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シュツットガルト・バレエ団 「白鳥の湖」 感想
とりあえずゲネプロと昨日の初日(6月5日)を観ての感想です。
ゲネプロは3階のLブロックからでしたが、ほんとによく見えました!ここで高いところから見れてラッキーでした。
昨日は1階のL、今日は1階のRです。
ジョン・クランコ版は初演が1963年。
全4幕ですが、今回の来日公演では1幕と2幕は続けて上演されました。いつもそうなのかな?
ただ、舞台転換ということで、3分くらい要しましたが。
ちなみに4日のゲネプロでは、この1幕と2幕の合間、指揮者とオケが町娘(王子の友人みたいだから、町娘というよりは貴族っぽいですが)と王子の一連の踊りのコーダにあたる部分、(ブルメイステル版などでは黒鳥と王子のグラン・パ・ド・ドゥのコーダの曲)のテンポの確認などしていました。
2幕と3幕と4幕の合間は20分くらいの休憩があります。
ゲネプロでは3幕と4幕の合間、監督の駄目だしで、アマトリアンのヴァリアシオンとコーダの再確認。
シューズを変えるとかなんとかのやりとりがあったり。
フォーゲルと監督のやりとりはよく聞き取れず。
クランコ版については、バレエを見始めたころに読み漁った資料や、バレエ雑誌の「白鳥の湖」特集なんかで
・とにかく徹底的な悲劇(クランコはなにかにつけ、全員死んじゃうとか好きだよな)
・王子の踊りが増えている
という知識くらいしか持っていなかったのですが、特に予備知識が必要という話ではないので、パンフレットも読まずに、そしてキャスト表もろくに見ないでゲネプロと昨夜の本番に臨みました。
(えーと、そんで、その昔読んだ中にね、4幕で使っている音源の話もあったんだけどさー、それが思い出せないんだよな。。。。家に帰ったらわかるかも。)
で、観終わってから、パンフレット読んだけども、パンフレットの内容があんまり濃くないよね(かなり不満)
せめて4幕で使われている、オデットと王子のパ・ド・ドゥの曲くらい解説ほしかったですし、
ダンサー紹介やスタッフ紹介もあんなもんですかいの?
なんなんだろう、こういうところで、経費節減なのかなあ。
残念だわ。(きっぱり!)
最近のNBSの公演は、パンフレットの質の差があって、濃いときもあれば、自分で調べたらわかるような情報しか載ってないとかもあって、これじゃあお金を出して買った意味がないですよね。
じゃあジャパンアーツみたいに「サイン会前提ですか?」みたいなファン心をくすぐるような写真で攻めてくる、っていうふうな、「うっひょい!」な写真が多いかというと、そうでもないし。
求!読み甲斐のあるパンフレット!
というパンフレットへの文句はさておき、バレエそのものについては、わたしはけっこうこの「白鳥の湖」は好きですね~。
いやもちろん、好きなのはロシア系で、最も愛着あるのはボヤルチコフ版なのですが。
(ロシア以外だと、バーミンガム・ロイヤルのライト版が好き)
私の「白鳥の湖」の好みは。
・マリインスキーのものが大前提ってーのはあるけれども、最終幕はけっこうだれるような気がする。
・そうすっと、2幕にまとめたグリゴローヴィチ版は最後まで飽きさせない。
(※グリゴロ版は前のほうが好きです!)
しかしグリゴロ版はルースカヤがあって好きなんだけどもキャラクターダンスを全部ポワントにしちゃったのへの批判も理解できなくもない。(でも好きなんだー)
・オディールに関しては、グリゴロ版で使うあのヴァリアシオンのほうが不気味で好き。
・黒鳥の場面そのものは、ブルメイステル版が超面白い!
・トロワはペテルブルク系が好き。。。。。
・道化はあってもなくてもオッケー。
・総合的に大好きなのはボヤルチコフ版。
・ブルメイステル版は最終幕の「お、王子、、役立たず。。。。」ってのがちと微妙。
・美術はロイヤル系のものが好きだけども、ダウエル版のあのヘルメット冠だけはいただけない。
って。。。。結局「オーソドックスなロシア系かそれ以外か」のまず2択(ここにコール・ド・バレエの美しさとキャラクターダンスの素晴らしさが含まれちゃうんだよな)、
「それ以外」では純粋に楽しめるか、だめだこりゃ、かそのどっちかで、
このクランコ版は「面白い!!!!!」のでした。演出面ではかなり好きな部類でしたね。
白鳥の湖は悲劇が好きというのもあるのですが。
もちろん不満がゼロというわけではありません。
一番不満なのは、キャラクターダンスの場面。
ゲネプロではスペインがあーなっちゃったのに壮大なはてなマーク。
でも、ルースカヤのとんでもっぷりに比べたら、あのスペインはあれはあれでいいんじゃないか?と思います。
ってか、昨日の本番で2回目だから、目が慣れたというのもあるかもしれません。
1幕の音楽の使い方も、「へー、ほー、はあ」でいちいち「!」だったり「?」だったり、「・・・・汗」というのも無きにしも非ずなのですが、これはあえて、この曲を使いたかったんだろうな、、、と思ったりします。
残念ながら、もうクランコ本人はいらっしゃらないですし、存命でもドイツ語も英語も不得意だから聞けないし、なぜあの曲をこの場面で使っているかについては、日本語かロシア語で入手可能な資料で勉強するしかないのですが、
家に帰ったら探してみることにします。
第1幕
設定は「王子の城近く」
ピクニック風な風景があったから荘園?
