界観、
たとえそれが史実通りでないにしても、
実に飽きさせない、終わり方も十分納得のいく、舞台でした。
13年前の初演、好評を博したようですが、
10年余り歌舞伎として熟成させてきた、
と言っていいのではないでしょうか。

阿弖流為の染五郎
一昨年の安倍晴明よりずーといい。
田村麻呂の勘九郎、初演の堤真一も見たい気もするが、カッコ良い!
立烏帽子と鈴鹿を演じ分ける、七之助に拍手
新悟さんもそのメイクすてき。

忘れてならないキャラ、蛮甲の亀蔵さん
現代人の視点、もっともリアリティのある人物像、
ぎりぎりのところで人間性を保つ、人を信じた、
そこが光っていました。

2015.7.6 観劇 新橋演舞場

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