日経 BP知財Awarenessに「先進企業の知財戦略と求められる人材像」というテーマで、日本電気エンジニアリングのインタビューが3回に分けて掲載されている。
(上)2,000名の技術者集団をけん引する知財戦略
(中)「量」から「質」へ大きく転換した特許戦略
(下)技術者が培うべき「新しい視点」とは
その中で日本電気エンジニアリングの知財戦略と人材育成(知財担当、技術者)の考え方が述べられている。
知財戦略の点で目に付いたところをいくつか書き留めておく。
■技術力とパートナーシップに立脚した事業戦略
現在,当社は「オープンテクノロジーマトリックス」という経営戦略に基づき事業を進めている。これは2002年12月に策定したもので,(a)顧客のニーズと当社の技術両方をマトリックス化して分析し,(b)当社が持つ多種多様な技術を複数融合するなどして,(c)最適のサービスや製品を提供する,というビジネス・スキームである。
■「量」から「質」へ特許戦略を転換
6~7年前に「特許会計」の考え方を採用して以来,費用や事業戦略との関係から特許を多角的に検討してきた。当時,当社が出願する特許は,年間1,000件に及んでいた。(ア)出願から登録,その後の管理に必要な費用を各特許・各事業に応じて割り出し,(イ)ロイヤルティ収入,(ウ)自社で製品化した特許の場合は「みなし収入」として,試算した。
こうした作業に基づいて,4~5年前からは,特許の「質」にこだわる戦略へ転換した。特に事業戦略との関連性を重視した「パテント・ポートフォリオ」の構築に努めている。
■多様化する知財業務への対応
近年,知的資産に関連する業務は多様化している。多様な業務に共通していることは,「事業戦略との関連性を常に意識して業務を方向付けていく」という姿勢である。それゆえに,当社は時流に適合した他社の知財を見出して,開発設計を通して具体化・商品化することも主要な事業と捉えている。知財といえども,時々刻々その価値が変化していくので,他社の知財も活用している。そのため,最近は事業上で他社とアライアンスを組む機会が増え,契約に関連した業務の比率が高まっている。
■技術者が培うべき「新しい視点」
重要なことは,「知的資産」や「事業戦略」というより大きな観点から特許を見たり考えたりできる能力であり,これを養成して平準化することである。「どういう特許が知的資産になるか」,「事業戦略中でこの特許の意義は何か,どこが強みか」。こうした新しい視点を,すべての技術者に培ってもらいたい。
以上の知財戦略の考え方は特に変わったものではないが、結果はどうなのか興味があるところだ。みんなが同じような戦略でやったら、差がつかない?結局はやり方の優劣で差がつくのだろう。
また、人材育成の面では、以下のような自己啓発制度を運用しており、職務発明補償に関する社内規程の改定も進めているとのことであるが、技術者のモチベーションを継続的に高めることは容易でないのではないかと想像している。
■研修や自己啓発に知財関連プログラム
当社は,独自に「テクノロジー・プレステージ」という自己啓発制度を整備している。これは,「X学会での論文なら20点,Y資格なら10点」というようにアイテムごとにあらかじめ点数を決めて,修了に際して得点化するのである。この得点は各社員のポテンシャルを測る指標として,昇進時などに活用している。プログラムの中には知的資産に関するものがある。例えば,特許登録では20点,弁理士資格を取得した場合は50点となっている。このほかに,eラーニングなどで学習機会を増やすよう努めており,資格取得も奨励している。
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ちょうどstk技術経営研究所@cocologでニコンの特許訴訟に関するエントリーがあったのでメモ。
『【09/30】特許訴訟 ニコン、160億円受け取り』
ニコンほどの大きさの会社だと160億円の売り上げというのならたいした額ではないですが、特許和解金の場合、そのまんま利益ですから、こんなふうに業績に大きく影響するわけですね。
今、力を発揮している技術は失われた10年の前、80年代に
蓄積された技術なのだという。結構なショックを私は感じました。
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