korou's Column

2024.5.1 音楽ブログとして再スタート。

1960年代を思い出してみる(西郷輝彦の時代)

2022-02-22 | テレビ

西郷輝彦さんが亡くなられた。

 

(以下敬称略)
西郷輝彦が人気歌手として活躍していたのは1960年代。

今は2020年代だから、ざっと60年前の話。

 

(余談だが、1960年代の60年前といえば1900年代。

 つまり、以下の文章は、1960年代に日露戦争の頃の世相を回想するようなものか)

 

娯楽の王様は何といってもテレビだった時代。

一家に一台しかないテレビが幅を利かせていた。

朝から晩までぎっしりと番組が組まれ

その割には出演するTVタレントの数が少なかった時代にあって

とりあえず数名の人気歌手を出演させて数曲歌わせるだけで

番組として成り立つ歌番組というのは重宝された。

さらに、テレビ放送初期の頃は

レコード会社が音楽業界を牛耳っていた時代だったので

レコード会社別に歌番組が組まれ

「コロンビア歌の大行進」とか「クラウンヒットパレード」など

レコード会社の名前がついた歌番組が

週末に数多く放送されていた。

 

しかし、1960年代後半から

テレビの歌番組に関していえば

楽曲を制作販売するだけのレコード会社と

歌手を育成しつつテレビ番組での成功もサポートしていく芸能事務所とで

テレビへの影響力に大きな差が付き始めたのである。

特に、渡辺プロダクション(以下「ナベプロ」)については

圧倒的なスター歌手の人数を誇っていたので

ナベプロの協力ナシでは歌番組が成り立たないとまで言われた。

 

しかし、どの歌番組にもナベプロの歌手ばかり出ているのでは

飽きられてしまう。

それに他の芸能事務所にしても、その状況は面白くない。

そこで編み出されたのが「御三家」という宣伝文句だった、

すでにトップスターとなっていた橋幸夫、

ホリプロ所属の舟木一夫、

後にサン・ミュージックを創立する相澤秀禎がマネージメントする西郷輝彦が

こうして売り出されることになり

ナベプロ主体の歌番組に彩りを添えることになる。

日曜昼に放送された「ロッテ歌のアルバム」は

そうした業界事情に長けた玉置宏が

巧みに番組内容をリードして

”歌謡曲”というジャンルを作り上げていく。

御三家とナベプロ、そして美空ひばり・・・

その構図は

月曜夜の「夜のヒットスタジオ」に受け継がれ

年末の「紅白歌合戦」で締めくくられるのだった。

 

こうして無理やりにひとまとめにされた「御三家」だけに

本人たちはともかく、その周囲の関係者たちのいがみ合いは

当時からマスコミのネタになっていた。

橋幸夫のスタッフにしてみれば

デビューが他の二人よりも数年早いことから

一緒にするのなら一番大きい扱いを要求し

写真撮影も、橋が一番大きく映ることを最低条件にしていた。

舟木と西郷も

それぞれの事務所が生んだ最初の大スターだけに

事務所の命運にもかかわるとして

その取扱いには万全を期していたし

他の二人とあまりにも違う扱いとなった場合は

仕事そのものを受けないように配慮していたらしく

そうした面倒なことを避けるため

共演は事実上NGとなっていたようである。

しかも、橋はビクター、舟木はコロンビア、西郷はクラウンと

所属するレコード会社がすべて違っていたため

そのことも互いの関係を疎遠にしていたはずである。

 

もともと橋幸夫については

玉置宏の回想によれば

当時の若者層に大人気だったロカビリー歌手に対抗するために

意図的に年少の歌手を求めていたビクターの方針に合致して

異例のデビューとなり人気を博したということらしい。

コロンビアも若い歌手を求めていたのだが

オーディションに来た橋が

当時の師匠の遠藤実の影響で

やたら古い曲調の歌を披露したせいで

これだとせっかくの若さが生かされないと判断して

不合格にしたのだが

歌手の世代交代を意図していたことに変わりはなかった。

故に、コロンビア専属の遠藤が

今度は舟木一夫という若い人はどうかと勧めてきたとき

すでに橋の成功をみて悔やんでいた関係者としては

一も二もなく食いついてきたという次第だった。

さらに、坂本九、三田明、美樹克彦、布施明など

ロカビリー歌手たちと同じくらいの若い世代の歌手が

続々と成功していく。

この時点で

三橋美智也、春日八郎、三波春夫、村田英雄といった

かつての人気歌手たちは

ヒット曲にも恵まれず

次第に過去の存在と化していった。

 

