まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

「青」 — 2022年の一年間を漢字一文字で表すと

2022-12-30 18:05:12 | Life

2022年の一年が間も無く終わろうとしています。12月12日に清水寺で発表された今年の漢字が「戦」という少々物騒な見かけの漢字でした。しかし、私が個人的に選んだ文字は「青」です。これからその理由を示していきたいと思います。

1) SAMURAI BLUE



今年の話題で印象的なのは何と言ってもカタールのワールドカップでの日本の活躍ですね。ドイツを破り、スペインを破り、クロアチアとも対等な勝負をした日本の活躍は感動的でしたね。東京タワーもサムライブルーになっていました。

また、スペイン戦で勝ち越しのゴールを入れた田中碧選手ですが、名前が「あお」でした。生まれた時、空が青く晴れ渡っていたというので「碧」と名付けられたとのことです。

2)優勝のアルゼンチンも準優勝のフランスもブルー



ワールドカップで優勝したアルゼンチンもフランスも青系統のユニフォームでした。今大会では青のチームが歴史的な活躍をしたと言えるでしょう。

3)サッカー漫画の「ブルーロック」



サッカー漫画の「ブルーロック」も人気となりました。三苫薫選手もゲームのCMに登場していましたね。

4)セ・リーグ優勝のヤクルトもブルー



ヤクルトスワローズの村上宗隆選手は「村神様」として今年の流行語大賞となりましたが、セ・リーグ優勝したのは青を基本的なユニフォームカラーとするヤクルトスワローズでした。

ヤクルトスワローズのエースピッチャーの小川泰弘投手は、たまたま私と出身(愛知県田原市)と出身高校(愛知県立成章高校)が同じだったので、入団依頼ヤクルトスワローズを応援していました。リーグ優勝おめでとう!

5)YOASOBIの「群青」



YOASOBIは世界的に話題となりましたが、今年は「群青」が村上宗隆選手の入場テーマ曲でした。この曲はもともとブルボンのアルフォートというチョコレートのタイアップ曲でした。

6)プロ野球日本シリーズ優勝したオリックス・バッファローズもブルー



日本シリーズはオリックス・バッファローズが優勝し、日本一になりましたが、ユニフォームは濃いめのブルーを基調としていました。

7)きつねダンスのコスチュームもブルー



日本ハムファイターズのファイターズガールズの「きつねダンス」が今年話題を呼びましたがユニフォームはブルー系でした。

8)インドのクリケットのチームカラーもブルー



インドはクリケットが圧倒的な人気のスポーツですが、インドのチームカラーはブルーです。今年はクリケットのアジアカップで3位、またレジェンドチームが戦う世界大会ではインドが優勝しました。

9)他のインドのスポーツも国際試合ではブルーが基本



上の写真のほとんどは2021年に開催された東京オリンピックの写真ですが、ゴルフ、レスリング、ホッケーなどほとんどがブルー系のユニフォームでした。東京オリンピックの男子槍投げで金メダルを獲ったニーラジ・チョプラ選手は、今年の世界陸上では銀メダルでしたがブルー系のユニフォームでした。

10)インドの国旗の中央部のアショカ・チャクラはブルー



インドのユニフォームがブルー系が多いというのは、インドの国旗の中央部にあるシンボルマーク「アショカ・チャクラ」がブルーという理由のようです。今年はインドの建国75周年でした。あと一年くらいで、インドの人口が中国を抜くと言われています。

11)話題の映画「アバター:The Way of Water」のブルー



映画「アバター」が世界的にヒットしました。すごい映画でしたね。「アバター」とはもともと、サンスクリット語で「化身」という意味なんですね。インドでは青い色の神様がよくいますが、この映画、インド神話の世界観に繋がる部分がある気がします。

12)映画「TOPGUN: MAVERICK」の空の世界



この映画で青い色が出てくるわけではないですが、空と海の世界はやはり青ですね。

13)NHKの朝ドラの「舞い上がれ!」の青



「舞い上がれ!」は、飛行機がテーマで、青い空や海が登場します。学生時代の「なにわバードマン」のユニフォームもブルーでした。20世紀初頭の女性飛行家アメリア・エアハートの引用も素敵でした。

14)飛ぶことの夢とディズニーシーの「ソアリン」



私は昨年の暮に長年住んだシンガポールから日本に戻ってきたのですが、日本で個人事業主として登録した屋号は「Wings2Fly」でした。また、今年、ディズニーシーで「ソアリン」に乗りましたが、昔からの空を飛ぶことの夢をテーマにしたアトラクションでした。

