「絵のおはなし」では、画家がどのように制作しているかをお伝えしています。
「取材」の話しから始めようと思い、今回で6回目を迎えています。
「感動」や「構想」を整理し、作品として形にするため、画家は「取材」を行います。
「取材」で最も多く行われるのは、「クロッキー」。
他にも、質感や明暗がどのようになっているのか研究するために「デッサン」を行い、
構図や作品の完成イメージを見定めるために「エスキース」を行います。
このように取材は行っていきますが、どのような画材道具を使うのでしょう?
前回は、画材道具の中でも、特に「鉛筆」に注目し、「鉛筆の使い方」について、
おはなしをしました。
鉛筆の削り方や、持ち方、描き方には、違いがあり、
それぞれ描きあげる工程によって手法をかえたり、質感表現を出すために、
鉛筆を寝かして表現をするというような話をしました。
これまでの話を簡単に要約すると、以上のようになります。
画家の「取材」について、一回一回、おおまかではありましたが、
突っ込んで話ができたかなと思っています。
気になった方は、ブログの「記事一覧」にて、「絵のおはなし」を探してみて下さい。
さて、今回で、「取材」については、最終回。
おおよそ、「取材」について、はなしてしまったのですが、最後にこれだけは、はなしてみようと思いました。
それはどんなことかというと、
取材の中で制作した「素描」に表れているかもしれない。
『みえないもの』について。。。
宮廻正明 後曳橋(素描)
素描から、本制作へという工程の変化には、実は大きな飛躍があります。
取材は、あくまでも「設計図」。
本制作では、具体的に、絵画という物を作っていきます。
「支持体(しじたい)」と呼ばれる描く対象(紙を水張りしたパネルや木枠・キャンバスなどのこと)を
考えておいたサイズの通り作り、描きやすくするため地塗りをし、
絵の具の配色をねりながら、絵の具を作り、質感を考えながら、もりあげていく。
そして、加筆を繰り返し、仕上げを行う。
落款(らっかん)やサインをし、額装するまでの作業工程を、
常に、取材で行ったクロッキーやデッサン、エスキースなどの資料をみながら行っていくわけです。
時に、本制作の中で、新たに取材をするということも行われます。
そうやって、本制作の傍らで、ずっとはなみはなさずもっているものが、取材の素描たちなのです。
手塚雄二 飛龍峡(素描)
画家にとって、取材をした素描は、「設計図」であり、実は制作を陰で支える大切なもの。
そしてイメージの源泉。
取材の資料を見ていると、明暗だけのデッサンに、画家は輝くような色をイメージしてみたり、
鉛筆で描いた質感表現のところに、絵の具の盛りあがりを見たりするのです。
そして、それは無数の美しいイメージのパターンであったりもします。
このようなところは、プロの棋士ににているかもしれません。
プロの棋士は、一手一手の中に、常に何百もの手を頭の中でみていたりします。
将棋をされたことがあるかたは、少しイメージできるでしょうか。
だから、取材した素描には、厳密には作家が見て取っている
「われわれには、なかなか知りえるのは難しい、画家のみている『みえないイメージ』」
が存在するのです。
じゃあ、われわれはそのような作家がみているであろう
イメージを素描に見出すことができないのかというと、
けしてそうではありません。
美術館では、多くの場合、素描の作品の近くには、本制作の作品がおかれていたりするわけですから。
本制作の作品と、素描をみくらべると、
画家がみているイメージを見出すことがあります。
時に、そのようなみくらべによって、絵の構成の違いに気づき、
おもいもしない絵の本当の意味を知ることもあるかもしれません。
美術館で素描をみるとき、そのような『みえないイメージ』について、
想いをはせるのも、おもしろいかもしれません。
手塚雄二 飛龍峡
常設展示
「黒部峡谷日本画展、郷土の洋画家 戸出喜信 - 黒部川 -」
開館時間・休館日
9時~17時半(入館時間は、閉館の30分前までとなります)、無休
入館料
大人 : 610円 高校・大学生 : 510円 中学生以下 : 無料
現在、「龍をさがせ!」企画実施中です。
写真にも紹介している、「手塚雄二 飛龍峡」の作品には、龍が潜んでいます。
ぜひ、探してみてください。
みつけた方には、粗品をさしあげます‼
さらに、抽選で黒部の特産品をプレゼント! ふるってご参加ください。
黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館
富山県黒部市宇奈月温泉6-3
TEL0765-62-2000 セレネHP