白檀の残り香が鼻腔を微かにくすぐる。
私は眼を閉じいつものように夢を見にいく。
私は眼を閉じいつものように夢を見にいく。
異空のカーテンをそっとめくると、ぽかんとひらけた白く澄んだ空間が現れる。その世界には、様々な光で幾重にも重なり合う過去と、今という瞬間の一点と、そして無数に広がる未来とが同時に混在している。
私はそこで叔母を待つ。
自分の過去の層の光をひとつ引き寄せ、アルバムのように見たいページを繰っていく。まだとても小さな自分が叔母にまとわりつく姿がいくつもあった。
私はそこで叔母を待つ。
自分の過去の層の光をひとつ引き寄せ、アルバムのように見たいページを繰っていく。まだとても小さな自分が叔母にまとわりつく姿がいくつもあった。
どうしても消えない不安や、どうしても拭えない不満は、いつでも叔母がふんわりと柔らかくくるみ取ってくれた。
私のやり切れなさを、いつでも叔母が洗い流してくれた。
そんなことを懐かしく思い返しながら光を手繰っていたら、いつの間にかにこにこと元気そうな丸い笑顔の叔母がそこに立っていた。
もうすっかりこの世の縛りからは解放され、穏やかにやさしい永遠の春に、昔見た丸い笑顔で私を包む。
叔母に触れることはもうできないけれど、時空を超えた彼女の息遣いがそこにはある。私が忘れなければ、いつでも叔母はそこにいて、丸くやさしい笑顔で私を見ていてくれる。
そう思うのはまやかしだろうか。
それでもかまわない。
私はまた白檀の残り香を連れて叔母に会いにゆく。
カーテンが淡く揺れている。