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ちいさなおうち

2020-03-14 | 映画・舞台
久しぶりの映画メモ。

小さなおうち(2015)
昭和11年から戦中にかけて、赤い屋根の小さなおうちで女中さんをしていたたきちゃん。彼女が年老いて亡くなる際、孫のように可愛がっていた親戚の大学生に手書きの自叙伝を遺します。大学生の回想としておばあちゃん(=年老いたたきちゃん)のちゃきちゃき勝気で優しい姿や自叙伝を書きながら苦しげに泣く姿と、自叙伝に書かれた小さいおうちでの若き日のたきちゃんの日々が交互に流れ、そして最後には過去から繋がる今があります。


戦争部分もあるのですが、世界の片隅に的に、メインはおうちでの日々。
山形からやってきた、素朴で真面目なたきちゃんが女中として働く小さいおうちにいるのは、綺麗で優しくて世間知らずなお嬢様育ちの奥様と、仕事で忙しいながらどこか飄々として優しく、でもやはり男社会がしみついてる玩具会社の重役をしている旦那様。そして病気で足が麻痺するも、女中のたきちゃんの頑張りでまた元気になった6歳〜のぼっちゃん。
そんな日々に、旦那様の会社の若者、美大出で世渡りは不器用だけど親切で穏やかな板倉さんが現れます。
奥様と板倉さんがお互い心惹かれていく様子にたきちゃんが気づき‥。そしてその果てに、自叙伝を書きながら罪の意識に涙する姿につながります。

時代背景や当時の人々のそれぞれの状態も、旦那様の会社の社長さん達の会話から伝わってきたり、奥様のお姉さんのマウンティング的な話から見えたり、何よりそういう所からしか情報が入って来ない感じや息苦しさや時代に流されていく感じがわかるし、今の時代の人が一括りに想像するのとはまた違った当時の生活がそれぞれにあった事を感じられます。

みんなの心情の変化も、露骨じゃ無いのに手に取るように分かる描かれ方でした。
奥様は特に最初の素直で天真爛漫な少女のような良き妻から、段々男性社会への不快感や、旦那とのやりとりでの苛立ち、板倉への気持ちから女性の面倒くさい怒り方(気持ちはよくわかる!)をするようになったりしていきます。
ただ、奥様と板倉さんの関係に対するたきちゃんの気持ちだけは、奥様のお友達とのやりとりで匂わされてるけど、個人的にはぼかされている感じだったかな。手紙のくだりでも、最後だから会わせてあげたい気持ちと、やはり罪な事をさせてはいけないという気持ちがあるというような表現で、あくまで人情と倫理観での迷いと取れるんですよね。まあその陰に自分でも上手く実感は出来ない憧憬や独占欲やこのままの生活を守るたい気持ちがあったのかとも思うので、だからこそあそこまで長い事悔いていたのかもですが。でも、邪念が無くてもその後の奥様の事を考えたり、戦後板倉さんが生き延びた事を知っていたとすれば、悔いるよね。うーん、私は色々読み取れてないのかなあ。

それにしても、あのお友達は、シーン自体は短いけどインパクトがあったなあ。セリフもキャラも凄い立ってた。シーンの内容も、たきちゃんに囁く様に昔の話をする感じ、帰ってきた奥様との対比、奥様の焦燥や苛立ちに晒されて泣くたきちゃんへの「かわいそうに」というあの言い方。過去までが彷彿とさせられました。

そして今更ですが、主人公のたきちゃん。黒木華さんは、100点!120点!とにかく可愛い!本当ぴったり!
最初の慣れずにいる様子も、段々自然に笑うようになって、自分からお任せくださいと頑張る様子もいい。奥様の変化に戸惑い、涙し、別れにも純粋に泣きじゃくる‥。(その一方、たきちゃんを見送る奥様の様子は、初めてたきちゃんを迎えた日のキラキラ天真爛漫で優しかった奥様とは全く違い、疲れと諦めと苛立ちとなのかな‥言葉は優しいけど確実に別人のよう。)
たきちゃんが黒木華さんで無かったら全然違う映画だったのではと思います。

奥様役の松たか子さんも、当時のお嬢様奥様の上品で可愛らしい雰囲気も、恋を知り葛藤しながら変わっていく様子もすごく体現されてて凄いです。


一方で‥役者さんは上手なんだけど、板倉さんが個人的にはあまりあってなかった気がしました。もっと若い俳優さんなら、美大出たての繊細で優しいまっすぐな青年感や、ひたむきさがあればもっと奥様が惹かれる気持ちや、2人の純粋な感じがでたろうに。30代半ばにしか見えないから、ひたむきさよりも、優しげな分したたかな感じや、いい大人が制御出来ずに不義をしてる感じがしちゃったのです。「僕が戦死したらたきちゃんと奥さんの為だよ」ってセリフも、たきちゃんまでたぶらかすのかって思えてしまって。

ついでに大学生役の妻夫木さんも大人っぽすぎたかなあ。明るく人懐っこくちゃっかりしてるけど、優しく真面目でまだまだ青いキャラだと思うのですが、上手な俳優さんなのに勿体無い。
特に現代でまだ生きていたぼっちゃんに会いに行くシーンがあるのですが、いやいや、そんな事うっかりバラすなよとか、手紙も封が開いてない時点で察しなよとか思ってしまって。妻夫木さんが演じていると、若さでテンション上がってつい、みたいな感じのキャラに見えないからかな。いや、もはや脚本の問題なのかな。すみません。
 

ただ、偉そうにあってないなんて書いてしまった俳優さんも含めて、本当、役者さんて凄いなと思わされたのですよ。

奥様のおじさまである橋爪さんや、会社の社長さんもいい味出してました。橋爪さんは特に、多分同じセリフでも役者さんが違ったらあの愛嬌と茶目っ気と深さは出ない。素敵。

あと、もしかして妻夫木さんが板倉さん役してたら、意外と秘めた情熱みたいな感じが出たかもとか考えたり。山田孝之さんとかがやると、全く別の人物になるんだろうなあとか。大学生役も30代の甥っ子とかに変えて板倉役の吉岡さんがやっていたら、かなり泣けたのではないかなとか。
そんな妄想までしてしまうくらい、役者さんの大きさを感じました。そう感じるような幅のある脚本でもあるのかな。


とにかく当時の、時代や生活が伝わってくる感じと、黒木華さんが印象的な作品でした。




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