サイドキック日記

酒場での愉しさは酒場までの道の愉しさに及ばず。
永美太郎の記録。

週末のこと

2013-11-25 19:59:26 | MOVIE
金曜の夜から月曜の昼まで京都の実家に帰っていました。父の還暦の祝いの催しで、親族が一同に会するということでそのために帰省しました。行きの電車の中でウラジミール・ナボコフ『ロリータ』を読み終わりました。ただただ傑作で、やっぱりワールドレコードクラスの作品は凄いなあ、と。長編としての話のボリュームの中に、物語を構成する時に必要な諸要素がこれでもかというほど詰まっていました。一般的に、物語には様々なジャンルがあります、ミステリーやアクションやロマンやナンセンスといった具合に。ナボコフのロリータには本当にその全てがあります、そしてその細部が連なって一つの大きな物語になっています。読み終わった後に大きな感動がありました。



実家に着いて夜、空っぽになっていた元自分の部屋で暇だったので駅前でDVDをレンタルしてきて観ました。

スタンリー・キューブリック 『ロリータ』1962年 153分

クエンティン・タランティーノ 『ジャンゴ 繋がれざる者』2012年 165分

キューブリック版ロリータはフィルム・ノワール仕様に出来上がっていました。なるほどなあ原作の持っている要素をこういう風に換骨奪胎するのかと感心しました。感心はしましたがいかんせん原作を読み終わって物凄く感銘を受けたばかりの状態だったので、少し食い足りなさを感じてしまったのも事実です。しかし、小説と映画を比べてあっちの方がこっちより優れているとかどうとかは、実にどうでもいいことです。元来が違うルールの元に成り立っているものです。サッカーと野球くらい違います、どちらも球技ですがそこが同じといった程度でスポーツとしては別種です、映画と小説はもしかしたらもっと違うかもしれません。ジャンゴはとっても面白かったです、痛快でした。タランティーのケレンは他の作家が用いるそれとは違った趣があります。嫌味がない。昔の作品には少しそういったものも感じられましたが、ここ最近はほとんどそれが感じない。そのことに物凄く驚きます。テーマやモチーフはあの世代特有のオタク臭いもののはずなのに、嫌になりません。多分、ただ好きなものと戯れているのではなくて、そこに意思や意義が見出されていて、その語り口に他の作家とは違った痛快さがあるように思います。

帰りの電車の中で車窓を流れていく景色を眺めながらふと、アニメ表現的なPANフォローについてぼんやり考えていたところ、漫画を描き始める頃から漫然と考えていた技法的な諸問題をかなりわかりやすく言語化出来るのではないかと思い立ちました。インスピレーションが降ってきたのです。とりあえず、ノートに3P位のメモを作りいずれもう少し具体的に取り掛かろうと思ったりしました。大江健三郎の『小説の方法』とか、ウンベルト・エーコ『小説の森散策』バルガス・リョサ『若い小説家に宛てた手紙』、といったような理論書を読むのが好きで、ついでにナボコフの『文学講義』もこの機会に読もうと、本棚にまだ未読になっている『賜物』も眠っていますが。理論書かどうか微妙ですが、漫画では山本おさむの『マンガの創り方―誰も教えなかったプロのストーリーづくり』は面白かったです。自分もかなりの理屈好きなので、いずれ自分の理屈を形にしたいものです。

フィールヤングを買って安野モヨコの『鼻下長紳士回顧録』を読んで、単行本にならなかった黄泉夜間や東京番外地の復讐戦がはじまったのかなと思ってみたり。久しぶりに実家に帰って時間を無為に過ごしまして、まあ色々でした。今年も残り少ないですが、今月中に原稿を完成させ次の道に向かって走り出そうと思います。

夢の話

2013-11-19 01:26:52 | MOVIE
映画を観ました。劇場で

『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』 新房昭之
『夢と狂気の王国』 砂田麻美

DVDで

『ウェイキング・ライフ』 リチャード・リンクレイター

個人的には劇場で見た2本はあまり肌に合わなかったなあ、といった印象。話しの種にはなるからまあそれでいいかなと言った感じです。で、友人から焼いてもらっていたDVDのウェイキング・ライフを観た。この映画は10年位前に観て以来凄く好きな映画で、その頃にもDVDを入手して何回か観ていた。今回数年ぶりに見直してみた。詳しい説明は省くけど、夢と現実のあわいを描いた映画で、実写映像をアニメーションにペインティングしたロトスコープ的な手法で撮られている。
 
まどマギを観ていて押井守の『ビューティフル・ドリーマー』を凄く思い出したんだけれど、ウェイキング・ライフもそうで、無限退行的なモチーフが物語の中で出てきます。平たく言うと、夢から覚めても夢の中みたいなことです。胡蝶の夢とかいいます。10年位前精神的に不安定だった頃よく夢日記をつけていたのですが、その頃にウェイキング・ライフにはまっていたのを思い出しました。フィリップ・K・ディックとか手塚治虫の『火の鳥』とかも同じテーマを描いてます。とかく人間は肉体と精神を分けて考えがちで、夢というものは蓄積された記憶のみでつくりあげられた仮想の物なので、形而上学的であったり自己言及的な物語ではよくモチーフに上がります。

劇場でまどマギを観ている最中、そもそも魔法少女ってなんなんだっけ、と少し疑問に思ってしまってそのことから抜け出せなくなってあまり作品自体を楽しむ事が出来ませんでした。ウェイキングライフを観ていて最後のくだりで劇中の登場人物でもあるリンクレイターに、主人公が夢から抜け出せなくなって困る、といったような事を言うとリンクレイターはディックの『流れよ我が涙、と警官は言った』の逸話を話します。それをみていてふと、ああまどマギはディックだったのかと納得しました。デックは晩年グノーシス教に傾倒していたらしいし。