人々の衣装もものっすごくフォーマルというよりは、少し軽装。
成人式で花嫁を選ばなければならない、その前日で自由を謳歌できる最後の日、
宮殿から離れたところでお気に入りのみんなと浮かれ騒ぐ
だそうです。でも途中で王妃に見つかっちゃうのはお約束。
王子のお友達っぽい町娘(という設定ですが、貴族っぽいよね)は美しいレースのドレスを着ていましたし、
ベンノと王子の従者もそれっぽい服装。
荘園の半分よっぱらったようなおじさん(気のいい父)と、怖いお母ちゃん(働き者の母)ふうのおばさんは、
役名は家庭教師ウォルフガングと家政婦だそうな。
家政婦役の方はゲネプロのときは男の人かなー、と思ったのですが、リュドミラさんだから女の人ですね。
先生かなと思いましたら、キャラクター・アーティストの方でした。
ウイリアム・ムーア演じるベンノと王子の従者役の男性5人がひとしきり踊ったり、
おじさんとおばさんとみんなとの掛け合い風の踊りやお芝居があったり、(家庭教師のくるくる踊りの曲とかここで使用)
ほかのコール・ド(王子と気心しれたお友達っぽい)の踊りのあと、
「王子様~」ってなふうにみんなが舞台後方へ手を差し伸べる、、、、でも王子来ないし!
おかしいな~、王子、来ないのかな~?というみなさんのところへ、手相見の老婆に扮装した王子が登場。
女の子を喜ばせる占いをしたり、別の女の子にはいじわるな手相見をしたり、家政婦をからかったり。
そんなくだりのあと、みんなの中にまぎれて、扮装を解いて、素敵な王子様になってじゃじゃじゃーんと登場!
これは道化の音楽だったかな。
王子の踊りがふんだんにあるので、王子が目当てで観に行った人にはたまらない演出だと思います。
フォーゲルもいちいち高くきれいに跳んでくれるし、後ろ足も綺麗だし、笑顔キラキラ金髪パサリだし、
愛されキャラをいかんなく発揮。
わんこなロミオなんだけども、お育ちがよさそうで、かわいいから、許しちゃうんだよね。
パ・ド・トロワはなくて、そのかわりに王子と娘さんたちとのパ・ド・シスがあります。
曲はパ・ド・トロワの曲だったり、王子の憂愁のソロの曲だったり、グリゴロ版のオディールの曲だったり、ほかの場面の曲だったり、けっこういろいろ使っていて、長い場面です。
娘さんたちはカーチャ・ヴュンシュ(王子とメインで踊る)とヒョ=ジュン・カンしかわかりませんでしたが、さすがプリンシパル、堅実な踊りでした。
ソロがあったり、デュエットがあったり、いろいろなんですが、ヴュンシュとカンのソロはもの悲しい短調の曲で、
別に短調だからといって、悲しい踊りじゃなくちゃならん!とは言いませんが、
ニコニコ笑顔で楽しそうに踊られるのはちょっと違和感あるかもしれません。
ただ、楽しそうに浮かれていても、悲劇の予兆はあるのだ、、、、という意味付けなのかもしれませんし、
パフォーマンスそのものも、振付そのものも、良かったです。
フォーゲルとヴュンシュのパ・ド・ドゥの曲はとても好きな曲ですので、ここでたっぷり観られたのはいいのですが、
この振り付けは、高い位置もしくは後方の席から観たほうが素敵かな、、、って昨日感じました。
王妃さま御一行に見つけられて、王子らしくない振る舞いを嗜められたりしたあと、
お見合い写真?的な肖像画を突き付けられます。
この時各国の使者代表、みたいな人たちも来るのですが、
ええと、あれはバレエ団の人と東京バレエ団のかたと混ざってるのかな?今日もうちょっときちんと見てみますが。。。
王妃のお付で式典長みたいな人がいました。最初はこっちが「家庭教師」かと思ったよ。
でもこの人はたいして出番はないのよね(苦笑)
で、王妃ですよ。
ここ最近若くて美人でファッションモデルみたいなタイプの王妃を見ることが多かったせいもありますが、
いやもう、このお母さん王妃の強いこと強いこと!
