地球浪漫紀行☆世界紀行スタッフの旅のお話し

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タテゴトアザラシの赤ちゃん

2008年11月11日 18時39分21秒 | カナダ

タテゴトアザラシは体長1.7m、体重130キロの北大西洋や北極海に棲み、餌を求めて数千キロを移動する海洋哺乳類です。成体の体毛には銀白色で琴のような模様が入っているため和名で「タテゴトアザラシ(竪琴あざらし)」、英語名で「ハープシールharp seal」と名前がつけられています。

タテゴトアザラシは2月末になると出産と子育てのためにグリーンランドからの大移動ののち、25万頭の大群をなして、セント・ローレンス湾の中心地マドレーヌ諸島の海岸線にやってきます。そして流氷の上で一回の出産で一頭だけ子供を産みます。不思議なことに毎年決まって2月27日28日に何千頭もの赤ちゃんが一斉に生まれるのです。マドレーヌ諸島における、あざらしウォッチングの解禁日は3月1日となっています。そして3月11日から14日頃には流氷が溶け始め、ヘリコプターが着陸できなくなりますので、タテゴトアザラシの赤ちゃんがご覧いただけるのは3月1日から14日くらいまでのわずか2週間弱だけになります。ヘリコプターによる上空からの眺めも思わず息を呑む景観です。氷原の広がりの中にけし粒のような黒い点々が散らばっています。それは何ヶ月もかけて大海原を渡ってきたタテゴトアザラシの群れが思い思いに憩う姿です。

タテゴトアザラシの赤ちゃんは白い産毛に覆われていて、大人になるまでに何回か生え変わります。白い産毛は氷雪に溶け込み、白くまやシャチなどの天敵から身を守る保護色になっています。ブランション(白い子)と呼ばれるタテゴトアザラシの赤ちゃんは、成長がとても早く、お母さんアザラシのお乳で一日に2キロずつ体重が増えます。反対にお母さんアザラシは一日に4キロずつ痩せていきます。赤ちゃんは1か月ほどで親と同じ銀白色の毛に変わってしまいますので、愛らしい真っ白な産毛に包まれたかわいらしい姿を見ることができるのはほんのわずかな期間に限られます。

同じ赤ちゃんでも成長レベルによってかなり外観が異なります。生まれたばかりの赤ちゃんは母親の羊水で毛が黄色く染まっているので「イエローコート」と呼ばれます。この頃はお母さんが赤ちゃんの傍を離れないため、赤ちゃんに近づくのは難しくなります。3月1日から数日間です。(子育ては雌のみが行います。)
黄色い毛は生後3、4日経つと日差しや雪で真っ白になって「ホワイトコート」と呼ばれるようになります。

生後5日目と10日目では体重差が10キロあるため、前半を「やせたホワイトコート」、後半を「太ったホワイトコート」と分けて呼びます。やせたホワイトコートは動きが活発です。お母さんは氷に穿っておいた穴から餌をとりに出かけ始めますので、時にはお母さんと間違えて赤ちゃんの方から近づいてくることもあります。今回のツアーはこの「やせたホワイトコート」に合わせています。ぬいぐるみのようなアザラシの赤ちゃんをお楽しみください。お母さんが近くにいなければ、撫でながら一緒に写真をお取りいただけます。ただし、アザラシ保護条例で「アザラシの赤ちゃんには触ってもいいが、抱き上げて移動させてはいけない」と定められていますのでご注意ください。知床・羅臼にいるゴマフアザラシの赤ちゃんは崖などにいることが多いため一緒に写真を撮ったりすることはできませんが、マドレーヌ島ではお母さんが近くにいなければ触ることも可能です。運がよければ授乳の様子もご覧いただけます。この時期のマドレーヌ島の平均気温は最高-1℃、最低-6℃、降水量0mmです。

3月9日頃からが、いわゆる「ゴマちゃん」のイメージの「太ったホワイトコート」になります。この頃は親離れも始まり、いつもじっとしています。被写体としては撮り易いのですが、威嚇してくる場合があります。ただし近年、地球温暖化の影響により、氷が早く溶け始め、ヘリコプターが着氷できなくなる可能性もあり、ツアーとしてはリスクが高くなります。

その後、3月14日頃からは産毛が抜けて黒い毛が見え始め「グレイコート」と呼ばれます。3月末に親と同じ色になった赤ちゃんは「ビーター」と呼ばれ、流氷が溶けると北のグリーンランドへと向かい、4、5年後、親となって再びマドレーヌ島に戻ってくるのです。

2月28日発9日間でツアーを設定しました。
かわいいアザラシの赤ちゃんに触れにいってみませんか。
(西川 太陽)



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