60年代に花開いたカウンターカルチャーとしてのニューエイジ思想がSFにすくわれて、現代の日本まで脈々と繋がっているのでしょうか。極端な話しですし、それは一部の事なのですが。しかし、戦争が終わり、若者はインナースペースに救いを求めたり、革命に沸いたりしましたが、革命の炎は消え、冷戦が終わり世紀末は過ぎました。自分としてはそういったサブカルチャーが90年代にテロルに走ったりしているのを幼心に見ているし、あまりそういった自己を肥大化させた救いだなんだ、といった物語がその先に何かあるのか、と疑問に感じてしまいます。

素朴なイデオロギー批評めいていて、ちょっとこの考え方もどうよというのが正直なところですが。最近とみにオカルトとか神秘主義づいていることもあって、その辺りの結論めいたものを。と、いうことでディックの『ヴァリス』あるいはピンチョンの『LAヴァイス』でも読もうかしらといった今日この頃でした。

Waking Life - Tosca tango orchestra

新オテバニズム宣言

2013-11-12 19:31:09 | COMICS
風呂に入って、頭をごしごししている時に考え事や思いつきを閃くのですが、今日は少女漫画について少し考えていました。数日前に友人と話している時の話が頭に残っていたのだと思います。友人はマンガ家なのですが、同世代なのにも関わらず変った趣味の持ち主で、80年代ニューウェーブ期のロリコン漫画。しかも、今はすでに失われてしまったか朽ち果てて消えていった作家の作品を好む人です。彼は音楽、特にパンクロックを好んで聴く人なのですが一連の漫画の徒花的な表現やスタイルにパンキッシュを感じたらしいのです。大学時代に古本屋のワゴンにあったド下手くそなロリコン漫画にルーツを持っているといった稀有な方です。そこで私の話になり、自分は24年組み以降~リボン乙女チック以前のマーガレット系の少女漫画が好きだという話になりました。24年組みよりは大衆性があって乙女チック路線より、もっと地に足が着いて等身大な雰囲気が、牧歌的で好みであるという話をしました。それが、自分のルーツかどうか微妙なところがありますが90年代サブカル少女漫画を読んでいたところかはじまって、たどり着いた先はそこだったわけです。私の漫画を読んだ少女漫画の編集さんにその頃の少女漫画に作風が似ているといわれたのも大きかった気がしますが。

 最近の少女漫画にあまり見ない当時の類型的なキャラクターといえば、おてんばキャラでしょうか。今はどじっ子とかその辺りに流れてしまって特に主人公に性善的な明るさとか元気さ真っすぐさが足りないなあ、と。そういうのが好きだったのです。河あきらとか沖倉利津子が描く漫画しかり。それでもっとそういうキャラクターをアッピールしていかなければ、と一人風呂の中で奮え立ちまして、おてんばキャラに光を!ということで新オテバニズム宣言と相成ったわけです。

ここで、主張したいのはおてんばという形容は女の子のものだと思いますが、ここからは男子にも適用可とすればいいと思います。最近元気で明るくて爽やかなキャラクターの男子が少ないと思っていましたし。おてんば男子というのも趣向が凝ってていいと思います。これを読まれている皆さんは積極的にオテバニズムについて考え発言していきましょう。我々の少女漫画の明るい未来のために。





ちなみに、これはオテバニズムの神こと、ちばてつやの『島っ子』の1コマ。60年代中期に週刊少女フレンドの連載ですから当然『Drスランプ』より前ですよ。これこそがオテバニズムです。

ウイーク

2013-11-06 23:08:44 | LIFE
ここ一週間は、大体朝7~8時に起きて、弁当作って朝ごはん食べて、9時に家を出て、10時に職場に着いて、夜9時過ぎ頃に帰宅、風呂に入って自分の原稿を小1時間し、夜ご飯作って食べて、寝る。という生活を続けています。健康です。通勤中に読んでいるナボコフの『ロリータ』がめっちゃ面白いです。半分ぐらい読んだ。仕事ウィークが終わる頃には読み終わるでしょうか。三食自炊が1週間続くと自分の作る飯に飽きる。人の作ったご飯が食べたいです。


全身の痛み

2013-11-01 07:16:55 | LIFE
朝起きる時身体が痛くて難儀しています。全身筋肉痛です。最近6時間以上椅子に座っていると腰、或いは尾てい骨辺りが痛んでくるので、これはちょっとまずいなあと思いまして。多分筋力も低下しているから長時間の座り作業に負担があるのだろうと。筋トレをしたんです、何年かぶりに。腕立て、腹筋、背筋、スクワットを30回。ギリギリ出来ましたが、学生時代の自分と比べてこんなに筋力が衰えているんだと愕然としました。自分で言うのもなんですか、私は案外スポーツマンで高校生の頃学年で十数人しかいなかった全国共通のスポーツテストの結果が総合Aクラスだったこともありました。昔とった杵柄、ということもありスポーツなんてしなくても自分は案外動けるたちだと思っていたのですが。

このごろまた寝むれなくなってきて、お酒飲んでごまかしてたのですがそれもあんまり続くとよくないなあと思って。お酒をよく飲むせいで腹回りに肉もついてしまっているし。今日からまた久しぶりに1週間ちょっとアシスタント仕事があるのでそれが終わったら病院行って薬もらってこよう。

ペン入れ半分くらい終わったのに昨日は筋肉痛でだるくてあんまり作業できなかった。歳とりゃ体は衰えますが、今のうちから気をつけていれば元気に暮らせるのでは、なんてぼんやりと思っています。

長生きしたいと思うのは、年とった証拠に他なりませんな。