「来年」を失わないために。

……来年があるってことは、ものすごく幸せなことやねんで。

「欽ちゃん球団」解散へ【解散撤回:追記】

2006年07月20日 | 球界のあれこれ。
「極楽とんぼ」の山本圭一が未成年者に対し飲酒させ性的暴行で取り調べられたという事件は、「お笑い界」「芸能界」だけでなくこんなところに影響を及ぼした。

欽ちゃん球団:「極楽とんぼ」問題で解散の意向 萩本監督
(略) 萩本さんは羽田空港で報道陣の取材に応じ、「ことの大きさからも責任を感じる。私が始めた野球だから、大好きな野球だけど、やめることにしました。茨城のみんな、ごめんな」と涙を浮かべて話した。報道陣から「やめるとはチームの解散か」と問われると、「(それが)私の気持ち」と語った。
 トレードマークの笑顔はなく、疲れた表情で「やると言ってもやめると言っても迷惑がかかる。ずっと悩んだ」。結論はメールで選手にも伝えたという。「今ごろ泣いているやつもいるだろう」と声を振り絞った。

 「解散」の決断は萩本さんが周辺とほとんど相談せず個人で下したと見られ、関係者には驚きの声が広がった。(略)


 設立の頃から昨年はごく時折触れていたことだが、私は正直言ってこの「欽ちゃん球団」ゴールデンゴールズの(というか、萩本欽一個人の)『野球のありかた』に対するアプローチには相容れないものを感じていた。

 2004年の合併騒動で、野球人気が滑落したように言われ、「野球をもっと面白く」とかいうコンセプトで野球界にクラブチームとして参入してきた欽ちゃん球団。しかし「面白く」と言われても、萩本欽一の語る「面白く」はいかにもテレビ業界人の発想に溢れていて、テレビを介さない野球をより愛する私には疑問を感じるものが多かったのだ。
 けれど、活動そのものはきちんと社会人のリーグ戦に参加し地元密着を進め、「テレビ業界人の発想」だろうがなんだろうがチームは野球に正面から取り組んでいたのだと思う。思いたい。
(興味がなかったのでよく知らなかったが、変則ルールでやろうとしたり野球本来の面白みを損ねる過剰な演出などで眉をひそめる人も少なくなかったとはちらちら耳にするが)

 監督のテレビ的発想はさておき、チームのメンバー達の野球に対する思いまでもがテレビ的だったわけではないはずだから。

 設立当初から、芸能界の大御所の始めたことだから多くの支援者がチームを支えたのだろうと思う。地元やキャンプ先の宮崎などで、有形無形の支援をしてきた多くの人たちもいただろう。
 クラブチームとはいえ、有名人のチームである。
「テレビでは見れない」欽ちゃん球団の野球を楽しみに、試合を見に足を運ぶファンもいただろう。

 それは、もちろんプロ野球チームとはまるで規模が違う。
 けれども、そこには必ずこのチームを愛してやまない人たちがいて、このチームを支えてきたはずなのだ。


 その「チーム」を、解散するという。



 山本の起こした事件は球団の遠征の時のことだという。
 チームの関係者が何らかの形で関与していたかどうかは知らない。
(追記:ホテルに戻る前段階に被害者含む少女4人と店で飲酒していた際にはメンバーも同席したいたらしい)

 だから、監督としてオーナーとして事件に責任を感じる、もしくは責任を負うというのはわかる。
 けれど、それで即「やめた」というのが「責任を取った」ということになるんだろうか?

ことの大きさからも責任を感じる。私が始めた野球だから、大好きな野球だけど、やめることにしました。

「自分が大好きな野球をやめる」ことで責任を取る?

じゃあ、今までの仕事を辞めて入団した選手の人生の責任は?
遊びではなくこのチームでやっていこうと決意してきた想いの責任は?
地元活性化の望みを託してきた地元支援者に対する責任は?

球場に通って欽ちゃんのマイクパフォーマンスや選手たちのプレーを楽しみに見てきたファンに対する責任は、いったいどうなるの?


 プロ野球の球団じゃないから、オーナーが「やーめた」と言えば誰に止める権限もなにかの会議で諮りにかける必要もない。だからって、17日の事件からたった2日でこのオーナーは「事件の社会的責任をとる=球団を解散する」と決断してしまったのだ。

たとえクラブチームとはいえ多くの人に支えられたひとつのチームを、こんなに簡単に。
誰にも相談することなくたった一人で。
たった2日間で。

このオーナーは自分が作って愛してきたはずのチームを殺す、というのだ。


 おそらく、萩本欽一としては最大限に悩んで(たった2日とはいえ)どうやれば一番責任が取れるのかを考えて出した結論なのだろうとは思う。けれど、そこには「自分が始めたチーム」がもう自分ひとりのものではなくなっているという意識が完全に欠落している。
 自分がチームの選手一人の責任を取るために、ファンも含めたチーム関係者全員に痛みを負わせるという矛盾した結果を導いているということに、彼が気付くことはあるのだろうか?

 メンバーが起こした不祥事に対する社会的責任をとる、というならば「解散」という形で投げ出すことではなく他にも方法はあるはずではないか。
「やってもやめても迷惑がかかる」というけれど、「やめる」方がなんの関係もない人々にかかる迷惑が大きいのはちょっと考えてみればわかること。ならば自分がたとえ事件で「うんざり」していたとしても、苦しくても、継続することが責任のとり方ってものではないのか。


ぶっちゃけ、私は欽ちゃん球団が解散しようが何しようがはっきり言って痛くも痒くもない。


………その筈なのに。


なんでこんなに悔しいんだろう?
なんでこんなに腹が立つんだろう??