なんですか、大河ドラマに抜擢されたちょっとかわいいアイドルに対峙する演劇界の超大物大スターなくらいの、ど迫力で、あの腕の一振りとか、目力とか、半端なかったです。
王子に対して、手に接吻させようとして、それを寸前でさせずに、さっと身を翻して去っていくあのかっちょよさ!
取り残された王子のあのひよこっぷりがまあ、かわいそうというか、、、、
王妃強すぎ。。。。。
王妃の強いしぐさを物まねする家庭教師にプチ八つ当たりの王子。
(って、、、どんな家庭教師ですか。型破りな反面教師?)
そのあとの王子のしょげっぷりというかすねっぷりが、これまたフォーゲルにもろにはまるんだな。
これ、、、マラインでも観たかったなあ。
エヴァンはエヴァンで見るからにものすごくノーブルな気がするし、期待以上の素晴らしさだと思いますが、
こういう打ち捨てられた小鳥っぷりは、マラインとかフォーゲルがはまるよね。
(ま、わたしは、バランキエッチで観られなければ、まあ、、、、誰でも、、、、ブツブツ)
すねた王子を慰めるように、踊りに誘うヴュンシュたちに対して、「今はそんな気分じゃないから」と王子は加わらずに、そのまま「乾杯の踊り」に突入。
ここらへんのアンサンブルとかはクランコはうまいですよね~。
それに、自分とこのオリジナル作品を持ってるバレエ団の強みというか、こういう総踊り的な楽しさって、うらやましい限りです。マールイでメッセレルが改悪した「乾杯の踊り」みたいに、適当にソリストをうろつかせる風な演出と違って、ちゃんと音楽をフルに使って振付けているし、これはこれで好きですね。
こんないい曲なんだから、これぐらいたっぷり踊ってもらわないとつまらないです。
乾杯の踊りとともに、みんなが去って、王子の憂いの場面。
白鳥の群れを追って森へ入っていき、ベンノたちも後を追いかけるところで1幕終了。
第2幕 「湖畔」
ここはだいたいイワノフの原振付にほぼ忠実。
ただ、王子を追ってきたベンノたちも冒頭は王子を探しにやってきます。(そしてもちろん見つけられないという間抜けっぷり。)
ロットバルトは銀の兜を頭にかぶってて、これでもかとマントをばっさばっさと振ります。マントはそれでも、そんなに厚手があるタイプではなく、ふわーっとしてるかな。
アマトリアンはこんなに痩せてたっけ?というくらい細くて、そうすると、ちょっと老けたかな、、と感じてしまうし病的なくらい真っ白で、ビジュアル的に「うーむ」となりかねないのですが、
でもね、ゲネプロでも本番でも、わたしは好きでしたね。。。。。
なぜか心に響いてしまったのです。理由は、前も挙げたように、強すぎるバレリーナに食傷気味というのもあったのかもしれませんが、とにかく、はかなげで抑制が効いていて、そしてとても美しいと感じました。
見た目という点では、二羽の白鳥(大きい白鳥)を踊った森田あみさんのほうがよっぽど美しいんですけども、
でもオデットはアマトリアンなんだよなー、と思いました。
イワノフの振付をアレンジしたものなので、そんなに違和感はなかったですし、王子とオデットの出会いの後、コール・ドたちが現れるところはセットの後ろから次々に現れるさまが素敵で、ゲネプロでもとても好印象だったのですが、本番ではいきなり一人こけてしまって(苦笑)
腕のラインとかはマリインスキーのほうがきれいですけれども、フォーメーションはゲネプロで上から観たときとても美しかったし、いろんな動きに工夫が見られて面白かったです。
大きな白鳥と小さな白鳥は、個々のみなさんは良いのですが、もうちょっとユニゾンがよくなればなあと思います。
コール・ドが現れてから、ベンノたちがまたまたやってくるのですが、(白鳥の群れに囲まれるベンノはちょっとヒラリオン風)白鳥を撃とうとするのを最終的に止めるのは王子です。オデットも白鳥たちの前に立ちはだかるのですが、そのあとに止めに入るのが王子です。
オデットのソロのとき、ゲネプロではフォーゲルがオデットをエスコートして、途中まで見守ってたはずなんですが、昨日はいなかった????単にわたしが見逃しただけ????
