さとみん絵本の世界

さとみんおすすめの絵本や本(児童書が主)と、うずまいている日々の迷いや気づき!!

あな

2007-03-31 | 子どもと読んだ本
シンプルなんだけど深ーい
あなにはまってしまうよ!

key word・・・あなほり しずけさ おこもり 哲学!?

和田誠さんのポヤンととぼけたような絵と
たんたんとした谷川俊太郎さんのことばが
ナイスな組み合わせ


  にちようびのあさ、なにもすることがなかったので、
  ひろしはあなをほりはじめた。

こんなすてきな出だしだ

そしてもくもくとあなをほりつづける
家族やともだちが話しかけるけど
そんなことはぜんぜんおかまいなしに
ただ
あなをほる

子どもの頃にこんな経験をしたことを
うっすらと思い浮かべる
意味なんて考えなかった
ただほりつづける
ただかきつづける
ただあつめまわる(石とか木の実や種)

  あなのなかはしずかだった。
  つちはいいにおいがした。
  
  「これはぼくのあなだ」ひろしはおもった。

そのあとひろしはあなのなかにすわりつづける
あなのなかからみるそらは
たかく、別世界である

思わずこのひろしの立場にぐっと近づいてしまう
いえ、自分があなのなかに入ってしまう

そして
そのあとはもとどおり
すっかりさっぱり何事もなかったかのように
あなをふさいでしまうのだ

なんと哲学的な絵本なんだろう!
これはおとなのための本なのでは?
と、思ってしまう


★画像がなく、紹介できませんでした


谷川俊太郎/作  和田誠/画  福音館 1983年こどものとも

ペーテルおじさん

2007-03-08 | 子どもと読んだ本
  こどもはいつだってよーく見ているよ!

key word・・・なんでも知ってる みんなで家をなおそう ペンキぬり

ルッレという男の子がこのおじさんのことを紹介してくれます

ペーテルおじさんはなんでもできるすごいひと
ロシア語、ドイツ語、トルコ語が話せるし
外国で旅をしたおもしろい話を聞かせてくれるし
フルートも演奏できる
それに
木をけずって帆船もつくれる
こわれものの修理だって病気の面倒だってみてくれる

なんてスーパーなんでしょう!

でもこんな不思議で異邦人みたいな人は
大抵はまずしい暮らしをしている
このペーテルおじさんもその例外ではない

世の中をさんざんみてまわって
その挙句は
自分の最終章の人生をピュアに生きようとしている

そういう人は世の中のしきたりとか
つまらない常識などにはなかなか馴染まない
でもなぜかこどもたちは集まってくる

また
みんなペーテルおじさんにはたくさんお世話になっているのに
「ありがとう」というだけで
お金とういう報奨を払わないでいる(おとなが)

(これって自治体がボランティアということばのもとに
自治体の仕事をおしつけている姿と似ていないか??)

ま、それはいいとし

ある日役人が来て
ペーテルおじさんのボロ家を取り壊すと言い出し
2週間の猶予を与える
(一方的だ!)

そこでお金のないこどもたちは、ペーテルおじさんのために
家の改装&改築作業をすることになるのだ!!
それぞれが修理に必要なものを持ち寄って・・・

それがまたすてきなんだーー
いつだってこどもが真実を見ていて
そして解決していくんだね


ボロ家がだんだんかっこよくなっていく様は
ワクワクする

屋根には風見がとりつけられ
はと小屋が乗り
赤いかわらがのせられ
家のかべや台所のかべもペンキで塗られる

ルッレがペンキ塗りの担当になるのだけど
おとなになってもペンキやさん!


  エルサ・ベスコフ/作・絵 1949年の作品 2002年発行 フェリシモ
  石井登志子/訳               





こしょうできまり

2007-02-23 | 子どもと読んだ本
 好奇心はたのしい! 世界一って言ったもん勝ちよ

key word・・・なかよし三人(さんびき) まいごと冒険


イングランドのCITY郊外に、
白くてまるいポットみたいな家に住んでいる
ねことりすとあひる
ねこがきりわけ、りすがかきまぜ、あひるがあじをつける
そんなふうに役割がきまっている、なんとなくね

で、ある日決め手のしおがなくなって
三人はシティにくりだす
末っ子みたいなやんちゃなあひるがまいごにならないように
ねことりすは注意をしていたのだが・・・
ふと目に入ったこしょうやさんの看板!
あひるくんにふくらむ妄想
絶対おいしいに決まっている!(このページの絵サイコウー)

ところがその間にまいごになってしまう
さっきの楽しい妄想はどこへやら
知らない街のしらない道の知らないひとたち
心細くてこわくて大声で泣きさけぶ

でも親切なめんどりおばさんやら街のひとたち
おまわりさんや消防士さんまでもが心配し協力してくれる

ついに三人は再会したのだけど
最終バスがなくなってしまって
おまわりさんにひこうきで送ってもらう(絵をみるかぎりヘリコプターだが)

で、世界一おいしいかぼちゃスープをつくるのだけど
こしょうのあじつけはいかに?


