こんな書評が書いてあった。
「この本は現代のグリム童話だ。
ただし、幼いジャネットの場合、
残酷な継母と愛すべき親は同一人物。
哀れな子どもたちは自らの力で逃げ出すことで、魔女を赦し、愛すことができたのだ。(ニューヨークタイムズ)」
ジャネットの両親はとびきり破天荒だ。
母親は画家を自称し、家事の一切を放棄している。
父親はいつか金を掘り当てて、「ガラスの城」を建てるのだと夢を追う。定職に就かず、アルコールが手放せない。
借金がかさんでくると車にありったけの家財を積んで夜逃げする。流転の日々。
両親はこの生活をある意味「気に入って」いるので改める気持ちはない。
食べものがなくても、お風呂に入れなくてもお構いなし。
4人の子どもたちはゴミ箱を漁って飢えを満たしたり、友人の家に上がりこんで食事にありつく術を身に着けるようになる。
周りからみたらなんて悲惨なのだろうと思うけれど、
当人たちにとっては「いつものこと」なのだから幼い子どもたちは親の夢物語に付き合ってそれなりに暮らしは成り立ってしまう。
でも10歳を過ぎる頃にはさすがに「もううんざり」と思うようになってゆく。
そして子どもたちは知恵をしぼり、たくましく親を追い越して自分たちの幸せをつかんでいく。
書評にもあるとおり、「哀れな子どもたちが自らの力で逃げ出す物語」と読む人も多いのだろうと思う。
でも、わたしはこの両親の子育てにとても感動した部分があった。
赤貧の中でクリスマスプレゼントが買えなかった父親は子どもたちに「星をあげるよ」と言う。
夜空のたくさんの星の中からジャネットは金星をプレゼントしてもらう。
父親は言う。
「何年かすれば、玩具は壊れたり見向きもされなくなったりするけれど、おまえたちには星がある。」と。
両親にはそれぞれ親との確執があり、こうなる理由があった。
どちらも笑えるほど子どもっぽい大人たちだ。
けれどふたりは自分たちなりに精いっぱい生きようともがき、子どもたちに愛情を注いだのだろうと思う。
他人には分からなくても子どもたちにはしっかりとそんな思いが伝わっていたのだ。
だから子どもたちは自分の力を信じて親を追い越すことができたのだ。
親が子どもにしてやれることはなんだろうか。
あらゆる災厄から子どもを守ることでもなく、財産や物を遺すことでもない。
ひとりで生き抜く力を与えることだと思う。
ジャネットの両親は社会的には「落ちこぼれ」なのかもしれない。
でも親としての役割は充分過ぎるほど果たしている。
これはジャネットの実話。
悲惨な物語を清々しい気持ちで読み終えることができるのは
ジャネットがそんな両親を愛しているからなのだろう。
「ガラスの城の子どもたち」
ジャネット・ウォールズ著 古草秀子訳
河出書房新社
「この本は現代のグリム童話だ。
ただし、幼いジャネットの場合、
残酷な継母と愛すべき親は同一人物。
哀れな子どもたちは自らの力で逃げ出すことで、魔女を赦し、愛すことができたのだ。(ニューヨークタイムズ)」
ジャネットの両親はとびきり破天荒だ。
母親は画家を自称し、家事の一切を放棄している。
父親はいつか金を掘り当てて、「ガラスの城」を建てるのだと夢を追う。定職に就かず、アルコールが手放せない。
借金がかさんでくると車にありったけの家財を積んで夜逃げする。流転の日々。
両親はこの生活をある意味「気に入って」いるので改める気持ちはない。
食べものがなくても、お風呂に入れなくてもお構いなし。
4人の子どもたちはゴミ箱を漁って飢えを満たしたり、友人の家に上がりこんで食事にありつく術を身に着けるようになる。
周りからみたらなんて悲惨なのだろうと思うけれど、
当人たちにとっては「いつものこと」なのだから幼い子どもたちは親の夢物語に付き合ってそれなりに暮らしは成り立ってしまう。
でも10歳を過ぎる頃にはさすがに「もううんざり」と思うようになってゆく。
そして子どもたちは知恵をしぼり、たくましく親を追い越して自分たちの幸せをつかんでいく。
書評にもあるとおり、「哀れな子どもたちが自らの力で逃げ出す物語」と読む人も多いのだろうと思う。
でも、わたしはこの両親の子育てにとても感動した部分があった。
赤貧の中でクリスマスプレゼントが買えなかった父親は子どもたちに「星をあげるよ」と言う。
夜空のたくさんの星の中からジャネットは金星をプレゼントしてもらう。
父親は言う。
「何年かすれば、玩具は壊れたり見向きもされなくなったりするけれど、おまえたちには星がある。」と。
両親にはそれぞれ親との確執があり、こうなる理由があった。
どちらも笑えるほど子どもっぽい大人たちだ。
けれどふたりは自分たちなりに精いっぱい生きようともがき、子どもたちに愛情を注いだのだろうと思う。
他人には分からなくても子どもたちにはしっかりとそんな思いが伝わっていたのだ。
だから子どもたちは自分の力を信じて親を追い越すことができたのだ。
親が子どもにしてやれることはなんだろうか。
あらゆる災厄から子どもを守ることでもなく、財産や物を遺すことでもない。
ひとりで生き抜く力を与えることだと思う。
ジャネットの両親は社会的には「落ちこぼれ」なのかもしれない。
でも親としての役割は充分過ぎるほど果たしている。
これはジャネットの実話。
悲惨な物語を清々しい気持ちで読み終えることができるのは
ジャネットがそんな両親を愛しているからなのだろう。
「ガラスの城の子どもたち」
ジャネット・ウォールズ著 古草秀子訳
河出書房新社