今日もう一回確認してみます。
第3幕 玉座の間
回廊を使ったセットも豪華で衣装も素敵なのですが、ちょーと、スペインは好みが分かれるかもしれません。
ええと、、、フェリペ2世がたくさんいる、、、って感じ(苦笑)
東京バレエ団の方々がお客様役で回廊の上にいらして、式典長っぽい人がいて、
階段の上から各国の花嫁使節団が降りてきます。
最初はお付の人からで、お姫様たちはあとね。
王妃様御一行は、下手から(←!!!)出てくるんですが、この日は誰かが王妃様のマントを踏んでたっぽい。
王子は純白衣装で登場。あんまり嬉しくなさそうでいやそうな雰囲気ありあり。
スペイン、ポーランド、ロシア、ナポリと順番にお姫様が階段を下りてきて、ご対面。
最後にロットバルトがファンファーレと一緒に「禿」ヅラ&クジャクの羽根を使った衣装で登場。
王子を翻弄させてる間に、マントの後ろからオディールを出してさらに煽ります。
そのまま民族舞踊に突入。
スペインはお姫様一人に、お付4人が一緒に踊ります。
使者役の人は、階段の途中で立っています。
ええええと、まずビジュアルがフェリペ2世が4人てくだりでちょっと拒否反応なんですが、
まあ振付も個性的でしたね。うむ。
スタイリッシュでかっこいいスペインを想像していくと、「ちがう!」と思っちゃうかも。
でもまあこれはこれで。。。。斬新というかなんというか。
それに比べるとポーランドはごくまっとうで、安心して観ていられます。
問題はルースカヤ。
お付は全部女性、使者は男の人。
ルースカヤはね、ルースカヤはね、、、、これは、、、、いじっちゃいけないと思うのよね。。。(きっぱり!)
あれじゃー、いくらプリンシパルのメイソンがお姫様役でも、「なんじゃありゃー」でしょう!
わたし、この曲大好きだけども、さすがにこれじゃあ観たくないと思いましたね。
頭の中はマクシーモワやラパトキナですから。
ナポリはだから、もうなんだっていいや、、、っていうか、カンはうまいよ!すごいよ!
うん。ナポリターナは良かったですよ。
男性のザジアンは、ゲネプロのときは素晴らしいピルエットで盛り上がったのですが、昨日はちょっといまひとつだったかな。
黒鳥のパ・ド・ドゥはだいたいオーソドックスなものですが、最後のポーズが個性的かな。
それからオディールのソロは王子の曲?ま、これはこれで、躍動感があっていいのかな、と。
グリゴロ版の不気味なヴァリアシオンのほうが私は好きで、マリインスキーのはちとかわいい曲でこそばゆく感じるので、まあその、、、中間かなあー。
これも最後のポーズが「へー!そうきましたか!」と、ちょっと斬新?
好みが分かれるんじゃないかなと思います。
フォーゲルはパートナーへの気配りもきいていましたし、アマトリアンも細かいミスはあったものの、ゲネプロよりとても良かったと思います。
王子がオディールに愛を誓ったとたん、悪魔とオディールが王子を嘲笑って退場!ではなく、
嘲笑するにはするのですが、オディールは「ポン」って消えちゃう演出。
消える場所の仕掛けは、、、上からだとどうしても見えちゃうかな?って位置にあります。
ロットバルトは階段を上ってマントばっさばっさで退場です。
第4幕 湖畔
ここは素晴らしい演出ですね。
ことに王子役のダンサーにとってはとても踊り甲斐、演じ甲斐のある作品だと思いますし、
通常使われない曲を用いての王子とオデットの踊りも美しいです。
この破滅感や悲劇性がたまらない。
王子とオデットが精神的には結ばれているのも、オデットが王子を許しているのはとても伝わってきますが、
王子は湖で溺死してしまいます。
オデットもほかの娘たちも夜明けとともに白鳥の姿に戻って、、、、真実の不変の愛を誓ってくれる青年が現れてくれるまで、悲劇のリングの中に居続けるんだろうな、、、ってすごく救いようがない話なのですが、でも後味は不思議と悪くありませんでした。
悲劇が好きな方には大おすすめですし、あとはまあ、あの3幕を許せる心の広い人にもおすすめ。
あとは曲の使い方に抵抗感がある人もいるかもしれないかなあ。
3幕があれでも、最終幕がとてもいい作品だから「また観たい」と思うのかもしれませんね。
好みがとても分かれるとは思いますが、とにかくあの4幕は多くの方にご覧になってほしい作品だと思いました。
わたしは4幕だけでも観に関西も行きたいくらいですが、まあ今夜観られるから、我慢します。
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