マンション管理士綾さんのブログ

マンション管理士は「正義の味方・月光仮面」?

最近のマンション管理相談から

2013-07-01 09:57:27 | ブログ

少々古いのですが、2010.4月の中央大学信窓会
埼玉支部報第60号に掲載した投稿をを転載します。

マンション管理士という制度は、平成12年12
月に成立した、「マンションの管理の適正化の推進
に関する法律」の施行に伴い、平成13年8月から
スタートした新しい国家資格です。マンションのス
トックが386万戸になろうとしていた時点で、そ
れまでの無法状態の改善を目指して、議員立法によ
り誕生した法律です。中心的な柱は、マンション管
理業者の登録の義務付け、宅建業者の宅建取引主任
同様に、管理業者に専門家としてのマンション管理
業務主任の配置を義務付けるとともに、管理会社の
外にあって、管理組合の立場、住民の立場で活動す
る専門家としてマンション管理士制度が発足しました。

マンション管理士の活動を始めての強い印象は、
不動産業界の闇の深さと恐ろしさを痛感すると共に、
管理士仲間の共通した認識として、(半分冗談話、
だからこそ本音?ですが)自宅を買うなら、出来る
だけマンションは買わない方が良いというものです。

現在、マンションは545万戸を超え、国民の約
1割1400万人が居住、特に首都圏では、全世帯
の3割に登る居住形態となり、マンション暮らしは、
ますます一般化する中で、マンション関係者の意識
と現実の乖離が大きく、非常に広範囲な問題を含ん
でいます。

昔は「マンションは鍵一つで独立した世界」「隣り
近所のわずらわしさから開放された住居」「いずれ庭
付きの一戸建てを、とりあえずマンションを」などの
意識が多かったのですが、昨今の社会経済情勢もあり、
本人の希望とは無関係に、ついの棲家としての居住が
急増しています。移りたくても移れない厳しい現実が
充満しつつあるのです。

また、マンションは運命共同体の住居で、隣近所は
戸建のように平面ではなく立体的に存在し(むしろ脆
弱建築と闇のかかわりで上下関係に問題が多い)、居
住者の自由意志による行動できる範囲より、集団の意
思決定が不可欠となる行動が大きいなど、ちょっと考
えれば、「なるほどそうか」と問題の所在に気づくも
のがほとんどです。

しかし、その集団的意思決定に基づく解決となると、
なかなか困難を伴います。さらに問題を複雑にしてい
るのは、40%を超える220万戸が築20年を超え
た老朽マンション、加えて居住者の高齢化の現実、マ
ンションの2重の高齢化問題です。

老朽マンションの維持管理の蓄積と水準、居住者の
高齢化による生活困難、それは即管理組合の取り組み
の困難に直結します。

高齢化で役員のなり手がいないこともありますが、
もっと深刻なのは、無年金、低年金、失業、倒産など、
生活能力不足が原因で管理費が払えない事例が増え、
管理費の滞納が管理組合の運営に悪影響を与える現実
が進行していることです。

そうなれば、管理費滞納が区分所有者の共同の利益
を詐害する行為として、「処罰」の対象(迷惑行為の
ための競売申し立てが認められる事例が増えている)
となるし、さりとて管理費の滞納を放置すれば、修繕
費が用意できないから修繕できない、修繕費用の借り
入れも出来ない、そんなところに済めないと価格下落
を承知で、逃げ出す住民、それを承知で買ってくる人
たちの水準に下げられる住民意識と住環境の悪循環と
なり、管理はますます困難となり、管理業者も見放し、
自主管理の迷路の中で、マンション管理の基本が無視
され始めると、スラム化の路に転がり落ちる先が見え
てきます。

相談事例1:

マンションの中でも特に問題が多いのは、不動産業者
が自分の事務所を建設し、その上階を住居として販売し
たもので、その不動産業者が自分の物との意識のままで
行動し、区分所有法の原則、マンション管理適正化法の
精神をまったく理解しないか、承知の上で悪質な行為を
続けるところから生まれる問題です。

Sマンションは、俺はマンションの上だけ売ったけど、
1階の事務所は売っていない、俺のものだ。組合からと
やかく言わせない。不動産業者としてマンションを管理
してあげるから、管理費を払いなさい、でも自分の事務
所はマンションの管理対象ではなく、俺が管理するのだ
から管理費を払わない。敷地も自分の好きなように駐車
場として使い、欲しい人に駐車場として売って代金をと
って何が悪いのか? 自分の会社の駐車場をどのように
使おうが自分の勝手で管理組合に文句は言わせない。

そんなマンションで不動産業者の社長が死亡、息子が
相続をした。しかし個人開業の不動産業は閉鎖したが、
社長の女?が管理費を集めるだけで、管理行為を放棄
して3年目、ある部屋に雨漏りが始まったと居住者から
苦情が出た。社長が生きている時もほとんど組合の会議
は開いてこなかったが、この放置された3年の間に役員
も居なくなり、管理組合があるのかどうかも意識してい
なかったが、雨漏りの修繕が課題となり、集めた管理費
がほとんど見当たらない、修繕費が無いと問題が表面化
した。

相続した息子に責任があるのではと、どこまで息子自
身が自覚したのか、非居住の区分所有者として「自分は
素人でなにもわからないから」と、同マンションの建築
施工会社とそのグループ会社の不動産会社に相談、社長
の女には手切れ金を渡して田舎に返してから、不動産会
社が主導して、組合を再建するためにと臨時集会を開いた。

これから会計関係の資料を調査整理して、まとまり次第
会計報告を行うと約束し、暫定役員会を選出、毎回の理事
会に不動産会社から複数の「不動産の専門家」が出てきて、
まったく素人の5人の役員会をリードし、非登録マンショ
ン管理業者の不動産業者が事実上の管理会社として介入支配、
組合創立と管理業務の受託を提案するところまで理事会運
営を続けて来たのです。

