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紫苑の部屋      

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日本人の叡智、ということ

2014-04-16 07:38:09 | 四季の折々
「日本人の叡智」という本があります。著者は磯田道史。

のちに「無私の日本人」(2012刊)で、歴史に埋もれた優れた先達を発掘した。
それに先立ち、2011.3.11の震災直後に出版し、
美しい日本の自然に調和した、
先人たちが残した数々のことばを収集したもの。


一人見開き2pで戦国期慶長から平成まで98人のことばが紹介されている。

序文に述べられている、著書のそのいきさつが面白い。
古文書にくぎ付けになり、没頭するあまり図書館で倒れ救急車で運ばれたことがある、
そうで、
もうこうなると、先人たちが、そのことばが、世に出たくて彼を押し倒した、
とでもいわざるをえない。

江戸中期の17C 朱子学を極めた学者のことば
  学問の道さまざまありといえども
  畢竟は、心をみがくことにとどまれり

無私の日本人でも紹介された、中根東里
  出る月を待つべし
  散る花を追うことなかれ

(桜は散っても、月は必ず出てくる。それを待つ時間をどのように大切に生きるか)
 それが問われているのですね。


学問の真髄は情緒 、という岡潔の言葉もある。

また、名人といわれる人のことばも味わい深い。

 自己訓練から始まり、自力で発足させたものが習慣となり、
 その積み重ねが大きな成果となる、
という松田権六、

自己を成長させるには繰り返し自己の限界に挑戦せよ
新しい力がわく
と大錦。

それらを一言でいえば、日本人固有の、しかも人としての
“叡智”
というべきなのですね。

ただ哀しいかな、
美しい日本の自然との調和、というモチーフ、
震災での原発のベルトダウンで喪失してしまった、
その伝統的な価値観がどういう変貌をしていくのでしょうか。

さて、最後に日本人の叡智について、わたしは、思います、
磯田氏は、それを歴史上の人物、すなわちその痕跡である書物に求めたわけですが、
連綿とつづく、市井の人々の到達した境地、
たとえば、病院の片隅で病床に伏し病院のスタッフに、ただ感謝の言葉を残して静かに逝く、孤独な老女のたどり着いた境地、について同じように、
人間の叡智、荘厳さ、を思います。





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