それは、プロ野球だろうが企業の野球部だろうがクラブチームだろうが草野球チームだろうが───
ひとつのチームが誰かの一存であっさりと消滅させられるというその現実が痛いだけなのだろう、と思う。



実は周囲の反対や説得にあって、「やめるのや~めた」ということになる可能性も大だなぁとも思っている。
でも、「やめます」と言った事実は消えない。

(略)ゴールデンゴールズの鈴木康友コーチがチーム全体が少し浮かれ気味で、指導がなかなか行き届かない、というようなことを話していた(谷沢健一談)ということもあったようで、指導が行き届かなくなってきて嫌気が差してきたんじゃないか?とか言いたくなってくるよ…。
自分が嫌になったなら監督を辞めて現場から退けばいい。新たな監督を探してきて、創設者であり単なるスポンサーとなればいい。
もうゴールデンゴールズは「欽ちゃんのオモチャ」の範囲を超えてしまっているのだから。

【追記】
いただいたコメントに対するレスにも書いたことだが──

「解散する」という重大な決意を選手たちに伝えるために、このオーナーであり監督である人はメールという手段を使ったのだという。
一人一人を訪ねるなり選手とスタッフを一同に集めて土下座するとか。
せめて一人一人に電話して肉声で伝えるとか。
そういった手段が何故選べなかったのだろう。
その挙句、テレビの記者会見(それも正式の会見ではなくインタビューに答えたような形で)
「みんな、ごめん!」
で済まされたのではスタッフも選手もたまったもんじゃない。

彼には、一緒にチームを作ってきた仲間に対する「誠意」というものがあるんだろうか?

そして、ちらっと聞いたら山本を諌めながらも庇おうとしているようにも見えるが、チームに関係してきたありとあらゆる人の「チーム解散?」という衝撃や痛みをすべて山本一人に押し付けているだけにすぎない。
一問一答の最後にあった「山本さんに対して一言」という問いへの答えが、

「球団、なくなっちゃったよ」

である。
正直、これを読んで私は怒りや憤りよりも背筋が寒くなった。
山本のしたことは愚かで許されざることだ。
しかし、山本も野球を真剣に愛してきた人間であることは間違いない。
熱狂的なカープファンである山本は、「球団を愛する」ということはおそらく頭ではなく肌で、身体そのもので知っている人間の一人だと思う。
その山本に対して、
おまえがそんなことをやったから球団が無くなったぞ
と突きつけることで、萩本欽一は野球人としてこの上ない罰を山本に与えたのだ。

繰り返すが私は山本にはしかるべき罰が与えられても当然だと思っている。
しかし、視聴者には涙を誘うようなふりをしてこんな罰を与えるこの人を、心底恐ろしいと思った。

ゴールデンゴールズには存続してもらいたい。それはスタッフや選手のためにである。
しかし、萩本欽一にはできればとっとと監督を退いてちゃんと野球の監督ができる人間を後任に据えていただきたいものだ。

※7/20 23:17追記(解決次第削除)
現在どうもgooブログのトラックバック機能が不調なようです。
もしかして一部のブログの方には復旧後2~3回まとめてTBが行くということがあるかもしれません。その場合は申し訳ありませんが削除お願いします。


【7/23追記】
欽ちゃん解散宣言撤回「やるよ」
週末、実家(ネット環境にない…)に行っていたためすぐに追記することが出来ませんでしたが、新聞と夕方のニュースでこのことを知った。
この記事の1回目の追記の何行か前に、
実は周囲の反対や説得にあって、「やめるのや~めた」ということになる可能性も大だなぁとも思っている。
と書いたのだが、早くもその通りになったわけだ。
ニュースに、片岡選手が泣きじゃくっているのをなだめるように頭を叩く「キントク」。

彼女にその涙を流させたのはいったい誰だと思っているんだ?

いいようのない不快感と怒りがわいてきて仕方なかった。
トラックバック頂いたRROSEさんの仮説のような背景が無かったとも言いきれないがその仮説のような陰謀があったにせよ、なかったにせよ。
ごく素直に
「山本が不祥事を起こした」「欽ちゃんが責任を感じあろうことか独断で解散と口走ってしまった」「『やめないで』といわれて感動?して撤回することにした」
だったと解釈するにせよだ。

それならば、あなたが「球団を解散してまで取ろうとした責任」はどう取るつもりなのか

と問いたい。
「大好きな野球をやめる」
なら、責任を感じているあなた一人でどうぞ。
ちなみに、いち選手が起こした不祥事に対する責任に加え、「軽率に球団を解散するなどと発言して世間を騒がせ、関係者や選手やファンを悲しませた責任」というものも追加されていますよ。

とにかく、萩本欽一が「野球を愛する者」に対して重大な背信行為をしたという事実は消えない。
「人気者の欽ちゃんだから」
とチヤホヤしてこの事実を有耶無耶にすることはいかがかと思う。


おかげさまで、ただでさえ癒えない心の傷が全然関係ない方面からばっさり開かれてしまったことに対しても誠意ある態度でわびて欲しいものだ。
詫びられても許せないし、誰に対しても本気で詫びる気持ちなどないのだろうけど。