紫苑の部屋      

観劇・絵画と音楽・源氏物語      
について語ります        

源氏物語 玉蔓巻ーさすらいの姫君

2014-07-06 17:44:00 | 源氏物語
夕顔の巻で完結したかにみえた常夏(なでしこ) の女の物語が、ここへ来て
突然…続編として立ちあがってきます。
玉蔓巻の冒頭

  年月隔たりぬれど、飽かざりし夕顔をつゆ忘れたまはず

源氏は、長年思い続けてきた夕顔への愛惜、を語ります、
17 歳から18 年経ているのに。

夕顔の愛児(なでしこ)が親の行方も知らず
築紫に下ったのが、4 歳
さすらいの姫君は、美しく成長し 土地の有力地方官に求婚され、
やむなく脱出をはかり上京することになるわけですが、
その貴種流離譚、
親から子へ引継がれた宿命、なのです。

夕顔は、三位中将の娘であったが、早くに親を亡くして
頭中将の愛人となったものの、正妻から脅迫されて乳母の住まいに身を寄せる、
貴公子源氏を得る幸運に出会ったものの、非業の死を遂げて、
王朝貴族社会の厳しい現実を背負った、姫君の、さすらった末の結末、
夕顔の造型には、三輪山伝説、唐の伝奇小説などの準拠説があるようです。

そして玉蔓は、流れ着いた筑紫で美しく成長し、あまたの求婚者から逃れ都(天上)へ戻っていく、
と、竹取物語を準拠とする、というのもうなずけます。
ところで九州築紫は、 紫式部には特別なゆかりの地、
式部日記に、幼友達の筑紫に下っていく人を慕う歌のやりとりが出てきます。
この巻の前に、ふと思い出して昔源氏が“御目とまり給ひし”筑紫の五節と歌のやりとりをしているのも、
なにかの関連があるかもしれない、ようですよ。
(筑紫五節との話を展開させようとして失敗し玉蔓を登場させたとの説もあり)

玉蔓は幸運にも、源氏の下に身を寄せ六条院女房となっていた右近と初瀬で邂逅、
源氏の邸宅六条院夏の町花散里の下に引き取られることになるのです。
これでさいわい人、となる、というのではありません。
玉蔓十帖の物語を引っ張る主人公、その造型は単純にはできていません。
少しずつひも解く愉しみ、
じっくり味わいましょう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