15)エルビスの「ブルー・スエード・シューズ」



映画「エルビス」が上映されましたが、この映画で、エルビスがツアーを始める時にかかる曲が、「ブルー・スエード・シューズ」。もともとはカバー曲なのですが、彼が圧倒的な人気を獲得するきっかけになる曲です。

16)ブルーベリーのスイーツ



今年は東京に戻って、スイーツを食べましたが、ブルーベリーを使ったものを多く食べました。右上の「ゼフィール」というのはロシアのスイーツで、紫色のものはブルーベリーを使っています。

17)Blue Tokai Coffee & Blue Bottle Coffee



インドのコーヒーブランドのブルートーカイが日本に進出してきました。今年、六本木ミッドタウンのポップアップショップに何度か足を運び、インド各地のコーヒーをトライしました。ブルーボトルコーヒーは数年前に清澄白川にできて、その後数カ所に店舗ができました。

18)バタフライピー・ティー



日比谷公園内のカフェで、今年初めて「バタフライピー・ティー」というハーブティーを飲みました。青い色をしているのですが、レモンを入れると紫色に変わるというお茶です。

19)南インド料理のダバ・インディアの青い店内



今年は東京でいろんなインド料理を食べました。京橋に長蛇の列のお店があるので何だろうと行ってみたら、ダバインディアでした。南インド料理の名店ですが、とても美味しかったです。青い色の壁が美しかったですね。

20)隅田川、永代橋、東西線



シンガポールを引き払い、東京での生活を始めて一年、住んでいるのは門前仲町。茅場町のコワーキングスペースも通ったので、永代橋は何度も通いました。東西線のカラーはブルーです。

21)茅場町の日本橋山王神社の狛犬がブルーのマントをつけている



今年の中旬から、兜町のKabuto Oneの3階にあるブックラウンジ“Kable"に通って仕事をしているのですが、窓から真正面に見下ろせるのが日本橋山王神社。狛犬が青いマントを着て上を向いています。今年は、この神社だけでなく、日本橋小網神社や、兜神社なども初めてお参りしました。

22)北斎ブルー



今年、六本木ミッドタウンのサントリー美術館で北斎展が開催されていて、たまたま最終日に入ったのがきっかけでした。そこで北斎が、「ベロ藍」と呼ばれていた「プルシャンブルー」を使って風景画を発表し、江戸で大人気になったというのを知りました。その後、墨田区の北斎美術館も訪問しましたが、北斎のブルーの世界にはとても興味をひかれました。江戸の人々にとって、それまでみたことのなかった青の色なんと革命的だったのかと想像するとますます青に魅惑されたのでした。

23)フェルメール、モネ、ピカソの青



西洋でプルシャンブルーが開発される前、ウルトラマリンなどの青はとてつもなく高価な画材でした。はるか東方の地で採れる宝石を原材料としていたので、高くて当然でした。フェルメールはウルトラマリンの画材を買うために財産を使い果たしたと言われています。今年は原田マハさんの本に影響を受けて、マチスや、ビアズレーなど西洋絵画の世界に興味を持ちましたが、ピカソも「青の時代」という青をベースにした数々の作品を残しています。また、北斎はフランスの印象派にも影響を与えたと言われていますが、モネの睡蓮の池は日本庭園の影響を受けたものだそうです。今年日本橋で印象派の絵画を体験するイベントがありましたが、モネの池の水の世界はまさに印象的でした。

24)ウクライナの国旗のブルー



上の写真は木場公園にあったウクライナを応援するための飾りですが、ウクライナの国旗はブルーとイエローでした、今年一年、この青の色は忘れられない色となりました。

25)アメリカ中間選挙のブルー



アメリカの選挙は赤(共和党)と青(民主党)の戦いなのですが、今年行われてた中間選挙、レッドウェーブで赤が圧倒的勝利となると言われていたのですが、そうはならず青が持ち堪えたと言えるでしょう。下院では共和党が多数になったのですが、上院はそうはなりませんでした。

26)英国女王プラチナ・ジュビリー



エリザベス女王は今年亡くなりましたが、今年の頭にはプラチナ・ジュビリーのお祝いがありました。その式典の初日、ロイヤルファミリーの女性たちが着ていた衣装はブルー系でした。

