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紫苑の部屋      

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一世一代の仁左衛門の芸ーさよなら歌舞伎公演6月

2009-07-22 01:40:01 | 観劇
仁左衛門の油地獄、
忘れられないものになると思います。

歌舞伎座で観たのは、たしか襲名披露のときではなかったかと思います。
お吉は元気で美しかった雀右衛門でした。
情の深さで包み込むような人妻で、ほんとは前から想いを寄せていた、との与兵衛の甘言もまんざら偽りといえないような気分になってしまう、お吉でした。
ですから、殺戮される姿にひとしお哀れさが滲んでいました。
与兵衛は、殺しの美学で通すしか、なんら弁明の予知のない放蕩息子、でした。
若い仁左衛門のすねたしぐさ…、
親爺の小言を聞きながら柱に寄りかかってキメルあのポーズ、
それだけで、キャー、だったのですね。
それに加えて、仁左さまの浪花言葉がやっぱり艶っぽいの。
篠山紀信の撮ったこの一枚↓
手拭いをこう頬かむりして花道から出てくる
これを観たさに通い詰めた、ファンもいたことでしょう。
仁左さまはそれくらい美しかった!すべて許されてしまう与兵衛でした。



それから10数年、60代の仁左衛門、一世一代と銘打ったさよなら歌舞伎座公演、
近松の浄瑠璃を肉体化して現代に蘇らせた、渾身の芸がそこにありました。
決めポーズだの、殺しの美学だの、を超絶した感の仁左衛門でした。
きめ細かな与兵衛の人物造型、長年練り上げたものが見事に結実している!
身勝手な理屈とはいえ、与兵衛なりの切羽詰まった状況があった!
一晩で銀500匁が1両になってしまう、親爺の印を使っている、それが明るみに出たら信用を落して身代がつぶれるかもしれない!?
そして、お吉はふとそのくらいのお金融通してもいいかな、と思う、一瞬があった!
戸棚には集金した銀500があったのですね。
河内屋の両親が預けたお金は銭500匁、銀ではない。
豊嶋屋の羽振りのよさがここでわかる!
株仲間どうしとはいえ、屈折した関係も匂わせる。
与兵衛の殺しにリアリズムを感じさせ、かえって慄然とします。
今回は音が水っぽくて、油に似せた液体には見えなかったですが、
演技は油まみれに見えました。

6月大歌舞伎演目&配役

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