階段を上がると、小さめの鳥居の向こうに、茅葺き屋根の社殿が見えた。
心の中で小さく「ワォ」とつぶやく。
両脇背後、いや、四方を山に囲まれ、こじんまりとした社殿が厳かに、凛とそこに座している。
人影はない。風が微かにそよそよとそよぐ。何度も言うが、人影はまったくない。つまり、誰もいない。つまり、大神宮に仕える人もいない。つまり・・・静か過ぎるほどに静かで、厳か過ぎるほどに厳かだ。
風がほんの少しそよそよととそよぐ。微かにそよそよとそよぐ。
もしかしたら、神様は今日は留守なのかもしれない。もしかしたら今日は、神様は僕を迎えてくれないのかもしれない。それはそれで構わない。と言うより、それは僕にどうこうできる範疇のものではない。
そういう時は、神様に、「逢いに来たよ」と伝言を残すのだ。だって、神様は、まだ僕の事を知らないのかもしれないからね。