月刊オダサガ増刊号

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今日もママはいない 18 パスモの月一登校

2014-02-27 17:26:38 | 小説「今日もママはいない」
今日もママはいない 18

 パスモが1か月ぶりに小学校に訪れたのは10月31日であった。

 担任の大木(おおき)がいつものように応接室で出迎えた。「毎月、来ないかと思わせて必ず来る、あんたらしいわ」
「約束は守るタチなんで」
「で、チビッ子ハウスの運営は順調なのかい?」
「まあ、生活して貯金できる程度には」
「よくやるわ、11人分の生活費、全部稼いで、おまけに貯金とはね。大人にも見習ってほしいわ」
「大人のおかげでここまでできるようになりました、感謝です」
「心にもないことをよく平気で言えるわ」
「いえ、事実です。普通の親と普通に暮らしていたら、こうはなりませんから」
「そりゃそうだ」
「じゃあ、帰りますね」
「おい、そう慌てるなよ。瞳ちゃんは相変わらず、せっせと通ってるのかい?」
「はい、残念ながら」
「あの女も大したタマだね」
「お節介が過ぎます。今日も夜にハロウィンパーティなんてやるハメになって」
「楽しそうじゃないか」
「中には喜んでるヤツも数人いますけどね」
「で、なんだい?ハロウィンって?」
「さあ、どっかの国のお祭りかなんかじゃないですか?」
「よくもまあ、次から次へと新しい風習ができるこった」
「なんでも取り入れるのが日本の文化ですから」
「取り入れ過ぎて、元々の日本文化がどっかにいっちまうんじゃないか」
「で、今更また、道徳教育ですか?」
「大きなお世話だよ。こっちは指示通りやるしかないんだよ」
「英語もまた増やすんでしょ?」
「それもまた困ったもんだよ」
「欧米の失業者対策ですか?」
「そこまで酷くはないだろ、さすがに」
「日本で英語なんか、ほとんど使わないですからね。そこまで熱心にやる意味がさっぱりわかりません」
「海外と張り合うつもりなんだろ」
「英語なんか喋るから外国人がのさばるんですよ」
「ほお、なるほど」
「日本では日本語、英語が喋りたかったら外国に行く。これですべて解決」
「あんたさあ、いつか政治家にでもなって世の中、変えてくれよ」
「いやですよ。政治家とか官僚とか、あんなやつらと同じ空気を吸うだなんて、考えただけでヘドが出ます」
「じゃあ、何になりたいんだい?」
「それって、進路指導ですか?」
「もっと漠然とした夢の話だよ」
「あいにく夢を見ていられるほど、暇じゃないんで」
「じゃあ、現実として、何を目指す?」
「やっぱり起業かな?」
「なんの職種だい?」
「マフィアかな」
「物騒だな。暴力団を作るっていうのか?」
「まさか。強い組織を作って戦うってことですよ」
「誰と戦う?」
「とりあえずは、今ある間違った常識」
「その間違った常識を教えてるのがあたし達だって言いたいんだろ?」
「それはご想像にお任せします」
「まあ、あんたに負けないようにあたしも頑張るよ」
「ご検討をお祈り申し上げます。そろそろ、帰りますね」
「おお、元気でな」

 パスモは小学校をあとにした。

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