27)故安倍晋三前首相のブルーのスーツ



安倍晋三前首相は今年、日印協会の会長に就任され、私はその就任式典で始めて実物の姿を拝見したのですが、その鮮やかなブルーのスーツが印象的でした。日印協会の朝食会でもお会いできる予定だったのですが、亡くなったのはその二週間ほど前のことでした。

28)東京オリンピックが残した汚れたブルー



今年東京オリンピックの不祥事が報道されましたが、AOKIが話題でした。

29)青色申告



今年、個人事業主の登録をし、区が主催する青色申告のセミナーにも何度か参加しました。

30)イケアのブルー



幕張のイケアにも何度か行きました。

31)ブルー・オーシャン戦略



「ブルー・オーシャン戦略」の本が出たのは10数年前のことですが、この話はかなり刺激を受けました。競争相手の少ないインドなどに着目しているのはその理由です。

32)HOKAのブルー



シンガポールから日本に帰ってきて、HOKAの新しいシューズを買いました。シンガポールでもHOKAのシューズを履いていたのですが、日本で買ったのはブルーの物でした。“Time To Fly"というそのスローガンに惹かれました。

33)青森の「青天の霹靂」



たまたま友人が連れていってくれた銀座のクラブが、青森を支援していました。その繋がりで、「青天の霹靂」という青森のお米を初めて食べました。美味しかったです。

34)田原市の青い菊の花



私は愛知県田原市の出身なのですが、東京や横浜で田原市の産物を販売するイベントがありました。そこでもらった青い菊の花は自宅で、一ヶ月ほど元気に咲いていました。田原市は農産物の出荷額では日本トップクラスですが、花卉の生産も日本一です。

ということで今年一年の青にまつわるあれこれを集めてみました。思った以上に数が多くあり、自分でもびっくりしましたが、これを見ても今年が「青の時代」であったことをご納得していただけるかと思います。コロナ禍がひと段落し(中国はまだ大変な状況ですが)、海外渡航への青信号が灯った2022年、未来は青空と大海原の鮮やかな青さに輝いている感じです。そんな時代に自分はいつまでも青年の心で未来に向かっていきたいと思っています。

それでは来年が皆様にとりましてもよい年となりますよう、お祈りいたします。
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世界のクリスマスコマーシャル2022(その5)-Boots, CocaCola, Amazon, LVなど

2022-12-24 22:52:54 | 広告

2022年の世界のクリスマスコマーシャルを集めていたら、もうクリスマスになってしまい、紹介しきれなくなってしまったので、一気にご紹介したいと思います。

BOOTS UKの “Joy for All"



英国小売店のBootsのクリスマスコマーシャルです。Lydia West演じる女性が、バスの中で不思議な眼鏡に遭遇します。それをかけると、周りの景色が楽しくゴージャスな雰囲気に変化します。



最後は、眼鏡を取っても、その楽しさが現実のクリスマスに。ラストシーンで、サンタクロースがその眼鏡を持ち帰るのが示唆されますが、“S.C."というイニシャルは「サンタクロース」のSとCだったのですね。

広告代理店はThe Pharm VMLY&Lという会社。プロダクションは、Academy Films、そして音楽はホール&オーツの“You Make My Dreams"という曲。

コカコーラの「母親のレシピ」



コカコーラのグローバルコマーシャルです。日本でも放映されているのですが、日本版は短すぎてストーリーがいまいちわかりませんね。すでに他界した母親のレシピにしたがって、クリスマスのパイを作ろうとしている男性。それを見守る母親というストーリーです。



“Just Like Mama Used To Make"という副題がついているのですが、亡くなった母親が作った料理の味が忘れられず、母親が残した手書きのレシピを頼りにパイを作るのですが、試行錯誤して何とか完成させます。

その過程で登場する母親の姿とコカコーラ。最後に登場するコピーは、“Holidays always find a way" は「ホリデーはいつも道を見つける(ホリデーシーズンになればすべてが何とかなる)」というような感じです。

コカコーラ社のクリスマスコマーシャルはもう一つあって、コカコーラのトラックが何台も走っているだけというバージョンがあります。



日本で放映されているコマーシャルは、この二つが合体しているので、よくわからなくなってしまっているのが残念です。

アマゾンの“Joy Is Made"



今年のアマゾンのコマーシャルは、娘の好きなスノードームの世界を自分の家の温室内に作ってしまうというものです。



ロンドンのLucky Generals というエージェンシーが制作したものですが、監督はニュージーランドのTaika Waititiを起用しています。

ルイヴィトンのクリスマス



“Happy Together"という曲(1967年、タートルズ)に乗せて、テディベアらがホリデーを楽しむという作品です。



Gary Freedmanという監督が映像を作っていますが、この人はコマーシャル監督として数々の賞を受賞しているすごい人です。

グッチの「ギフト」



Jordan Hemingwayという人が映像を作っています。豪華な鉄道の旅が進行していきます。ストーリーはよくわかりませんが、上質な旅という雰囲気が伝わってきます。