こんなあらすじデス


○○をいれたらどうなるかな、なんていう小さな冒険は
料理の楽しさのひとつかと思う
その結果どんな味になるかは・・・・やってみるしかない
そう、あひるくんみたいに好奇心いっぱい妄想ごころいっぱいでOK

絵もとにかくおしゃれ
胡椒轢きのかたちのビルディングや街並みがカラフルで魅力的
胡椒専門店があるのがぜいたくで心引かれる
インドネシアのムントク産白こしょう、インドのマハバル産こしょう、
ピンクこしょう、グリーンこしょう、ロイヤルこしょう、あらびきこしょう
黒こしょう、タカノツメ、赤とうがらし、ししとう、ハワイの虹こしょう
カイエンペッパー、ハラペーニュ、ピメント・・などなど
こんなにあるんだなぁ

それから脇役のむし2ひき、てんとうむしとおさむし?がさりげに
あちこちに登場している
このむしを探すのも読むときの楽しさのひとつだ
また、ストーリーの文字以外にたくさんのことばや音が感じられて
読むたびにいろんな発見が増してくる絵本だ
前作の「かぼちゃのスープ」が15カ国で訳され、ベストセラーなのも
わかる気がする


ここでウンチクをひとつ

「こしょうはスパイスの王様」
と言われていて、世界中に100種類以上あるという
料理には粒のまま、粗挽き、粉状にして使う
日本でのこしょうの歴史は正倉院に残されている事実が一番古く
一般家庭に普及したのは戦後だという
今家庭にこしょうがあるのはあたり前ですが、実は結構新しい

でもイギリスをはじめヨーロッパでは大航海時代にこしょう戦争が
あったといわれ、高価で貴重なものだった
金銀とおなじくらい価値があったらしい
食料の保存効果や味付けにおいて革命的だったんだろうな、と思う




 ヘレン・クーパー/作 (2004年) 川田あゆこ/訳
 アスラン書房  2005年11月発行



ゆかいなさんぽ

2007-02-12 | 子どもと読んだ本
あのぶたぶたくんがここに・・・みっけ!
超ゆかいゆかい!サイコーだぜぇー

key word・・・ぶたぶた うるさーい モノクロでシュール


図書館でふっと目に入った
あのぶたぶたくんが素描画として
さりげに表紙のすみっこにいる

「ぶたぶたくんのおかいもの」
という絵本は何度子どもと読んだか知れない
でも作者のことは考えたことがなかった
(ごめんね、土方さん)
ぶたぶたくんやかぁこちゃん、おおきなこぐまくんの存在が
あまりに大きかったからね

で、この「ゆかいなさんぽ」も
ぶたぶたくんのおかいものと筋書きが似ている

歩いていくと友だちにあって合流する
まざって歌いながら手をつないで
さいごはバイバイ



子どもにこの本を見せたとき
中一の子がげらげら大笑い
とらの顔があまりにもまぬけ おおまぬけ!!
うけを狙って描いているのか?
1965年発行だからまじめだと推測するが・・・
きっとユーモアのある人だったんだ

とにかくゆかいでリラックスできるなんでもない話し

こぶたは ぶたぶた
あひるは がおがお
とらは うぉお
うさぎは ぴょん

山からのおさんぽ組みは 
しじゅうからが つぴつぴちぺちぺ
すずめが ちゅんちゅん
おながは じぇえ

みんながいっしょくたになって
うるさいうるさい

やりきれん 
もうこりごりだ
やんなっちゃう

で、おわり


作者の土方久功さんは1900年東京生まれ(1977没)
東京美術彫刻学校卒業 1929年に南洋パラオ島に渡り、
島民と生活を共にしつつ彫刻に励み、民俗学を研究したそうだ

彫刻家とは知らなかったぁ

もしぶたぶたくんの彫刻があったら
すんごぉーいうれしい!!!


