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垂心四面体ABCDで成り立つベクトル等式の「証明」

2009年01月20日 | 考察

垂心四面体ABCDで成り立つベクトル等式の「証明」2009.01.20(火)

[表記の約束]: (→PQ)で「ベクトルPQ」を表し、E^mでm次元ユークリッド空間を表すことにする。
また S_A のAは下付きのA(添字)を表す。((→AB),(→AC))でもって (→AB)と(→AC)の「内積」を
表すことにし、一般の四面体に対してその「体積」をVで表す。
◎さらに、J(3)は次のような3次の対称正方行列で、detJ(3)はその「行列式」を表す。detJ(3)は
いわゆる「Gramの行列式」である。

J(3)=
( (→AB,→AB) (→AB,→AC) (→AB,→AD) )
( (→AC,→AB) (→AC,→AC) (→AC,→AD) )
( (→AD,→AB) (→AD,→AC) (→AD,→AD) )

(→AB),(→AC),(→AD)は一次独立だから detJ(3)>0 である。

さて、2009.01.14(水)に与えた「ベクトル等式」を証明する。
次のようであった。

[命題1.1」

垂心四面体ABCDにおいて
△BCD、△ACD、△ABD、△ABCの面積を順 に S_A ,S_B, S_C,S_D とし、
頂点 A,B,C,D から対面の△BCD、△ACD、△ABD、△ABCに下した垂線の足をそれぞれ 
 H_A,H_B,H_C,H_Dとすれば、

等式 
 {(S_A)^2}(→AH_A)+{(S_B)^2}(→BH_B)+{(S_C)^2}(→CH_C)+{(S_D)^2}(→DH_D)=(→0)

 ・・・(1・1・1)

  が成立する。

△ABC では、対応する等式は次のようになる。
[命題2.1]

3辺 BC,CA,AB の長さをそれぞれ a,b,c とし、頂点 A,B,Cから対辺 BC,CA,AB に
下した垂線の足を、順に H_A , H_B, H_C とし、△ABCの面積をSとすれば、
 等式

  (a^2)(→AH_A)+(b^2)(→BH_B)+(c^2)(→CH_C)=(→0)
    ・・・(2・1・1)
   が成立する。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

(ア)垂心四面体ABCDで成り立つ事柄の復習

[命題1.2]  

  「四面体ABCD」の「垂心H」が存在する
⇔(1) AB⊥CD かつ AC⊥BD かつ AD⊥BC ・・・(1.2.1)

⇔(2) (AB)^2+(CD)^2=(AC)^2+(BD)^2=(AD)^2+(BC)^2 ・・・(1.2.2)
(1)は容易に

⇔ ((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)) ・・・(1.2.3)
⇔ ((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),(→BD)) ・・・(1.2.4)
⇔ ((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)) ・・・(1.2.5)
⇔ ((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(1.2.6)

そこで x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)),
    y=((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),→(BD)),
    z=((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)),
    w=((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(1.2.7)
   とおく。 このとき、
[命題1.3] 
  垂心四面体ABCDにおいて
   x+y=(AB)^2 ,x+z=(AC)^2, x+w=(AD)^2,
y+z=(BC)^2 ,y+w=(BD)^2, z+w=(CD)^2  ・・・(1.3.1)
  
   であった。
また
[命題1.4]
 垂心四面体ABCDにおいて

 detJ(3)=(6V)^2=yzw+xzw+xyw+xyz ・・・(1.4.1) であった。
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(イ) △ABCで成り立つ事の復習
[命題2.2]
 △ABCにおいて、その面積をSとし,x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))と
 おけば、x+y=(AB)^2 ,x+z=(AC)^2,y+z=(BC)^2 ・・・(2.2.1)となる。
 その「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」は任意の点P∈E^m(m≧2)
( ただし△ABC⊆E^2⊆E^m)としておく) に対して、

 (→PH)=1/{4(S^2)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)] ・・・(2.2.2)
 
  また 4(S^2)=yz+xz+xy ・・・(2.2.3) であった。

◎ 以上(ア)(イ)が復習である。

※※※※※※※※※※※※ それでは「証明」に入る ※※※※※※※※※
[命題1.1」の「証明」

垂心四面体ABCDの「垂心」をHとする。
このとき、2008.11.3[垂心四面体で見落としていた大事な事]のブログで述べたように
H_A,H_B,H_C,H_D は順に△BCD,△ACD、△ABD,△ABCの「垂心」であった。よって[命題2.2]の
三角形での「垂心のベクトルによる重心座標表現」により、[命題1.2]の(1.2.7)に注意すれば、
 任意の点P∈E^m(m≧3)に対して、

  (→PH_A)=1/{4(S_A)^2}[zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)] ・・・(1.1.1)
  かつ 4(S_A)^2=zw+yw+yz ・・・(1.1.2)
 同様に 
  (→PH_B)=1/{4(S_B)^2}[zw(→PA)+xw(→PC)+xz(→PD)] ・・・(1.1.3)
     4(S_B)^2=zw+xw+xz ・・・(1.1.4)

  (→PH_C)=1/{4(S_C)^2}[yw(→PA)+xw(→PB)+xy(→PD)] ・・・(1.1.5)
     4(S_C)^2=yw+xw+xy ・・・(1.1.6)
 