そんな西郷輝彦は

当時小学生だった自分の憧れでもあった。

舟木の歌は小学生の自分には重たすぎるように思え

橋については、歌そのものは良いのだが

橋幸夫という歌手自身に、西郷ほどの親しみが持てなかった。

(これは、当時の橋があまりにスター過ぎたことが原因だが

 こればかりはリアルタイムでないと分からない話だ)

そんな当時の自分が最も気に入っていた曲がこれ。

 

西郷輝彦★初恋によろしく★

 

そんな西郷輝彦も

GSブームの時代に差し掛かると人気は低迷するが

1970年に「真夏のあらし」で復活。

オリコンの統計が整ってきた時期で

この曲は最高12位を記録、15.9万枚を売り上げた。

(ただし、オリコン12位というのも西郷輝彦を語る上では些細なことで

 恐らくデビュー曲「君だけを」から「チャペルに続く白い道」

 「十七才のこの胸に」「星娘」「星のフラメンコ」

 「初恋によろしく」「恋人をさがそう」「願い星叶い星」あたりは

 オリコン順位がもし可能なら、すべて10位以内だったのではないだろうか

 と思われる。ただし、主なファン層がまだ若かったので、レコードを頻繁に

 買うには経済力が乏しく、枚数的には70年代アイドルに及ばないはずである)

 

73'「星のフラメンコ」72'「愛したいなら今」70'「真夏のあらし」69'「海はふりむかない」西郷輝彦

(5分過ぎから「真夏のあらし」)

 

その後は徐々に俳優活動のほうに仕事を移していき

歌手としてテレビで歌う機会も皆無となったのは

個人的には残念なのだが

こうしてyoutubeでいくつもカラー映像を観ることができるのは

1960年代に活躍した歌手としては稀有なことで

嬉しい限りだ。

 

どうか安らかにお眠りください。

私の子供時代に彩りを与えてくださり

ありがとうございました。

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歌番組を観るリテラシー

2018-01-03 | テレビ

紅白歌合戦という番組について考えてみる。

ほとんどの歌番組の視聴率が10%前後になっている現在(1桁視聴率もしばしば)

いまだに40%の視聴率を堅持しているのは凄いことである。

ネットの評判をチェックすると

「ジャニーズだらけで観る気がしない」とか

「ジャニタレ、AKBばかりでつまらん」とか

「目玉がいかにもあるように見せかけてあざとい(安室出演決定前の状況)」とか

散々なのだが

実はその批判の大半は的を得ていない。

いかにイメージだけで物事を考えている人が多いのかが分かる。

(ついでに書けば

 これと同じ安易さで政治経済などを語る人が多いのも事実で

 政治経済についてそういうイージーさは深刻な問題なのだが

 それについては今回は触れない)

 

 

まず、ジャニーズ事務所については

私も不満な点が多いのは認めるが(SMAPのような国民的タレントを

解散に追い込んでしまう管理能力の無さは致命的だ)

少なくとも「紅白」については

NHKはフェアに扱っていて

そのことについてジャニーズ側も必ずしも横暴ではないように見える。

「ジャニーズだらけ」というのは大いなる誤解で

今回はジャニーズ枠について言えば

選定の段階で昨年より2枠減っている。

TOKIO、嵐、関ジャニ∞、Hey! Say! JUMP、Sexy Zoneの5組で

このうち嵐と関ジャニは

もし選ばれなければ、そのほうがおかしいくらいの昨年の活躍だった。

Hey! Say! JUMPとSexy Zoneは

厳しく言えばどちらか1組でよかったかもしれないが

オリコン1位連発の両グループなので

選ばれること自体に何ら問題もない。

TOKIOは明らかにヒット曲そのものが存在しないので

事務所側のゴリ押しと言えなくもないが

せいぜい文句が言えるとしたら、その程度だろう。

むしろ、デビュー20周年のKinKi Kidsとか

進境著しいA.B.C-Zなどが追加で選ばれても

おかしくなかった。

結局、ネットで多数書き込みする世代の人たちは

ジャニタレが嫌いなだけなのである。

まあ、それはそれで全然かまわないのだが

であるとしたら「ジャニタレの出る音楽番組は観ない」とだけ

書けばいいのである。

「紅白はジャニーズだらけ」というのは明らかな誤認で

イメージだけで書いているか

あるいは「紅白」の過大評価のどちらかだろう。

普通に音楽番組を企画すれば

この程度はジャニーズ事務所に配慮するのは

現在のテレビ界では当然のことではないだろうか。

 