  土方 久功/作・絵  福音館書店 こどものとも1965年発行

アンナの赤いオーバー

2007-02-12 | 子どもと読んだ本
第二次世界大戦後、ほんとにあった話し

key word・・・手をかけてつくる 待つよろこび 感謝

表紙をみていると
赤いオーバーの向こうに
いろんな人の笑顔や手仕事が
みえてくる
一着のオーバーのあつみが
感じられてくる


この本に出会ったのは
銀座のナルニア国で
この絵本の原画展をたまたま観たことだ
(昨年の冬だったかな)

戦後ものがなくて
買いたくても何もない時代
娘のために一着のオーバーをつくるのに
大事な家財と交換していく

春におひゃくしょうさんが羊の毛刈りをするまで待って
金時計と羊毛をとりかえる

サクランボが熟すまで待って
おばあさんに糸を紡いでもらう
ランプとひきかえに

夏のおわりにコケモモをつんで
紡いだ糸を染める


2週間かけてはたやさんに織ってもらう
かわりにガーネットのネックレスをわたす

織った布地は仕立て屋さんにもっていく
ティーポットとひきかえに


で、最後に完成しておわり、ではなく
オーバーができるのにかかわった人みんなを招いて
クリスマスパーティーをする
もちろん
羊さんにもTHANK YOU を忘れない

本のうち扉のアンナが成長してる
本はあらゆるところに発見があるから
おもしろい



  ハリエット・ジィーフェルト/作 アニタ・ローベル/絵
  松川真弓/訳  評論社

ちゃっかりクラケールのたんじょうび

2006-12-07 | 子どもと読んだ本
遊びごころよ、これは。深い意味ないから

key word・・・ちゃっかりもののこども お菓子 トンマなおじさん


スウェーデン作家のナンセンスなおはなし
風が吹けば桶屋がもうかる、みたいな

教育的でない、と言って評価しない人もいるようだけど
そんなのは違う意味のナンセンス

マザーグースの歌だっておかしな歌詞があるけど
そんなかんじでサラッと読めば
けっこうイケル
絵もおしゃれだし

子どもらにはうけました!

そう
クラケールという男の子とブリッタという女の子は
同じたんじょうびなんですね
おいわいに5オーレもらって
お菓子を買いにいくんです

それからは
読んでのおたのしみ

げじ眉のお菓子屋のおじさんが
すっかりクラケールの企みにのまれていくのは
子どもにはワクワクするんじゃないかな


構えないで読んでみたら?

レンナード・ヘルシング/文 スティグ・リンドベリ/絵
石井登志子/訳  プチグラパブリッシング




おじいちゃんがおばけになったわけ

2006-11-29 | 子どもと読んだ本
なかよしだったじいじが死んじゃった
あの世に行くまでのたのしい時間?!

key word・・・死ぬこと じいじのわすれもの いきてる


だいすきなおじいちゃんが死んでしまった。
ママは天使になるといい、パパは土になるという。
でも
夜エリックの前にあらわれたじいじは
いつもとおなじかっこうをしている
生きていたときと同じように
ふたりではしゃいじゃう

かべを通り抜けられるおばけワザやおばけ声は
エリックをよろこばせる

生きていたときのふたりの思い出の回想も
しめっぽくなくて
すごく自然
こんな「死」の受け止め方ができたら
しあわせだな

エリックの無邪気なこどもらしい顔と
所在なさげなおじちゃんのようすは
おとなとこども、という関係より
なかよしなふたり
という関係

さすがデンマークの絵本!って思う


  キム・フォップス・オーカソン/文 エヴァ・エリクソン/絵
  菱木晃子/訳

時計つくりのジョニー

2006-10-27 | 子どもと読んだ本
好きなことに熱中するってステキだね

key word・・・ものづくり いじわるなともだち 共にいてくれる人 チクタク


エドワード・アーディゾーニの版画は大好き!
(はじめて出会ったのはエリナー・ファージョンの本の挿絵)
この本の挿絵はカラーの部分もたくさんありますが
銅版画のモノクロがなんともよいです



ジョニーはトントンカチカチ、
つくるのがだいすき
ある日、ほんものの大時計をつくる決心をします

でもその熱い気持ちを冷まそうとする現実があります
それは
友だちや先生までもがジョニーのことを
からかったりバカにしたりすること
 (まるで今のいじめ自殺の背景のよう)

