第7部・すきま(3)苦悩/遺児線引き窮状拍車/生活資金進学に充て
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1087/20120131_01.htm
<残念ながらご要望に応じることができませんでした>
テーブルの上に置かれた1枚の紙。金融機関から届いた通知書には、融資を断る文言が連ねられていた。
「短大に進学する長女の入学金にしたかったんですが…」。石巻市の阿部香さん(36)が深いため息をつく。
自宅は津波で全壊。市内の民間借り上げ仮設住宅に高校3年の長女(18)、中学1年の次女(13)と3人で暮らす。
11年前、漁師だった夫を海難事故で亡くした。阿部さんも5年前に脳梗塞で倒れ、高血圧で今も定職に就けない。不定期にアルバイトをするが、頼りになる収入は遺族年金しかない。
<融資断られ>
「震災遺児を対象にさまざまな支援制度ができたけど、私たちのような遺児家庭は対象外のことが多い」と阿部さん。
長女は小学生の時に腰椎の病を発症、治療を続けている。次女も幼少期から先天性の膝の病に苦しみ、定期的に通院している。遺族年金は日々の暮らしと3人の医療費で消えてしまう。震災後、生活は一層厳しくなった。
長女の入学金の問題が持ち上がったのは昨年11月のことだった。保育士養成の私立短大に推薦入学が決まったが、入学金は100万円。納金しないと合格は取り消しになると説明された。
受け取っていた被災者生活再建支援金と義援金は、合わせて200万円ほど。貴重な生活資金であり、なるべく手を付けたくなかった。阿部さんは入学金の免除・貸与を求めて各種支援制度を探したが、どれも条件が合わない。定職がないためか、金融機関にも融資を断られた。
長女は窮状を見かねて「進学しなくてもいいのよ」と言ってくれた。しかし、阿部さん自身、学費がなくて高校に進学できなかった悔しい経験がある。「絶対あきらめさせたくない」と、最後は生活再建支援金などで入学金を支払った。
<出口見えず>
東日本大震災で親を失った震災遺児は1500人を超えた。「あしなが育英会」は震災遺児を対象に「特別一時金」として一律200万円を支給。宮城県は小中高校の入学・卒業時などの一時金支給に加え、月々の経済支援も行っている。
しかし、阿部さんの夫は震災で亡くなったわけではなく、「震災遺児」を対象とする支援を受けられない。海難遺児への就学支援などは受けているが、震災で生活基盤そのものを失った今は心もとないと感じてしまう。
自宅は補修でも約1500万円掛かる。全壊家屋の再建に支給される生活再建支援金の加算額は最大200万円で、とても賄えない。借り上げ仮設も、原則2年を過ぎれば月々約7万円の家賃が発生し、事実上住み続けるのは困難になる。
長女の短大は大崎市にあるため、4月以降は新たに寮費も掛かる。
「暮らしていけるだろうか。不安でなりません」。阿部さんは出口の見えない暗闇でもがく。
<メモ>宮城県は震災遺児を対象とする経済支援として、就学前から大学卒業まで毎月1万~3万円支給しているほか、小学校入学時10万円、小学校卒業時15万円、中学校卒業時20万円、高校卒業時60万円の一時金を支給。民間の「みちのく未来基金」は、3月以降に高校を卒業する震災遺児を対象に大学、専門学校の入学金・授業料などを年間300万円を上限に支給している。いずれも震災前からの遺児家庭は、対象にならない。
2012年01月31日火曜日 河北新報
今回の震災で、日本の経済支援の問題点が浮き彫りになりました。
“「震災だから」支援をする”のはうなずけますが、“「震災じゃないから」支援をしない”というのは、どこか違和感を覚えてしまいます。
復興と震災以前の生活を切り離して考えることはできません。人によって抱える事情は様々です。“震災の復興”を考える時、どうしても“震災によって受けたダメージ”にばかり焦点を当てがちですが、それでは十分でないようです。もう少し守備範囲を広げてみる必要がありそうです。困っている人を限られた範囲で想定することに、問題があるのは明らかです。震災遺児に限定されない、柔軟な対応が求められています。
こちらの記事は、私たちが今後の復興支援、そして日本の公的扶助制度のこれからを考えていく上で、一つのヒントになるのではないでしょうか。これがより多くの方々が、この問題について考え、行動するきっかけになれば、と思います。今回の震災を辛いだけで終わらせたくはないものです。
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仙台POSSEでは、この度の東日本大震災における被災者支援・復興支援ボランティアを募集しています。ボランティアに参加したいという方は、下記までお問い合わせください。
NPO法人POSSE仙台支部
所在地:宮城県仙台市青葉区一番町4-1-3 仙台市市民活動サポートセンター気付
TEL:022-266-7630
Email:sendai@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