「AKBだらけ」という書き込みについては

もう悪口を書きたいだけのための文言でしかない。

AKBグループは、AKB以外全部落選していて

1組だけなのだから。

多分、そういうことを書く人は

乃木坂と欅坂も含めて言っているのだろうが

そのあたりは、昨年の売れっぷりからして

それこそ選出されなかったらお笑い草になってしまう。

 

大物歌手について

ここ数年の傾向として

「現在も出演交渉中です」というやり方で期待をつなぐ手法は

まあ、諸般の事情からして仕方ないのではないかと思う。

「紅白」&「歌合戦」というフォーマットが

多くの大物歌手の出演を躊躇させているという現状がある以上

このような手法で、そのためらいを緩和させる効果があるのなら

むしろ、よくぞこの手法を思いついたものだと賛辞を送りたい。

昨年のSMAPへの交渉失敗に続き

今回不可能と思われた安室奈美恵への交渉が発表されたときには

さすがに”「期待の引き延ばし」作戦”も濫用はマズいのでは、と思ったものの

安室の引っ張り出しに成功し

さらにサザン桑田の出演もOKにしたことで

この手法は来年以降も継続されるだろう。

MISIA、中島みゆき、BUMP OF CHICKEN、矢沢永吉、RADWIMPSなどの歌を

きっちりテレビで堪能できるのは

ずばり「紅白歌合戦」というフォーマットの功徳である。

他の歌番組では(不可能とまでは言わないが)かなり困難な企画であることは

間違いない。

個人的には

「紅白」のすべてが素晴らしいとも思っていないのだが

これはハッキリと「紅白」の長所として認めなければならない点だと思う。

そこを批判するのは

まさに批判したいという気持ちだけの”空論”でしかない。

 

そして極め付きは視聴率報道の歪みだろう。

どういうバイアスがかかってそう報道されるのかは不明だが

今回の「紅白」の視聴率は概ね昨年よりは上昇したのに

一般には「今まででワースト3位」と報道された。

事実を書けば、地域別視聴率は次の通りである。

第2部(▲は昨年よりアップ、▼は昨年よりダウン)
関東(39.4%)▼
関西(39.6%)▲
名古屋(45.7%)▲
北部九州(39.8%)▲
札幌(41.6%)▲
広島(41.7%)▲
静岡(48.7%)▲

これで「今まででワースト3位」の見出しをつけるのだから

その背景として

ある程度予定の原稿を想定して

それに現実をあてはめようとする報道の姿勢を

感じずにはいられない。

別に「紅白」の弁護をするつもりはさらさらないが

今回のような報道は

明らかに間違っている。

 

さて、そうした今回の「紅白」について

個人的感想を述べれば

観るまでは

「もう全部観るのは止めよう。観たいところだけ観よう」と思っていたのが

観たあとは

「まあ、とりあえず来年も全部観ようかな」と思い直すほど

観ていて安定していたなということになる。

総合司会の内村が

出演歌手やタレントの多くについて

彼ならではのコメントができる立場であったことが大きい。

また昨年の司会の相葉より今年の司会の二宮のほうが

安心して観られたこともある(ただし有村架純の司会は今年で終わりにしてほしい)

 

歌そのものは

竹原ピストルとかsuperflyなど聴かせるものもあったものの

全体として、このメンバーならもっと聴かせる演出があっただろうという思いがある。

でも、これは基本のフォーマットが「歌中心のバラエティ」なのだから

仕方ない。

真剣に歌を聴くなら

このフォーマットはゴテゴテしすぎて不向きだと思う。

 

もしネットで「紅白」を語るなら

そういうフォーマットについて語ってほしいと思うのである。

イメージだけの落書きは不要だ。

(それは政治、経済、社会問題全般に言えることだが)

たかが音楽番組についてのリテラシーかもしれないが

この年末年始にそんなことを考えた。

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