仙台POSSE(NPO法人POSSE仙台支部)活動報告

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「3万戸は自力再建」~住まい保障の必要性~

2012-09-02 10:50:15 | 記事
東日本大震災:宮城「3万戸は自力再建」 県試算

 東日本大震災の津波で全壊した宮城県内の住宅6万836戸のうち、国が所有者から土地を買い上げる移転事業の対象や、災害公営住宅(復興住宅)の入居想定に現段階で入っていない世帯が約3万戸に上ることが、県の試算でわかった。自力再建は困難と訴える被災者は多いが、財政基盤の弱い自治体は独自の支援策を打ち出すのは困難で、国の支援強化を求める声が上がっている。【宇多川はるか】

 県によると、全壊世帯6万836戸のうち▽「防災集団移転促進事業」(防集)の対象は1万4500戸▽「がけ地近接等危険住宅移転事業」2150戸▽復興住宅1万4770戸--と、それぞれ市町の計画などをもとに推計。残る2万9416戸が自力再建を迫られると試算した。特に被害が甚大だった石巻市が、半数以上の約1万5000戸を占める。

 自力再建の対象世帯でも、被災者生活再建支援法で1世帯当たり最大300万円の支援金が受けられる。しかし、防集対象世帯が自宅再建の際に受けられる土地の買い取りや、住宅ローンの利子補給(上限708万円)などの支援策はない。

 一方、復興住宅の建設について県は当初(昨年12月)、仮設住宅入居者数や被災した市町からの要望を積み上げるなどした結果、約1万2000戸としていたが、経済的な理由などから自力再建をあきらめる被災者が増えていることを受けて今年4月、約3000戸を上乗せした。県幹部は「個別の支援がなければ、せっかく自力再建しようとした人が断念し、復興住宅を希望する世帯が更に増える」と懸念している。

 被災自治体のうち比較的財政が豊かな仙台市は、4000世帯と試算される自力再建世帯に対し、防集対象世帯と同水準の利子補給をする独自支援策を行っている。しかし、石巻市や気仙沼市、南三陸町、女川町などは独自策を打ち出せず、国による財政支援を要望している。

 ただ国は、個人資産の形成につながるとして、自治体による独自支援策への財政措置に難色を示しているのが実情だ。国による新制度創設は困難とみられるが、村井嘉浩(よしひろ)知事は復興交付金の市町村配分増加や使途自由度拡大など、国に特別な措置を求めている。

 毎日新聞(2012年07月26日)



 被災地での生活再建が困難であることが改めて強調されている記事です。

 この統計から半壊住宅や一部損壊住宅の戸数が外れていることも見逃してはならないでしょう。仙台市では、10万の住宅が半壊し、19万の住宅が一部損壊しました。半壊住宅でも住宅の修繕に多額の費用が必要となったり、建て替えが必要となることが珍しくありません。自己再建などの「住まい」の確保のために多額の出費を余儀なくされる人や世帯は、全壊住宅だけを算定した3万戸を超えていると想定できます。状況はさらに深刻だと考えられます。

 仙台POSSEが自宅の瓦礫撤去、片づけを支援した仙台市の住民は「津波で自宅の1階部分が完全に浸水しました。大規模半壊でした。補修だけで1000万円以上のお金がかかると言われました」と語ります。大規模半壊には被災者生活再建支援法で最大250万円が支給されますが、この方の場合ではかなりの部分を自費で負担しなければなりません。ある程度の貯蓄がなければ、借金で費用を賄わざるを得ないでしょう。再建にしても修復にしても数百~数千万円という膨大なお金が必要な一方で、国や自治体からの支援は非常に不足しているといえます。

 また、実際にローンを組んで「住まい」を確保できる人は働いていて、さらに安定的な収入がある若者や中高年層に限られます。病気などで働けていない人や、貯蓄がなく年金などで生計を立てている高齢者はいくら「努力」をと言われても現時点での支援では自力で「住まい」を確保することは不可能です。こうした人や世帯が土地の買い上げや復興住宅の入居から漏れることが十分に想定できます。復興住宅は15000戸しか建設が予定されておらずその数が絶対的に不足しています。

 この支援の薄さはいま被災者が抱える不安の1つになっています。私たちが支援に取り組む仮設住宅のある高齢者は「お金はありません。生活費だけで精いっぱいです。仮設住宅を追い出されたら復興住宅に移るしかないですね。ただ、復興住宅に入れなかったときのことを考えると不安です。でも考えてもどうにもならないので考えないことにしています」と語ります。支援の薄さが将来の生活を想定することすら困難なものとしています。

 また諸外国の災害被災者救援法との比較では日本の支援の貧弱さが浮き彫りとなります。ドイツでは2002年の記録的大洪水が起こり、34万人が被災しました。この記録的被害に対し、ドイツ政府は「洪水被害者連帯法」で家財被害に最大1万ユーロ(約120万円/2002年為替換算)、住宅再建にかかる費用の8割を国が負担しました。またフランスでは同年の洪水で住居に損害が出た世帯に、自然災害補償制度でその修復の全額を国が負担しました。

 フランスでは国が被災者の「住まい」保障しました。ドイツでは完全な保障があったとはいえませんが、その費用のほとんどを負担しました。日本政府は追加支援が「個人資産の形成」に繋がってしまうという理由でそれを拒んでいます。しかしながら「住まい」は個人資産である以上に、人々が社会生活をおくる基盤として機能します。ヨーロッパではこの観点からきちんとした支援がされました。当然ながら日本でも誰もが「住まい」を確保できるべきであります。その観点からきちんとした支援がさらに必要です。

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仙台POSSEでは、この度の東日本大震災における被災者支援・復興支援ボランティアを募集しています。ボランティアに参加したいという方は、下記までお問い合わせください。

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所在地:宮城県仙台市青葉区本町1-14-20 キクタビル6階
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