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新月のサソリ

空想・幻想・詩・たまにリアル。
孤独に沈みたい。光に癒やされたい。
ふと浮かぶ思い。そんな色々。
(主・ひつじ)

雨上がり

2024-07-09 14:35:07 | Short Short
きれいな街だな。
立ち止まって夜の通りに目を走らせる。
オレンジに並ぶ街灯の列と店舗の電飾、その先を抜けると明るいビルの照明が道の向こうに煌めいている。
街の光がすっと吹く風のように雨上がりの湿気をさらいながら通りを行くようだ。
頭の中の雑音がしんと鳴りやんだ。
角を曲がる車のライトが路傍に寄せた自転車を照らす。その金属光がいかにも繊細に車輪の骨の輪郭を描く。切りたてのグレープフルーツみたいにみずみずしい光が夜の街に浮かんで、そして消えた。
濡れた車道が街灯を鈍く映している。
ぼくはまたゆっくりと歩き出した。



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祈り

2024-07-09 00:54:06 | 

この時計の針を もう少し長くしたなら  
時間はゆっくり流れるのでしょうか
 
あのとんがった山の向こうに行けたなら 
夜明けは早く来るのでしょうか
 
あのオリーブの木で小舟を作ったなら 
あなたを迎えに行けるでしょうか

あの石垣をもう少し高く積んだなら 
今日の終わりを見届けられるでしょうか
 
この風に花の秘密を囁いたなら 
愛しい薫りを運んでくれるでしょうか
 
この空にあなたの名前を書いたなら 
夜空はあなたを癒すでしょうか


もしとても大きなほら穴を見つけたなら、その暗闇に小さな灯を灯し 
もしとても激しい雨が降ったとしても、その灯は消えることなく 
どんなに深い闇が世界に沈黙を与えたとしても、
ずっとあなたのすぐ傍で 
いつでもあなたのすぐ傍に どうか




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