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花井虎一のこと ~お奉行様!補2

2007-10-30 | ヒストリ:連載
※サイト掲載済。こちらのほうが読みやすいです


花井虎一のこと、第二夜です。
先日は"花井が鳥居耀蔵に密告した"という根拠のひとつが高野長英の「蛮社遭厄小記」からきていること。
そしてこの書物が長英の誤解・憶測・バイアスが掛ったまま引用されている、という事を書きました。
ではもうひとつの根拠となっている2)の方、「鳥居耀蔵の告発状」はどうなんでしょうか。

この告発状は鳥居からその上司水野忠邦に上申されたもので、内容は先日来出ている無人島"密航"計画に関するものです。
①関係している人物/彼等の身分略歴/計画にどういった形で関与しているかが書かれた上、
②なぜこういった事が上申されたのか/誰が上申してきたのかが記されている。
②で出ているのが花井です。

「無人島渡海之儀も内実は名目ニ、異国へ漂流仕度つかまつりたき心組ニも相聞、其外平日難心得こころえがたき咄多く、不容易よういならざる事ニ心附、申立候段、奇特ニ奉存候」
花井は無人島渡航は名目で実は外国渡航したいという思惑も聞いており、その外にも納得いかない話も多く、これは容易ならない事だと思って申し立てて来た。
<中略>
「虎一儀は幼年ニ而父を失ひ、母壱人之手に育、孝道之聞へ御坐候もの故、全く貞実之至情より過慮仕候ニも可有之哉、つまる所好事之もの共偏ニ蛮国之事情を穿鑿仕度存込候より之儀ニ而、敢而邪心御坐候儀とは不奉存候へ共、虎一申立候儘、認取此段奉申上候、以上」
花井は幼年時に父を失い、母に育てられた孝行者として知られており、(密告は)全く貞実心からきているものであろう。
この密航事件は好事家達の海外事情を知りたいという心から出ているもので、悪気はないのだろうと思うのだが、花井が申立ててきた事をそのまま認めて上申するものである。


赤字にした所を見ると、申立候、花井が無人島渡航を見過ごす事が出来ずに鳥居に報告、それを鳥居がそのまま水野忠邦に上申した、と云う事になる。
高野長英の「遭厄小記」もさる事ながら、『花井虎一=密告者』の図式は恐らくここから発しています。
史料の性格から言うと当時の状況を語る第一次史料であり、当事者が書いているという事もあり、「遭厄小記」よりは信頼性・確度共に高いと見做すことができます。
しかしながらこの上申書自体の史料批判がなされていたかと、どうも長らく為されていなかったようですが、佐藤昌介氏が当時の史料を比較検討し、この鳥居の上申書が作られた経緯を検証しておられます。
(『洋学史研究序説』(昭和39年、岩波書店)という古いですが非常に優れた研究書です。佐藤さんは蘭学関係を勉強しようと思うと避けて通れない先生です)


まずしつこい様ですが、人間関係を整理してみます。
 老中…水野忠邦
 目付…鳥居耀蔵
 御子人目付…小笠原貢蔵
 緒小人…花井虎一
上下で、上司部下の関係となっています。
鳥居の告発状を見ると
 花井→小笠原→鳥居 若しくは 花井→鳥居
というルートで密告したということになる。そしてこれが通説になっているのですが…

鳥居と花井の間に小笠原と云う人物が挟まれております。
小笠原は鳥居の配下に当る人物なのですが、渡辺崋山に関して個別に探索をしているのです。

天保10年4月19日、小笠原は殿中にて鳥居耀蔵に呼ばれ、水野老中の内命という触れで、

1)イギリス人モリソンの事
2)夢物語の著者(渡辺崋山か)

の事を調査せよと命じられ、小笠原は前後2回に分けてその調査結果を鳥居に提出しています。
小笠原が提出した結果は3項目。

1)モリソンの事
2)夢物語著者の事
3)無人島密航計画の事

小笠原は鳥居に下された調査命令以外の事も探索して報告している。
さてさて。何故なんでしょう…?

つ、続きマース…(笑)



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>拍手いただきました方いつもありがとうございますv

>きりのなかむら様  以下反転です 
こんばんわ!お帰りなさいませ~。
デジカメが壊れるとは…折角行かれたのに災難でしたね(涙)
しかしその分脳裏に焼きつけて来られたのではないでしょうか?
「中村半次郎の霊に捧げる」歌碑ですか。はー…私も気が付きませんでした。
かなり大きな物のようなのに、見えども見えずだったのかしら?(笑
別府3兄弟に関しては、実は今創作を書いている最中です(笑)
でも実際に出て来るのは兄二人…;
作四郎に関して、私も少し調べてみたのですがやはり史料不足でよく分りません。
山鹿で戦死と云う所から恐らく別府景包という人物とイコールだとは思うのですが。うーん…?
ご紹介頂いたページ、私も昔訪問した事があります!
目次を見て興味ある所しか見なかったので、写真が載っている事には気が付きませんでした。面長な家系なんでしょうか…面影があるように思いますね。
こちらこそメールありがとうございましたv
よろしくお願いいたします☆

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