korou's Column

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松浦亜弥ディスコグラフィー 30 「The Difference」

2015-10-15 | 松浦亜弥

2010年11月24日に発売された

企画アルバム「Click you Link me」収録曲。

作詞・作曲:C.Stubblefield, B.Sidran, L.Sidran 訳詞:吉成伸幸

編曲:Leo Sidran ホーンアレンジ:Al Falaschi, Leo Sidran。

 

作詞・作曲のクライド・スタブルフィールド(C.Stubblefield)は

ジェームズ・ブラウンのサポートメンバーとして名を知られているドラム奏者(1943― )。

ジェームズ・ブラウンのヒット曲の大半でドラムを叩いているので

名前は知らなくても、映像でその姿を見ている人は多いはずである。

同じく作詞・作曲のベン・シドラン(B.Sidran)とレオ・シドラン(L.Sidran)は

日本での知名度はそれほどでもないが

米国では結構著名なミュージシャンである。

ベン(1943ー )のほうは

ブルース系ロックバンドのスティーブ・ミラー・バンドのメンバーとの交流があって

実際にメンバーだったこともあるが

その後、特定のバンドと関係することなく

ジャズ、ロック中心に、ジャンルに関係なく広範囲に活動を続けている。

その息子レオ(1976ー )のほうは

父親の影響を受けながらも、ロック、ジャズに止まらず

友人の仕事を手伝う形で映画音楽のプロデュースも行う多才ぶりである。

なお、レオは、近くにたまたまクライド・スタブルフィールドが住んでいたこともあって

ドラムをクライドから教えてもらっている(後に、クライドのソロアルバムのプロデュースを担当した)。

というわけで、この作詞・作曲の3名は

親子、師弟ということでつながっている。

そして、どういう経緯なのか分からないが

ベン・シドラン、レオ・シドランの両名は

アップフロントワークス系の洋楽レーベル”ヘッドディス”に所属しているので

松浦亜弥への楽曲提供(or許可)の可能性は、十分あり得たわけだった。

 

3名連名の作詞・作曲とはいえ

この曲に関しては、やはりベン・シドランが中心になって作られたという印象が強い。

クライド・スタブルフィールドが得意とするファンク系の音ではなく

レオ・シドランが多くプロデュースするクラシックとかラテン系の音楽でもない。

ブルース系で、やや理詰めの音作りの傾向があるベン・シドランこそ

この曲の作曲家としてふさわしい(もちろん調査不可能なので個人的推測に過ぎないのだが・・・)

つまり、この「Click you Link me」というアルバムは

冒頭から「The Difference」、「Feel Your Groove」と

ベン・シドランが中心になって作られた曲が続くという構成になっているのだが

「The Difference」はいくらか他のメンバーと連携しながら作られているのに対し(編曲は息子に任せているし)

「Feel Your Groove」のほうは、自分のヒット曲であり

作詞・作曲で連名となっている息子は名前だけで、ほぼ単独でプロデュースしたものという違いがあるわけだ。

随分と亜弥さんはシドラン親子の曲を取り上げたものだなと思うのだが

2006年発売のアルバム「Naked Songs」の収録曲「Feel Your Groove」を

歌ったときの感触が良かったのだろう。

それでニューアルバム作成にあたってシドラン親子の曲をリクエストしたのだが

それほどピッタリの曲がなくて

しかも、いつのまにかクライド・スタブルフィールドまでひっついて来て

さすがにファンク系の音楽はないだろう、ということになったのだろうか?

結局、なんとか亜弥さんの新境地というレベルに落ち着いた

この「The Difference」が新曲として取り上げられ

クライドのほうの曲はインスト曲として処理されたという可能性もあるだろう。

さらに妄想をたくましくすれば

こうした洋楽系の音楽で新境地を出そうとした企画と

実際に出てきた曲のイメージとが微妙に合わないことで

アルバム全体の構想が途中から崩れていき

カバー曲あり、既発表曲ありのスッキリしない感じの構成になっていったのではないかと

思ったりする。

(だんだんと”100%妄想ブログ”っぽくなってきた・・・ww)

 

曲のイメージもそうだが

もっと問題なのが、訳詩の不自然さだろう。

訳が下手なわけではない。

訳をされた吉成伸幸氏は著名な音楽評論家で

翻訳のほうもプロフェッショナルな仕事を多数されてきた方である。

全然問題ないどころか、これ以上の適任はないくらいだ。

それなのに訳詩が不自然なのは

もはやこれは

英語から日本語への翻訳という行為そのもののなかに

そういう要素が本質的に潜んでいるからではないか。

 

例えば

  ♪ 時には短いのが長くなったり
     弱いのが強くなったり それが現実♪

という歌詞は

英語なら違和感ないように思えるが

日本語に訳した途端に

わざとらしい言葉に成り果ててしまう。

かといって、これ以外の訳語を充てることは難しい。

結局、もともとが日本人の発想そのものと違うので

その発想を表現するための日本語そのものに

該当する言葉が見当たらないのだ。

この曲の歌詞は

そういう違和感に満ちた日本語の羅列となっていて

聴いていて実に落ち着かない。

しかも、それを

こういう曲では弱すぎるかもしれない亜弥さんの綺麗すぎる声で

ラップを交えて歌いまくるというのだから

企画そのものが失敗している曲という印象が強くなる。

 

さて、そんな問題だらけのこの曲について

youtubeでは

アルバムの音源と

アルバム発売記念ライブの音源との2種類を聴くことができる。

亜弥さんはライブの人なので

本来なら、この曲でもライブのほうの動画を楽しみたいところだが

残念ながら、上記ライブの音源は、この曲の正しい姿を再現していない。

というか、再現自体がもともとムリなのである。

 

この曲は、アルバム収録にあたって

オリジナルの音源からボーカル部分を抜き去って

その上に亜弥さんの声を乗せているらしい。

(ホ-ンアレンジが外国人名だし、最近になって、某ブログでそういう記述も発見した)

オリジナルの音源は、ファンク音楽っぽいノリもあって

ソウルフルなコーラスあり、本格的なラップありで

かなり濃いめの音楽になっているのだが

その分、亜弥さんの個性が浮いてしまう結果になっている。

でも、それはそれで、亜弥さんファンであれば

そういう一切の不都合(亜弥さんらしくない音楽!ヘンな歌詞!)に耳をふさぎ

その濃いめの音楽を堪能するという楽しみ方も可能だろう。

ところが、亜弥さんのライブで

そんなファンクな演奏、黒人系のコーラス、ラップなどを

再現することは不可能である。

そこで、ライブでは、あえてスイングジャズ風にこの曲を再現して

亜弥さんも軽めにシャウトする程度で、むしろダンスミュージックのノリで

歌いこなしているように見える。

でも、それでは「全然別の曲になってしまっている」ということになる。

つまり、当ブログの現在の企画である”曲紹介”という趣旨にはそぐわないので

ここでは、アルバムの音源で

以上の記述についての引用ということにさせて頂きます。

 

松浦亜弥 『The Difference』

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