サイドキック日記

酒場での愉しさは酒場までの道の愉しさに及ばず。
永美太郎の記録。

高円寺へ

2013-05-18 12:16:33 | Art
昨夜より19日まで高円寺にて開かれています、『香山哲の赤青3Dおばけ展』に行ってきました。原稿上げたばかりの友人と二人、高円寺のアーケードをくぐった先のぼろテナント二階の会場へ。シカクという大阪にあるミニコミのセレクトショップが出張して、東京の一部で有名なミニコミ系セレクトショップ、タコシェ、模索舎には置いていない大阪のドープシットを会場で販売、20時からその諸作品の解説、その後香山哲さんならびに小林銅蟲氏による自作品解説(『ラスボス刑事』読み聞かせ)がありました。結論から言うと最高でした。漫画のイベント、シンポジウム、研究会や即売会など色々顔出しましたが、今まで自分が行ったものの中で一番示唆的なものを感じました。

オルタナティブ、サブカルシーンなどでよくあることですが、自らも同じ穴の狢でもあるに係わらず排他的な価値観を振りかざしがちです。いわゆるスノッブというやつでしょうか。今回のイベントでも、たぶんにそういうところに流れがちでしたが、一番感心したのがドグマ出版コンビであるところの香山哲小林銅蟲両氏。百戦錬磨のお二人はそういったコップの中的なノリがなく、圧巻だったのは自作品解説でした。細かいところは割愛しますが、今まさにコンペ(裏サンデー)で争っている最中であるところの『ラスボス刑事』を1~2話までをコマごとに細かく解説されていました。彼らはオルタナ・サブカルシーンでの活動が長いにもかかわらず、そういった排他的なものに飲み込まれずに踏みとどまっているというか、長くやっているからなのか自分たちが置かれている状況や、そこで自分たちが一番効果を発揮できるのは何なのかということをものすごく自覚的に立ち振る舞っている印象です。

裏サンデーのコンペはネットでの応募作品を読者の投票でランキングを取り足切りしていき、3回戦おこなわれた結果の頂点1人のみがネット連載枠を勝ち取るというもの。全ての得票数など白日の下にさらされまくるので、見ているだけでも心拍数の上がる鬼畜コンペです。当該の『ラスボス刑事』は2回戦終わったところで3位というとても良い位置なので、もしやワンチャンあるのか、と思っていましたがドグマのコンビは僕のそういった色気づいた考え方を一蹴するようなスタンスで、気持ちが良かったです。銅蟲氏曰く、俺は10年逆張っているからね、という台詞の重みというかなんと言うか。自分はちゃんとしたものは作れないんですよと言う前提の元、しかしそのちゃんとしていなくて、よくわかんないもの(不条理と言い換えてもいい)を武器にオーソドックスな形式の中にその奇妙奇天烈をスパイスとしたギャグマンガを描いておられ、物凄くその辺り自覚的にコントロールしてるんだなと解説を聞き感心し倒しました。こういうまともじゃないものは絶対に一番にはなれないから最後の3回戦で一番爪跡を残すには自分が何をするのかが問題だ、と仰られていて。その卓越した見通しに感動すらおぼえました。何より一番良かったのがそのドグマのコンビであるところの香山哲小林銅蟲、両氏の会話が完全に漫才になっているというか、会話の間が完成していて、聞いていて本当に愉快でした。

自分が出来ない事を知っているし、自分が只中にあるシーンについても自覚的で、その中の客の事にも目配せが利いています。完全なるプロフェッショナルです。色々な物事を天秤にかけ尚それでもリスクを取って前に進んでいる両氏は男前です。考えるところも多かったですが、何よりイベントが楽しいのが良かったです。個人をしてエンタメ足りえとるわけです。それはもう最高です。