マンション管理士綾さんのブログ

マンション管理士は「正義の味方・月光仮面」?

マンション管理にも居住福祉型の思考と対応を

2013-07-01 10:42:58 | インポート

これも少々古いのですが、2010年6月15日、
埼玉県マンション居住支援ネットワークのコラム欄
に掲載した小文を掲載します。

マンション管理にも居住福祉型の思考と対応を

          

614日は「住まいは人権デー」です。1996年、第2
国連人権居住会議がトルコのイスタンブールで開催され、
この会議の最終日
614日に「居住の権利」が宣言されま
した。この宣言は住まいについて、「人間にふさわしい
住まいは、命の安全、健康、福祉、教育や本当の豊かさ、
人間の尊厳を守る基礎であり、安心して生きる社会の基
礎である。」と宣言し、日本政府も調印し、承認してい
ますが、翌年から
614日を「住まいは人権デー」として
住宅関係団体が共同して取り組んでいるものです。

憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活保障」
の規定、生存権と幸福追求権に戻るまでも無く、「安心
できる居住環境は生存の基礎であり、社会保障の土台で
ある」といわれる所以であります。

昨今の格差と貧困の拡大は、住宅問題でも深刻です。
リストラや会社の倒産、派遣切りで、寮や借家から追い
出される現実、家賃や更新料、住宅ローンやマンション
管理費が払えないなど、ワーキングプアーからハウジン
グプアーの言葉が急速に広がっています。

マンション管理の世界でもその波は着実に押し寄せて
います。マンションの老朽化と居住者の高齢化の同時進
行、高齢者単身者や老老介護世帯への対応に加えて、居
住福祉的な管理組合の対応が求められ、マンション管理
士としての相談業務への対応にも、区分所有法、マン管
適正化法の枠を超えた、幅広い知識、認識が必要となっ
ていることを実感するこのごろです。最近になって、
10年も前から活動している居住福祉学会の存在を知り、
その主張である、
21世紀の暮らしや福祉を支える居住福
祉型街づくりとしての住宅を求める活動に共感し、注目
しているところです。

最近の相談事例に見るいくつかの具体事例

(その1マンション管理相談というよりも多重債務解消相談

72歳のご婦人が、管理費が払えないのです。どうし
たらよいでしょうかとマンション管理相談に見えました。
よくよく聞いてみると、一人暮らしで年金は月9万円、
ローンの支払いは終わっているが、セゾンカード、
MOC
カードローンの支払いが毎月4万円弱あり、生活費を切り
詰めているが、管理費が払えない、払わないといけない
のでしょうかというのです。

生活保護を受けるには年金収入が基準額をこえているし、
管理費を払えない理由を一緒に探しましょうと、毎月の
生活費、医療費、食料代など、全ての収入と支出のバラ
ンス表をその場で作ってもらっているうちに、カードロ
ーンの支払いが無ければ、管理費が払えるのですがと、
弱弱しい声が聞こえました。

多重債務者の相談事例を話して、何時からどんな理由
で借り入れが始まり、これまでどの程度返済を続けてき
たかを聞いたところ、過払いの可能性が極めて高く過払
い金を取り戻す事から始めましょうと提案。弁護士費用
も払えないというのですが、過払い金の中から弁護士費
用を払えばよいこと、実費は法テラスからの借り入れで
毎月の分割払いが出来ること、さらに弁護士の受託通知
後は支払いの必要がなくなるので、その支払い分で経費
も管理費も払えることを説明、弁護士事務所を紹介して、
手続きを終えました。

相談者からは「お金もさることながら、頭の重石が取
れました。相談に来て本当に良かった」と晴れ晴れとし
た顔でお礼を述べた老婦人の笑顔が印象的でした。

(その2、マンションは購入前に十分な調査を

68歳の年金暮らしの紳士が相談に見えました。管理費
ではないが自分たちの責任でもないのに、突然特別会費
徴収問題が持ち上がり、
150万円を払えと督促が続く。
納得できないし、払いたくない、現実に払えない、どう
したものかとの相談でした。

家族は67歳のドイツ人の妻と2人暮らし、2人の娘は独
立してそれぞれ世帯を持ち、別に暮らしている。自分た
ちは年金暮らし、アルバイトもしているがそんなお金は
無い。いまさら娘たちに助力も言い出せないし、何より
も自分たちには何の責任も無いのだから、管理組合の総
会でも反対したが、賛成多数で徴収が決まってしまった。

駅から数分の県道沿いの交差点にマンションが建った
が、利便性に着目して購入し現在に至ったが、突然隣り
の土地を管理組合として買い取ることになったという。
その土地の取得費を各世帯の特別会費として徴収するこ
とになったが払えないというのです。

マンション建設時点で、同じ地主の隣地と一体で建築
確認を取り、マンションを建てた。その土地は、敷地と
して一体登記がされていないまま駐車場として利用され
ていたのだが、いつの間にか、地主が借金のかたか何か
で、差し押さえられ、競売処分されるということになり、
債権者から持ちかけられて任意売却により取得したとい
うのです。

その土地が別人の所有になれば、マンションは違法建
築となり、将来に禍根を残すというので、管理組合総会
としてはやむなしと判断して、特別会費を徴収して購入
に踏み切ったものでした。

率直に言って、総会の手続きが正当なものであれば、
払わなければならないものです。欠陥マンションを買わ
されたと、購入時点に遡って対処する方法もあるかもし
れませんが、相当の困難を伴います。何らかの方法で工
面して特別管理費は払っておいて、その後の対処方法を
考える方が良いのでは、、、との回答に、「弁護士に相
談したが、同じように払わないとダメといわれて困って
いる。いまさら借金も出来ないので、家を売って出て行
くしかないか」と打ち沈んで帰られました。


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