ペプシの「ピルク&クッキーズ」



ペプシコーラは、少し前から「ピルク」という妙な飲み方を宣伝していました。ペプシと牛乳をブレンドした飲み方で、それを「ピルク」と名付けました。クッキーにとても合う飲み方だということです。



クリスマスの夜にサンタクロースがこっそりピルクを飲もうとしているところに、こっそり忍び寄る女性(Lindsay Lohan) 。サンタクロースの姿は消えているのですが、テーブルの上に残されたピルクとクッキー。それを女性が飲むというストーリーです。この飲み方、「ダーティー・ソーダ」とも呼ばれているようなのですね。日本でも流行ったら面白いですが、健康によいのかどうか何ともよくわかりません。

マークス&スペンサーのクリスマス



マークス&スペンサーは英国の有名なスーパーですが、ここも毎年素敵なクリスマスコマーシャルを作っています。



贈り物でみんながハッピーになるというのを映像で表現しています。

メリークリスマス!

海外のクリスマスの雰囲気を少しは感じていただけましたでしょうか?クリスマスの海外のコマーシャルはまだまだいっぱいあります。もう少し早めに仕込みをして、集めておけばよかったと反省をしております。それでは皆様、メリークリスマス!そしてよいお年を!

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世界のクリスマスコマーシャル2022(その4)-英国スーパー、ASDAの「エルフ」

2022-12-23 15:58:49 | 広告
Asda(アズダ)は英国のスーパーではトップ3に入るメジャーな会社ですが、今年は、エルフ(妖精)のキャラクターを使ったクリスマス向けキャンペーンを展開しています。

これを演じているのは、ウィル・フェレル(Will Ferrell)というアメリカの喜劇俳優ですが、2003年に公開された「エルフ—サンタの国からやってきた」というコメディー映画に登場したキャラクターをそのまま起用しています。この原作の映画を知っていないとよくわからないかもしれないのですが、まずは今年のコマーシャルをご覧いただきましょう。



ストーリーをざっと解説いたします。

2003年の映画の設定では、この「バディ(Buddy)」という名前の妖精は、人間なのですが、赤ん坊の時にサンタクロースに北極の妖精の国に連れ去られ、妖精として大人になったキャラクターです。映画では実の父親が住むニューヨークにやってきて、そこで引き起こされるドタバタ喜劇がテーマの映画です。

このコマーシャルでは、ニューヨークではなく、妖精が英国のASDAのスーパーにやって来たという設定です。いたるところに映画を連想させるセリフやシーンが散りばめられていて、原作を知っている人には抱腹絶倒なんですね。

例えば、冒頭のシーンは、ニューヨークの雑踏でタクシーにぶつかって“Sorry"というシーンがあるのですが、それを再現していますし、彼の口癖の“Son of a nutcracker" (こんちくしょう)というセリフも出てきます。また、「これはコスチュームではない。私は妖精なので」というセリフも原作にも出てきます。

このスーパーでスタッフを募集しているという張り紙を見て、ここで働こうと思い、女性スタッフに連れられて、店内を見学することになります。しかし妖精なので、なかなかうまく適応できません。試食のお菓子をたくさん食べてしまって怒られたりします。



結局最後に、見事な飾り付けができているのを店長が見て、彼の採用を決めるというストーリーです。

では、原作の映画のトレーラーをご覧ください。



原作から20年近くたっているのに、ほぼそのままですね。この映画は英国では、クリスマスの映画としては最も人気のある映画の一つになっていたそうです。

主演のウィル・フェレルは1967年アメリカ生まれ。喜劇俳優として「奥様は魔女」などにも出ていた人なのですが、ブッシュ大統領の役でステージに登場して話題となったこともあります。YouTubeでWill Ferrel George Bushと検索すると面白い動画がいくつも出てきますが、例えばこちら。“You're Welcome America"というお芝居でジョージ・ブッシュの役をやっている場面です。



さて、ASDAの妖精のコマーシャルですが、キャンペーンのタイトルはこのようになっています。



“Have your elf a merry Christmas" というのは、「あなたの妖精にメリークリスマスを」という意味なのですが、もともとは“Have yourself a merry Christmas" のsが抜け落ちてしまってるというジョークなんですね。つまり「あなた自身にメリークリスマス」というメッセージです。