  (→PH_D)=1/{4(S_D)^2}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)] ・・・(1.1.7)
     4(S_D)^2=yz+xz+xy ・・・(1.1.8)
したがって(1.1.1),(1.1.3),(1.1.5),(1.1.7)の分母を払い、四式を加えて 
  (1.1.2),(1.1.4),(1.1.6),(1.1.8)を使えば

  {4(S_A)^2}(→PH_A)+{4(S_B)^2}(→PH_B)+{4(S_C)^2}(→PH_C)+{4(S_D)^2}(→PH_D)
  
  =zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)+zw(→PA)+xw(→PC)+xz(→PD)
  
  +yw(→PA)+xw(→PB)+xy(→PD)+yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)
  
  =(zw+yw+yz)(→PA)+(zw+xw+xz)(→PB)
  
  +(yw+xw+xy)(→PC)+(yz+xz+xy)(→PD)
  ={4(S_A)^2}(→PA)+{4(S_B)^2}(→PB)+{4(S_C)^2}(→PC)+{4(S_D)^2}(→PD) 

すなわち 
  {4(S_A)^2}(→PH_A)+{4(S_B)^2}(→PH_B)+{4(S_C)^2}(→PH_C)+{4(S_D)^2}(→PH_D)
 ={4(S_A)^2}(→PA) +{4(S_B)^2}(→PB) +{4(S_C)^2}(→PC)  +{4(S_D)^2}(→PD)  ・・・(1.1.8)

ゆえに  {4(S_A)^2}[(→PH_A)-(→PA)]+{4(S_B)^2}[(→PH_B)-(→PB)]  
    +{4(S_C)^2}[(→PH_C)-(→PC)]+{4(S_D)^2}[(→PH_D)-(→PD)]=(→0)

 すなわち

 {(S_A)^2}(→AH_A)+{(S_B)^2}(→BH_B)+{(S_C)^2}(→CH_C)+{(S_D)^2}(→DH_D)=(→0) 
 
よって  [命題1・1]は証明された。
( [命題1・1]の「証明」終わり )※ 注意:[命題1.4]は使用しなかった。

次に △ABCの場合の[命題2.1]は、次の[命題2.3]を使う。

[命題2.3]  [命題2.2]から次の事が分かる。
 △ABCにおいて、頂点A、B、Cから対辺 BC、CA、AB に下した垂線の足を順にH_A,H_B,H_Cとすれば、
H_A,H_B,H_C は 辺 BC,CA ,ABを
 
B(H_A):(H_A)C=y:z ,C(H_B):(H_B)A=z:x ,A(H_C):(H_C)B=x:y
 の比に分ける点である。

[命題2.3]については、Gooのブログ「あれこれゆっくりと学びについて考える」
の2008.8.31の[三角形の垂心のベクトルによる重心座標表現」に
 書いてあるので,そちらを見ていただきたい。)

※※※※※※※※※※※※ [命題2.1]の「証明」をしよう※※※※※※※※※

 [命題2.3]から△ABCの場合の[命題2.1]の「証明」は簡単である。
[命題2.1]の「証明」
 [命題2.3]から
   
 [命題2.2]の(2・2・1)に注意すれば
 (→AH_A)={1/(y+z)}[z(→AB)+y(→AC)]={1/(a^2)}[z(→AB)+y(→AC)] ・・・(2.1.1)
 (→BH_B)={1/(x+z)}[z(→BA)+x(→BC)]={1/(b^2)}[z(→BA)+x(→BC)] ・・・(2.1.2)
 (→CH_C)={1/(x+y)}[y(→CA)+x(→CB)]={1/(c^2)}[y(→CA)+x(→CB)] ・・・(2.1.3)
( なお BC=a ,CA=b ,AB=c に注意せよ )
  
 分母を払って 加えれば 
 (a^2)(→AH_A)+(b^2)(→BH_B)+(c^2)(→CH_C)
 =[z(→AB)+y(→AC)]+[z(→BA)+x(→BC)]+[y(→CA)+x(→CB)] 
 =[z(→AB)+z(→BA)]+[y(→AC)+y(→CA)]+[x(→BC)+x(→CB)] 
 =(→0)+(→0)+(→0)=(→0)
 
( [命題2.1]の「証明」終わり )
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◎ [命題1.1」の「別証明」
(1.1.1)で P ⇒A ,(1.1.3)で P ⇒B ,(1.1.5)で P ⇒ C ,(1.1.7)で P ⇒ D として
 分母を払い四式を加えれば、

 {4(S_A)^2}(→AH_A)+{4(S_B)^2}(→BH_B)+{4(S_C)^2}(→CH_C)+{4(S_D)^2}(→DH_D)
 =[zw(→AB)+zw(→BA)]+[yw(→AC)+yw(→CA)]+[yz(→AD)+yz(→DA)]
 +[xw(→BC)+xw(→CB)]+[xz(→DB)+xz(→BD)]+[xy(→CD)+xy(→DC)] 
 =(→0)+(→0)+(→0)+(→0)+(→0)+(→0)=(→0)
( [命題1.1」の「別証明」終わり)