ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

大失恋のその先にあるもの。

2017-08-23 08:38:01 | Weblog
ロントモと僕は大層仲良しになった。
僕らを結びつけた友達は、大学を卒業して、さっさと街を離れてしまった。

ロントモと僕の絆が深まったのは・・・たぶん、二人とも同じ時期に大失恋をしたせいだと想う。
その当時は大真剣で大真面目な懸案事項なのだが、今思うと、すごく可笑しい。

ロントモの大学へ遊びに行った。ロントモと一緒に講義を受ける。
別れたばかりのロントモの彼女が遠くの席に座っている。当たり前のことだが、別れたといってもロントモは未練タラタラだ。
ロントモが言う。

「シング、彼女の薬指に、俺があげた指輪がはまっているか見てきて欲しいんだ」

えっ?嫌だよ。別れた男がくれた指輪をしている女なんているわけないじゃん。嫌だよ。と、強く思うのだが、そうは言えない。だって、大真面目な泣きそうな顔で僕に頼んで来るのだから。

「よし、わかった、おれ、見て来る!」

それほど広くない教室。教授が前を向いた隙に、チョコチョコと進んで、ロントモの元カノがいる場所へ近づいていく。言っておくが、僕はこの大学の学生ではない。ぜーんぜん関係ない人だ。

僕は無事にロントモの元カノの隣の席へとたどり着いた。面識はある。

「やぁ、久しぶり」

ロントモの彼女の驚きったらない。
だって、関係ない人がいるんだもん。

「別れちゃったんだって?」

と、なんだかどうでもいいことを話す。というより、他に話すことなんてない。他愛もないことを話しながら、僕はロントモの元カノの手元を覗く。

「じゃあ、またね」

僕は元カノの隣の席を離れ、チョコチョコと進んで元いた席へ。

ロントモは「どうだった?」と聞きたい気持ちを必死で隠しながら、祈るようにうつむいている。

僕は、黒板に向かって喋っている教授の姿を眺めながら言った。

「指輪・・・はまってなかったよ」

ロントモはうなだれながらつぶやいた。

「そうか・・・なかったか」

僕はその時、嘘をついたんだ。

元カノの薬指には、ロントモがあげた指輪とは違う指輪がはまっていた。つまり・・・新しい彼氏から貰った指輪が・・・。新しい彼氏というよりもロントモの前の彼氏と寄りを戻したということらしい。つまり、古い彼氏なんだけどね。

言えないよなぁ、そんなこと。だって、すでに、ロントモの目が真っ赤だったんだもん。

僕らは、たぶん、とても仲良しだった。


失恋したのは僕も同じで。
大学の友達が女の子を紹介してくれるという。友達と友達の彼女と友達の彼女の友達と僕の4人でご飯を食べに行った。
後にも先にも、女の子を紹介してもらうなんてことはこの時しかない。

その頃の僕は、なんでも唄にした、というのは前に書いた。なんだって唄にする。なんだって唄になる。失恋も唄になるが、女の子を紹介してもらったって唄になる。

唄を作った。結果的に、その時一度きりしか会うことはなかったのだが、唄を作った。


僕の部屋から駅で三つくらい離れた所にあるロントモの部屋。出来たばかりの唄を聴かせてやった。

〜目を閉じれば僕の罪が消えてくようで〜

と僕が歌ったところで、「消えねぇよ!」とツッコミを入れてきたロントモのことをよく覚えている。

僕も笑ったし、ロントモも笑った。

どう?と聞くと、ロントモは答える。

「いい曲だよ」

そんな風に、僕らは大層仲良しだったんだ。

紹介してもらった女の子の顔はちっとも覚えていないのだけれど、名前は今でも覚えている。

「この曲のタイトルは何にしようかなぁ?・・・ねぇ、秋は英語で何?」

「オータムかフォール」とロントモは答える。

「よし、じゃあ、フォールとチャイルドをくっつけてと・・・フォール・イン・チャイルドにしよう!だって、その子の名前、アキコだから」

「おい、バカなのか?そんなんでいいのか?けっこういい曲だぞ?そんな決め方でいいのか?かなりいい曲だぞ?そんな安易でいいのかよ?」とロントモは言う。

「いいのいいの。そんなんでいいんだよ。」

と僕はちょっと浮かれながら答えるのである。

なぜ浮かれているのかというと、新しい唄が出来たことと、いい曲だと言ってもらえたからなのである。それだけで、僕はご機嫌になれるのである。

つづく


「Fallin' Child」

Just baby oh my love
傷ついた夜はその胸の中眠らせてよ
空っぽの空を埋め尽くしてよその笑顔で

秋の風に吹かれながら僕は 止められない夢もてあそぶ
君と出逢って口ずさむ唄は 甘い吐息にかわって行く

夢で咲く君は花のように 優しすぎて
瞳を閉じれば僕の罪が消えてくようで
だから・・・

Just baby oh my love
ずぶ濡れの朝はこの腕の中で眠ってよ
空っぽの空を埋め尽くしてよその涙で

泡沫の夢儚い恋さえも 人の波にさらわれそうで
ただ何もかもが切なく胸に響く 風の唄もかき消されてく

空を舞う君は鳥のように はばたくこと
夢見てるいつか遠い国へ行きたいの?
だけど・・・

Just baby oh my love
ずぶ濡れの朝はこの腕の中で眠ってよ
空っぽの空を埋め尽くしてよその涙で
Just baby oh my love
時には世界が僕と君に冷たくても
心配しないで僕のそばで眠ればいい

Just baby oh my love・・・