BLOG:http://blog.goo.ne.jp/sendai-posse
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http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1087/20120131_01.htm
<残念ながらご要望に応じることができませんでした>
テーブルの上に置かれた1枚の紙。金融機関から届いた通知書には、融資を断る文言が連ねられていた。
「短大に進学する長女の入学金にしたかったんですが…」。石巻市の阿部香さん(36)が深いため息をつく。
自宅は津波で全壊。市内の民間借り上げ仮設住宅に高校3年の長女(18)、中学1年の次女(13)と3人で暮らす。
11年前、漁師だった夫を海難事故で亡くした。阿部さんも5年前に脳梗塞で倒れ、高血圧で今も定職に就けない。不定期にアルバイトをするが、頼りになる収入は遺族年金しかない。
<融資断られ>
「震災遺児を対象にさまざまな支援制度ができたけど、私たちのような遺児家庭は対象外のことが多い」と阿部さん。
長女は小学生の時に腰椎の病を発症、治療を続けている。次女も幼少期から先天性の膝の病に苦しみ、定期的に通院している。遺族年金は日々の暮らしと3人の医療費で消えてしまう。震災後、生活は一層厳しくなった。
長女の入学金の問題が持ち上がったのは昨年11月のことだった。保育士養成の私立短大に推薦入学が決まったが、入学金は100万円。納金しないと合格は取り消しになると説明された。
受け取っていた被災者生活再建支援金と義援金は、合わせて200万円ほど。貴重な生活資金であり、なるべく手を付けたくなかった。阿部さんは入学金の免除・貸与を求めて各種支援制度を探したが、どれも条件が合わない。定職がないためか、金融機関にも融資を断られた。
長女は窮状を見かねて「進学しなくてもいいのよ」と言ってくれた。しかし、阿部さん自身、学費がなくて高校に進学できなかった悔しい経験がある。「絶対あきらめさせたくない」と、最後は生活再建支援金などで入学金を支払った。
<出口見えず>
東日本大震災で親を失った震災遺児は1500人を超えた。「あしなが育英会」は震災遺児を対象に「特別一時金」として一律200万円を支給。宮城県は小中高校の入学・卒業時などの一時金支給に加え、月々の経済支援も行っている。
しかし、阿部さんの夫は震災で亡くなったわけではなく、「震災遺児」を対象とする支援を受けられない。海難遺児への就学支援などは受けているが、震災で生活基盤そのものを失った今は心もとないと感じてしまう。
自宅は補修でも約1500万円掛かる。全壊家屋の再建に支給される生活再建支援金の加算額は最大200万円で、とても賄えない。借り上げ仮設も、原則2年を過ぎれば月々約7万円の家賃が発生し、事実上住み続けるのは困難になる。
長女の短大は大崎市にあるため、4月以降は新たに寮費も掛かる。
「暮らしていけるだろうか。不安でなりません」。阿部さんは出口の見えない暗闇でもがく。
<メモ>宮城県は震災遺児を対象とする経済支援として、就学前から大学卒業まで毎月1万~3万円支給しているほか、小学校入学時10万円、小学校卒業時15万円、中学校卒業時20万円、高校卒業時60万円の一時金を支給。民間の「みちのく未来基金」は、3月以降に高校を卒業する震災遺児を対象に大学、専門学校の入学金・授業料などを年間300万円を上限に支給している。いずれも震災前からの遺児家庭は、対象にならない。
2012年01月31日火曜日 河北新報
今回の震災で、日本の経済支援の問題点が浮き彫りになりました。
“「震災だから」支援をする”のはうなずけますが、“「震災じゃないから」支援をしない”というのは、どこか違和感を覚えてしまいます。
復興と震災以前の生活を切り離して考えることはできません。人によって抱える事情は様々です。“震災の復興”を考える時、どうしても“震災によって受けたダメージ”にばかり焦点を当てがちですが、それでは十分でないようです。もう少し守備範囲を広げてみる必要がありそうです。困っている人を限られた範囲で想定することに、問題があるのは明らかです。震災遺児に限定されない、柔軟な対応が求められています。
こちらの記事は、私たちが今後の復興支援、そして日本の公的扶助制度のこれからを考えていく上で、一つのヒントになるのではないでしょうか。これがより多くの方々が、この問題について考え、行動するきっかけになれば、と思います。今回の震災を辛いだけで終わらせたくはないものです。
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仙台POSSEでは、この度の東日本大震災における被災者支援・復興支援ボランティアを募集しています。ボランティアに参加したいという方は、下記までお問い合わせください。
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