すもーる・すたっふ
”愚直に”Th!nk Different for Serendipity
 



さっき『NHKスペシャル(10/2放送)』で「世界最速への挑戦~スーパー電気自動車誕生~」を見た。非常に興味深かった。
時速300kmをはるかに越えるスピードで疾走する夢の自動車が誕生しようとしている。8つの車輪に組み込まれたモーターが640馬力のパワーを生みだす。一回充電すれば300km走れるというかつてない電気自動車だ。排気ガスも出さず、消費する電力も原油換算でガソリン自動車の半分で済む。開発しているのは慶応大学教授の吉田博一さんと清水浩さんだ。


興味を引いたのは以下の3点である。

①慶応大学の8輪の電気自動車の驚くべき性能
加速性能でポルシェを軽く上回っていた。その存在は以前から知っていたのだが、その加速性能の高さにはビックリ。知っていても、わかっていなかった。テレビで映像を見て、初めて実感。大いに反省。

#関連 『Eliica(エリーカ)
実際に走る完成車は12月に組み立てて、3-4年後の実用化を目指す。現状では1台の電池だけで約3000万円かかり、今後は材料コスト削減が課題だ。清水教授は「電気自動車は環境問題を解決する。高速走行を目指すこのプロジェクトで、電気自動車の普及を図りたい」と話している。(産経新聞2003.10.24)


#関連 『世界最速の電気自動車「Ellica」の開発プロジェクトを統括した吉田博一さん

エリーカプロジェクトを立ち上げたとき、清水教授をはじめ大学としても、プロジェクトの資金をどうするか困っておられた。先代モデルのKAZの開発にあたっては、科学技術振興事業団などから資金援助を受けることができていたのですが、KAZがほぼ完成したということで、もうどこからも資金援助、補助が出なくなってしまった。エリーカプロジェクトを成功させるためには、できるだけ多くの企業とコンタクトし、協賛をお願いする必要がありました。これまで私は、企業育成のための資金調達なども経験してきましたから、ひとつお役に立てればと思い、プロジェクトに参加したわけです。


自動車メーカーとしては、リチウムイオン電池車はこれまでの自動車づくりとはまったく発想が違うため、メーカーとして参入しづらいのではないでしょうか。むしろ、リチウムイオン電池の開発は、たとえば造船メーカーが手がけるというような、新しい発想が大切になってくると思います。今回のプロジェクトでは、ハウスメーカーや発電機メーカーにも協賛していただいていますが、環境問題の解決のために、リチウムイオン電池の研究活用が重要だという観点からコラボレイトいただいているものです。海のものとも山のものともつかなくとも、チャレンジしていくことこそが新しい活力を生んでいくんですね。


まず、価格です。リチウム電池そのものがまだ量産化できないため、クルマに搭載したリチウム電池だけで3000万円くらいかかっていて、現在クルマ1台が2億円! 次のフェーズでは1000万円台が目標です。ただ、工業製品はいったん普及がはじまると、一気に短時間で普及する傾向がある。レコードがCDにとって変わったのも、ゼンマイ時計がクオーツ時計に変わったのも、おおよそ7年ですから、リチウムイオンを電源とするクルマも7年くらいでそれくらいの価格になるのではと考えています。
 今は試作車の段階ですが理論上で試すことはもうありません。これからのいちばん大きなテーマは「DEATH VALLEY」という深い谷を越えること。新しい原理が生まれて、試作品が生まれ、その試作品から市場での商品化を実現するときに横たわっているのがこの「DEATH VALLEY」です。寒冷地や砂漠などで、テストを繰り返し、衝突実験を行い、安全性、信頼性、生産性を確立していくわけですが、膨大な研究投資が必要になる。しかしながら、この深い谷を渡らなければ、市場に認められる商品にはならない。


②中国の電気自動車(電動タクシー)の市場拡大の早期化の予感
NHKの放送の中では、安価なリチウムイオンバッテリー技術を持つバッテリーメーカが電気自動車(電動タクシー)を開発し、市場に導入する。ガソリン自動車などでは中国に技術競争力はないが、電気自動車なら先進国の自動車メーカと勝負できると見ている。今後、工場を増設して量産化してさらにコストをさげる。

#関連 『2020年には中国が世界最大の自動車生産国』とも言われている。急速なモータリゼーションの真っ只中の中国では自動車市場の急成長に伴って(あまりに急速)、地球温暖化ガスや大気汚染などの環境問題が現時点ですでに社会問題になっている。
中国は2003年に,世界第4位の自動車生産国,世界第3位の自動車市場になった。今後も高成長は続く。少なくとも2008年までは,中国における自動車生産は2桁成長が続き,今後20年は高成長が続くとの見方を示した。同氏によれば 2010年には保有台数が5700万台,生産台数が860万台に達し,さらに2020年には保有台数が1億3000万台,生産台数は1700万台に達するだろうという。もしこの予測が正しければ2020年までに中国は米国を抜き,世界最大の自動車生産国になる。


#関連 『【北京モーターショー】中国BYD AUTO社』の記事より。
電気自動車の「ET」。最大出力25kWのインホールモータと,容量200Ah・定格電圧296VのLiイオン二次電池を搭載したもので,1回の充電で350km走行できるとしている。

NHKの映像では、この記事中のハイブリッド車「Hybrid-S」が電気自動車のように扱われていた。市場導入しようとしている電動タクシーの外観は普通の車体なので、たしかにベンツAクラスのボディを利用した「ET」よりは「Hybrid-S」に近いが・・・もしかして、これは故意の演出?

③日本の高性能技術と中国の低コスト技術の構図
慶応大学は高性能な電気自動車技術を持ちながら、高価なバッテリーや開発資金の不足など実用化に向けて先が見えない状況にある。一方、中国は、安価なバッテリー技術をベースに急速に実用化に進んでいる。これは日本と中国の典型的な対比パターンと思っていいだろう。
今回、中国メーカ側から慶応大学側に共同開発の提案があった。実用化に向けて願ってもない申し出だが、清水先生は結論を避けている。日本の技術が中国に流出するのを懸念してである。これも典型的な課題。

そうはいっても、日本では実用化に向けて必要な自動車メーカの協力が得られない(番組の最後の方でスリーダイヤの会社とのやりとりが出てきたが)。清水先生、曰く「我々は前に進むしかない。」

以上、番組の演出意図にまんまとハマッタ気がする(苦笑)。

#技術者にも、演出するスキルが必要になっていく気がする。どうやって自分の技術(または研究構想)を売り込むか、期待や感動を与えるか。プロジェクトXを見る度にそう思っている・・・



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