コマーシャルの中にもセルフチェックアウトのレジのsを消して、elf checkoutになっているところとかもクスッとするポイントです。

この作品を作った広告代理店は、Havas London、プロダクションはRattling Stickという会社。監督は、Danny Kleinmanという人です。数々の受賞作品を作っている人ですね。

https://www.rattlingstick.com/directors/daniel-kleinman/

今年の年末商戦、英国ASDAの売上はどれだけ伸びたでしょうか?他のスーパーもいろいろと工夫を凝らしているので競争は熾烈だと思いますが。


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世界のクリスマスコマーシャル2022(その3)- 英国の大手スーパー、セインズベリーのクリスマス・プディング

2022-12-23 08:55:56 | 広告

イギリスではクリスマスのコマーシャルは各社気合を入れて制作しています。流通小売業は特に、この時期のコマーシャルは毎年相当な制作予算を投じるので、見応えのある作品がいっぱいです。今回は英国スーパーの大手セインズベリーの作品をご紹介しましょう。

まるでシェイクスピアの時代の歴史劇のような設定で、“Once upon a pud”(昔昔、とあるプディングのお話)というタイトルの作品です。宮殿のカウンテス(伯爵夫人なんですが、もはや女帝ですね)がクリスマスのパーティーのための料理のメニューを吟味するところからストーリーが始まります。

このお話の中心になるのは、デザートとしてのクリスマス・プディングなのですが、実は女帝は昔ながらのクリスマス・プディングが大嫌い。若手シェフがデザートを任せられるのですが、ご機嫌を損ねたら、首をはねられてしまいそうです。さてどうなることでしょうか?まずは、こちらのコマーシャルをご覧ください。



https://youtu.be/RsbUYmK-Ohg

それではこの作品を細かく見ていきましょう。



まず、最初のオープニング。昔話の始まりのように、「はるか遠くのとある国で、パーティーが計画されていました」というナレーションが入ります。この声は、英国ではお馴染みの俳優のスティーブン・フライ(Stephen Fry)です。大真面目に物語を語っているところがクスッときます。

このオープニングのお城、よく見るとドラゴンが空を飛んでいますね。



宮廷のシェフたちが、パーティで出す予定の料理を持って登場してきます。



カウンテスが新聞のようなものを見ているのが写りますが、このタイトルが“Once Upon the Times”となっています。御伽噺の出だしは、“Once upon a time”(むかし、むかし)というのが定番なのですが、この“time”を“Times”としているところが笑えます。



シェフたちのプレゼンテーションは、どれもカウンテスからOKが出るのですが、最後のデザートのクリスマス・プディングを持っている若手シェフに対しては、ダメ出しが入ります。



プディングの炎を息で吹き消した後で、「私はクリスマス・プディングは嫌いなのよ。何か違うものを持ってきなさい。さもないと…」生命は無いと言っているような雰囲気です。



若手シェフは、恐怖におののきながらも、日夜新たなメニュー開発を続けます。



そしてパーティー当日。壮大な雰囲気の宴会です。



カウンテスがデザートを持ってくるように指示をすると、それは一瞬、クリスマス・プディングに見え、パーティー会場は凍りつきます。



怒りにみちたカウンテスの顔。

しかし、それを一口食べると、カウンテスの表情が変わります。



それは、従来のクリスマス・プディングではなく、キャラメライズド・ビスケット・プディングだったのです。

カウンテスは、一言“That’s a bit of me”(これは私好みだわ)。“Bit of me”というのは俗語で、「私が求めていたもの」というような意味になります。

パーティー会場は大きな歓喜に包まれて、エンディグ。 “Taste the difference”(違いを味わってください)というスローガンが決まります。



もはや壮大な映画です。すごい数の俳優をキャスティングし、ストーリーも編集も秀逸です。

この作品でカウンテスの役を演じているのは、アリソン・ハモンドというイギリスでは超人気の女優です。テレビの有名番組のキャスターもしているようなので、誰もが知るタレントです。

この作品を監督しているのがTim Godsallというディレクターで、カンヌとか世界的な広告賞をいくつも受賞しているすごい人です。

このコマーシャルを制作している広告代理店はワイデン+ケネディ(Wieden+Kennedy)のロンドン。制作プロダクションはアノニマス・コンテント(Anonymous Content)という会社です。

