すもーる・すたっふ
”愚直に”Th!nk Different for Serendipity
 



「成長への賭け」(上巻、下巻)を読了した。成長というギャンブル性の高いアプローチを戒めた本、これまで読んだイノベーション本とは対照的に、新規事業への取り組みを批判的に分析し、「本業にフィットする新規事業を発掘する」必要性を主張している。

イノベーション創出プロセス(下図:★「イノベーション創出プロセス」の鳥瞰図-OutLogicの視点より)で言うと、ビジネス・イノベーションに対応するフェーズⅢに関する議論である。


本書の基本的な主張は、企業は「低成長経営に徹するリアリズム」が必要とのこと。リアリズムに適う新規事業をしっかり評価することがポイントとして上げられており、リアリズムに適う新規事業をどうやって創出するかについては積極的な提案はない。問題は成功する新規事業を見逃さないことであり、それがなければ本業に専念すべきというのが本書の戒めである。

本書には参考になる示唆は多いが、やや抽象的なものが多いので、印象や納得感は弱かった。特に下巻は読み返しながら理解を深めておきたい。また読後に閉塞感を感じるところがあるので、個人的には共感するものではなかった。

主なキーワードのメモ。

新規事業を成功へと導く6つのルール
1.本業への投資を継続せよ
2.魅力的な市場に惑わされず、「レア・ゲーム」を見逃すな
3.優位性を探し、「ナンバーズ・ゲーム」に走るべからず
4.自社のスキルに対して謙虚であれ
5.人材探しに可能な限りのエネルギーを注ぐ
6.現実的な野心を持つ

新規事業トラフィック・ライト ~戦略の健全性の評価
■価値優位性
・自社独自の貢献度(実務レベル、親会社レベル)
・取引できる貢献度(%)を控除
・競合他社の独自の貢献度を控除
・新規事業を学習するコスト(実務レベル、親会社レベル)を控除
■プロフィット・プール・ポテンシャル
・高収益を生み出すビジネスモデルの可能性(コストに見合う価値。損益分岐点売上げに必要な史上シェア<%>)
・高収益を生み出す産業構造の可能性(成長力の可能性を考慮に入れた上での「5つの競争要因」)
・自社がその市場でリーダになれる確率
・プロフィット・プールの規模を比較した試行コスト(商用化までにかかる時間を考慮)
・ビジネスモデルの脆弱性(援助者<イネーブラー>の数、主要な変数への感応度)
■リーダーシップ/スポンサーシップの質
・マネジング・ディレクター(MD)/事業部内のリーダー・チームの相対的な質
・MD、リーダーの事業に関する問題意識
・主要な親会社内でのスポンサーの地位
■既存事業への影響
・プラスまたはマイナスのシナジーの規模
・本業からの逸脱リスク

ペアレンティング理論(多角化)
アシュリッジ・ポートフォリオ・ディスプレイ 新規事業のための4つの戦略
・中心領域
・中心領域の端
・サプリング(苗木)
・レア・ゲーム

トップダウン型戦略策定プロセス(本社レベル)
1)業界の周辺領域の分析 破壊的イノベーションの探索
2)各事業を「開発」「改良」「維持」「深耕」に割り振る
3)親会社レベルのスキルと経営資源を特定する
4)親会社レベルが得意なペアレンティング機会を見極める

ボトムアップ型プロセス
・「ごつごつとした、対決を辞さない/参加型のカルチャー」を促進する
・事業部が後押しをする取り組みに一定の寛容性を持つ
・あいまいさを受け入れる
・独立させない
・途中でやめる勇気を養う
・十分な数の統括マネジャーを確保する

業界環境マトリックス 業界変化の特徴×既存事業の成長速度
・成熟と安定
・拡大
・破壊による挑戦
・増殖と細分化

正しい新規事業プロセスを確立するための原則
1)新規事業のアイデアの流れを管理すること
2)トラフィック・ライトを十分に活用すること
3)新規事業のペアレンティングを効果的に行うこと

コーポレート・ベンチャリングの5つのモデル
・ハーベスト・ベンチャリング
・エコシステム・ベンチャリング
・イノベーション・ベンチャリング
・プライベート・エクイティ・ベンチャリング
・ニューレッグ・ベンチャリング

組織デザインの選択マトリックス 戦略的重要性×業務上の関連性
①直接的な統合
②新製品/事業部門
③特別な事業ユニット
④独立した事業ユニット
⑤新規ベンチャー部(division)
⑥新規ベンチャー部門(department)
⑦養育および契約締結
⑧契約締結
⑨完全なスピンオフ


新規事業 組織デザインの9つの診断テスト
適合性テスト
①市場での競合優位性
②ペアレンティング優位性
③人材
④実現可能性
優れた組織デザインテスト
⑤スペシャリスト文化
⑥困難なリンク
⑦説明責任
⑧不要な階層
⑨柔軟性

ペアレンティング機会分析

進捗状況のモニタリング
マイルストーンを決定するための自信度チェック
1)トラフィックライトに関す自信度チェック
・価値優位性
・プロフィット・プール・ポテンシャル
・リーダーシップ/スポンサーシップの質
・既存事業への影響
2)実行への自信度チェック
・営業力への自信
・技術と実務執行への自信
・パートナー、サプライヤー、援助者(イネーブラー)への自信
・既存事業からの支援への自信
・資金調達とガバナンスへの自信


イノベーションにはいろいろな定義がある。イノベーションをどう捉えるかによって、いろんな考え方ができそうだ。本書は新規事業を実現するイノベーションを対象にしている。
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OutLogic - 視点 リサーチ- 成長への賭け-本業にフィットする新規事業を発掘する


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