それと両親ふたりともが
  ばかなことをやってる!
  家の手伝いでもしなさい
  くだらない
  うるさい
ということ

それでも
ジョニーは時計づくりをあきらめませんでした

なぜなら
スザンナという共感してくれる友だちが
彼の才能をこころから認めて
そばにいてくれたからです

共にいてくれるたった一人の存在は
多くの困難を打ち負かす強さがあるって思う


ステキな大人も登場します
鍛冶屋のジョーです
ジョニーのために
時計の振り子を作ってくれます

ジョーみたいな大人の在り方や
いろいろな場が
子どもを育てるんだろうな




エドワード・アーディゾーニ/作 あべきみこ/訳  こぐま社



さんまいのおふだ

2006-10-18 | 子どもと読んだ本
何度聞いてもワクワクするオーソドックスな日本むかしばなし

key word・・・鬼ばさ、べんじょのかみさま、ふしぎなおふだ、おしょうさん


福音館書店発行で新潟版の「さんまいのおふだ」だ
このはなしは本筋は同じでもいろいろなバージョンがある。

寺のこぞうさんが、栗ひろいに行くはなしもあるが、
これは花きりに行く設定になっている

その後は、鬼ばばが出てきて
べんじょのかみさまからもらったふしぎなおふだが
大活躍する
ダイナミックでスリリング!
5年生の教室で読んだが
反応もあり、楽しんで聞いてくれた

むかしばなしは、可なり現実からはなれているのだが
方言の語り口調もおもしろく、
けっこう引き込まれるものだ

 ピカンピカンとあかりがみえた
 
 ペランペランとなめたり
 ザランザランとなでたり

 ピーピーのさかり

 ギッツンとなわをひっぱる

 ガラヒチガラヒチとんできて

 ゴンゴンにげた

 グーンとうしろへなげて

 ボンボンボンひがもえて

 クルンとひっくりかえって

 ガリガリ

     など・・・

実にリズミカルでたのしい

むかしばなしの「おわりかた」は地方によってさまざま
おまじないのようなことばは
食事のおわりにたべるデザートのようなかんじ

たとえば

 とっぴんぱらり、さんしょの実(秋田)
 とっぴんぱらりのぷう(秋田)
 どんどはらえ(岩手)
 もうなし、しゃんしゃん(香川)
 昔こっぷり、どじょうの目(岡山)
 どっとはらい(青森)
 いきがポーンとさけた、なべのしたガラガラ(新潟)
 そいぎり(鹿児島)
 とーびんと(山形)


では

 いちごさかえたなべのした、ガリガリ!!

水沢謙一/再話  梶山俊夫/画  福音館  こどものとも傑作集

ロバのシルベスターとまほうのこいし

2006-10-15 | 子どもと読んだ本
key word・・・いしあつめ、おこもり、母の直感、まほう、だいじなこと

江戸川の、とある小学校の5年生の教室で読みました。
最近5年生もなかなか難しいと言われていましたが、
じっと聞いていてくれました。

瀬田貞二の訳はちょっと古く、
子どもたちにも読み始める前に
‘わかりにくい日本語があると思うけど、あとで担任の先生に
聞いてね‘
と言っておきました。
たとえば
もうろくする、よっぴいて、おけらになる
など・・・
子どもたちにとっては、????でしょう。

それにしても、このおはなし
けっこう私はこわい、と思う。
だって岩になって絶望的になるのですよ!
恐怖です、こんなまほうはイラナイ!と思う。
と、同時に
これは自我に目覚めるおはなしなのでは?
と、難しく詮索してしまいます。

実は、いま我が家に「おこもり」している子どもがいます。
世の中では「ひきこもり」というのでしょうか?

この子はどこかで「あかく光るまほうのこいし」を
ひろってきたのかもしれません。

どのくらいたてばいいのか私にはさっぱりわかりません。

「ぼくだよ、ぼくがここにいるよ!!」
と、
自分自身をみつけることができたら
きっと外にでてきてくれるかもしれません。

こんな深読みをしてしまうのは
スタイグだからでしょう。

ここでポイントは
母親の「待つ愛情」と直感です。
それと
「ときのながれ」です。

周りは何もできないのです。
やれることは全部やったのです。





聞いていた子どもたちはどのように受け取ったでしょうか?
話をしていた私は
何度も読んでいろいろ考えてしましました。

スタイグさんのほかの話しも大好き。
60歳を過ぎてから子どものための話しを書くようになったとか・・・

人生まだまだだね!
ふう~~


ウィリアム スタイグ/作・絵  瀬田貞二/訳  評論社