たった一人の華流

　世の韓流ブームも落ち着いてきたようですが、昨年から社内では一人きりで華流らしきものに嵌まっています。
現在テレビで再放送中の武侠ドラマ「神雕侠侶（しんちょうきょうりょ）」は中国の人気若手女優リウ・イーフェイ（劉亦菲～日本での歌手デビューは賛成できません）主演ということで話題にのぼることがありますが、私が興味を惹かれたのは、秋の紅葉が絶景の季節に九寨溝でよくこれだけの長期のロケができたな、いう点です。CGを使っていることを差し引いても秋の九寨溝の美しさが堪能できます。
他に武陵源の張家界も多数登場しますが、見逃せないのが、運河沿いの長屋の鍛冶屋でのシーン。セットではなく、浙江省楠渓江の岩頭村がロケ地ですが、中国に古鎮は数あれど、これほど古く美しい町並みを残す村はそうないでしょう。ドラマ自体もリウ・イーフェイのワイヤープレイなど相変わらず見事です（子供だましと笑われるかもしれませんが・・・）。
確かにストーリーは相当にバカバカしいのですが・・・。原作は香港クンフー映画のショウブラザースもオマージュを捧げる、中国の武侠小説家・金庸です（ただし原作はラフな脚本ようなもので読まないほうがいいです）。

　まだ見ていないけど暇だから見てみようかなという方は、同じく金庸原作の「射雕英雄伝（しゃちょうえいゆうでん）」を先にご覧下さい。浙江省やモンゴルの草原などロケ地もいいですが、主演のリー・ヤーポン（李亞鵬）と「小さな中国のお針子」ジョウ・シュン（周迅～先日、香港アカデミー主演女優賞を受賞しましたね）を囲む脇役たちの存在感が抜群に素晴らしいドラマです（これも子供だましと笑われる可能性大）。
中国の人気女優ジャン・チンチン（蒋勤勤=水霊）も出演していますが彼女の影が薄くなってしまう程のキャスティングです。CGを一切使わないワーヤープレイもパーフェクト。チャン・ツィイーの「HERO」や「LOVERS」、NHKで放映中のハ・ジウォンの「チェオクの剣」など数多くの作品がこのドラマの影響を受けた（パクった）のも頷けます。「少林サッカー」や「カンフーハッスル」の一部はこのドラマをパロディーにしています。
　中国らしく乱暴に唐突に話が終わってしまいますが、日本なら3話から5話分くらいあるストーリー展開を丁寧な説明も無く一話でどんどん進めてしまうのも良（雑なストーリーと云えども「24」よりはずっとましです）。
金庸ものをDVDでご覧になるならテレビドラマ化された順番ではなく、射雕英雄伝→神雕侠侶→天龍八部（雲南省・大理のロケ）→笑傲江湖（中国五岳のひとつ華山のロケ）の順番がお薦めです。といくら熱く語っても会社の誰も見てくれません。韓国ドラマのようなラブストーリーもあまり期待できません。心の機敏なんて関係ありません。なにせ中国製作の武侠物ですから。
ある有名な日本の人気アニメの1回目のシリーズ（主役が西遊記の登場人物名）も射雕英雄伝（こちらの原作が古いので）のパクリだと思います（やはり子供だましか？）。

照沼　写真:九寨溝・五彩池