あと、忘れてならないのが音楽です。中世の英国の音楽のような雰囲気ですが、実は2000年にリリースされたアメリカのロックバンド、Wheatusの“Teenage Dirtbag”という曲のエリザベス朝アレンジというのが洒落ています。この曲は、One Directionもカバーしていましたね。そういう細かなところもすごい作品です。



https://youtu.be/FC3y9llDXuM

背景を知ると何と奥が深いんでしょう。クリスマスにはとても印象的なコマーシャルです。
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世界のクリスマスコマーシャル(その2)—マクドナルドUK

2022-12-21 21:46:35 | 広告
この時期、クリスマスのコマーシャルが世界各地で放映されています。前の記事では家庭用品オンラインのArgos社の作品をご紹介しましたが、今日は英国のマクドナルドの「ザ・リスト」という作品をご紹介します。楽しさをストレートにアピールするだけがクリスマスコマーシャルではないのです。ちょっと切なく、悲しい気分になるのですが、そんな中でささやかな家族の幸せを感るという作品です。まずは、ご覧いただきましょう。



ストーリーをおさらいしたいと思います。集合住宅に住んでいる少年と両親。母親のアドバイスで、男の子がサンタクロース用に贈り物リストを書くことにします。一生懸命リストを書く少年。



あれもほしい、これもほしいということで、リストがどんどん増えていくので、紙を継ぎ足していきます。あまりにたくさんのリストを見て、決して裕福ではなさそうな両親は、少々複雑な表情。いつの間にか、リストはすごい長さになってしまっています。



ある日、両親と一緒に街に出るのですが、少年が大事そうに持っていたリストが風に吹かれて空に舞い上がってしまいます。手が届きそうなのですが、リストは風にのって上空に消えていってしまいます。



せっかく頑張って作ったリストが無くなってしまったので、落ち込んでしまう男の子。それを両親が慰めます。



家族が向かう先は街角のマクドナルド。カウンターで両親に何かを話している家族の姿が、何か幸せそうでほろりときます。



店を出る時はもう暗くなっていて、雪も降り出しているので、相当長い時間、いろんなことを話したのでしょう。



上空に消えてしまったリストですが、かろうじて手元に残った紙切れには、両親の真ん中で手をつなぎ合っている少年の絵。



それはまさに家路に向かう家族の姿だったのです。



少年はこの絵をクリスマスリストに入れていたのですが、これだけは夢が叶ったというわけです。たくさんのプレゼントよりも最も大切なものをもらえたということなのかもしれません。



最後に出てくる“Are You #ReindeerReady? とは「(サンタの)トナカイの準備はできていますか?」という意味です。これは以前から使われているタグラインなのですが、マクドナルドというブランドが家族のささやかな幸せを大切にする素敵なブランドというのが伝わってきます。

このコマーシャルを作ったのは、英国のレオ・バーネットという世界的な広告代理店なのですが、監督として起用したのがトム・フーパー(Tom Hooper)です。映画「レ・ミゼラブル」や「英国王のスピーチ」を監督した人です。すごい人が作っていたんですね。そう思ってみると、もはや映画作品です。素晴らしいですね。

切ないなかにもほのぼのとした暖かさが滲み出てくる作品なのですが、両親の配役もあえてモデルっぽくない普通の人をキャスティングしているのもよいですね。少し生活に疲れた感じもあり、おそらくそんなに豊かな家庭ではないと思われるのですが、男の子のリストを全部実現するのは家計的に無理だったかと思うと、余計に切なくなります。

あと、この作品で使われている音楽についても語っておかなければなりません。このコマーシャルで流れている曲は、ベッキー・ヒル(Becky Hill)という歌手の“Only You”という曲です。ミュージックビデオはこちらをご覧ください。
Becky Hill “Only You”


ベッキー・ヒルは、1994年2月14日生まれの英国の歌手ですが、オーディション番組の2012年のThe Voice 出身です。2022年にBrit Awardで彼女が歌う“Remember”という曲がSong of the Yearにノミネートされています。まだ最近の歌手なのですが、彼女の切ない歌声が冒頭から最後まで流れています。

実はこの“Only You”というのは、彼女のオリジナルではなく、1982年にヤズー(Yazoo)が歌って大ヒットした曲なのです。50代、60代の人が聞いたら懐かしさでいっぱいになるんでしょうね。



今年のクリスマスコマーシャルはまだまだいろいろとありますので、クリスマスが来る前までになるべくたくさんご紹介していきたいと思います。
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