一人の理事の計算では1000万円ほどの積立金が無け
ればならないはずなのに、貯金通帳には200万円弱の残
金しかないことに気づき、使途不明金の追求を始めたが、
回を重ねるにつれて、領収書は無いけれど次々に新資料を
出してきて、使途不明金は無いとの結論が押し付けられよ
うとしている状況に不信を募らせ、マンション管理相談会
に相談にきたのです。

マンション管理士が会社謄本等を取り寄せて調査してみ
ると、暫定役員会の会長が施工会社社長、もう一人の役員
が不動産会社の役員関係者であることが判明、あと一人は
何もわからない高齢者、そして息子本人で構成され、そこ
に不動産会社から毎回2~3人が参加し、不動産会社の会
議室で会議が進められていたことが明らかになりました。
 5人の役員のうち3人が本人及び不動産会社の関係者で
占められ、さらに不動産業者の社長部長などが毎回会議に
参加し、使途不明金など無かったとの結論を誘導していた
ことになります。

良くあることですが、販売会社がマンション販売に当たり、
元地主の関係者や建設施工会社や関連不動産会社の関係者
に買わせていた結果、売主が売っていないので俺のものだ
と主張する3室と1階建物内の駐車場分を含めると、
19室
+駐車場の区分所有者16人中5人が、売主及び不動
産会社の関係者となっていたのです。
 非居住の区分所有者が5人、その多くが、家賃収入が入る
ことでよしとし、管理費の行方にあまり感心を持ちません。

だからこそ息子はそこに相談を持ちかけた。相談された
不動産屋は、初めから不祥事、横領事件を隠蔽し、使途不
明金など無かったと結論付ける狙いを持って、暫定役員会
の人選、臨時集会を組織し、毎回の理事会に出席し、自分
たちに都合の良いように理事会をリードして来たことが浮
き彫りになります。
 また使途不明金隠蔽の報酬としてか、管理組合を牛耳る
結果か、この不動産業者が管理業務の受託を受けることを
臨時総会で承認させたのです。警察は証拠を持って告発す
ること無しには動かない現実がありますが、非登録業者の
マンション管理業務は懲役1年以下、罰金50万円以下の
刑罰を受けます。

区分所有法とマンション適性化法では、管理規約の変更、
訴訟の提起、その他重要事項の特別決議要件4分の3以上、
一般決議要件過半数の原則があります。4分の1以上が反
対すると物事は進みません。区分所有者が誕生した以上、
売主といえども1区分所有者であり、持分による議決権、
費用負担等、違いはありますが、その資格、権利義務は同
等です。管理費の使途不明事件や横領事件などは1区分所
有者でも訴えることが可能ですが、多数決原理で事柄が進
められたものに対し、一人で訴えること、刑事告発をする
ことはなかなか大変なことで、特別の勇気と費用と時間を
要します。不動産業界の闇が広がります。

相談事例2

72歳のご婦人が、管理費が払えないのです。どうした
らよいでしょうかとマンション管理相談に見えました。よ
くよく聞いてみると、一人暮らしで年金は月9万円、ロー
ンの支払いは終わっているが、セゾンカード、
MOCカード
ローンの支払いが毎月4万円弱あり、生活費を切り詰めて
いるが、管理費が払えないというのです。

生活保護を受けるには年金収入があり、毎月の医療費、
食料代など、全ての収入と支出のバランス表をその場で
作ってもらっているうちに、カードローンの支払いが無
ければ、管理費が払えるのですがと、弱弱しい声が聞こ
えました。

多重債務者の相談事例を話して、何時からどんな理由
で借り入れが始まり、これまでどの程度返済を続けてき
たかを聞いたところ、過払いの可能性が極めて高く過払
い金を取り戻す事から始めましょうと提案。弁護士費用
も払えないというのですが、過払い金の中から弁護士費
用を払えばよいこと、実費は法テラスからの借り入れで
毎月の分割払いが出来ること、若しくは弁護士受託通知
後の支払い分で経費が払えることを説明、弁護士事務所
を紹介して、手続きを終えました。「お金もさることな
がら、頭の重石が取れました。相談に来て本当に良かっ
た」と晴れ晴れとした顔でお礼を述べた老婦人の笑顔が
印象的でした。

相談事例3

マンション管理士も多数社員に抱え込んでいる超大手
のマンション管理会社、おそらく顧問弁護士も多数抱え
ているはずの大手の管理会社が、明らかに違法行為を行
っており、
HPでも堂々とその事業を自社の主力事業と
して華々しく宣伝し「マンション住まいの高齢者のニー
ズにこたえるサービスを提供」と自慢している会社があ
ります。

何人かのマンション管理士にその事業のパンフレット
を配布し、契約条項を研修課題として集団検討してみま
したが、このやり方は明らかに違法行為を管理組合に押
し付け、その事業で利用者に被害が起きたときは、管理
会社ではなく管理組合なかんずく管理者の責任であると
する、きわめて悪質なものであるとの結論を得ると共に、
なぜ大手の会社がこんなことをやるのだろうとの疑問に
は、会費が数百円の徴収というものだから、そのことで
提訴を受けることなど無いと見越して、違法を承知でや
っているのではないかとしか考えられないとの結論を
得たものです。

また行政の消費生活相談所窓口に持ち込んで相談した
結果でも、消費者保護法から見ても明らかに問題だとい
う解答を得ている事業展開をしているのです。

会費が300円としても、その管理会社の管理戸数は
約33万戸、30万戸が300円払ったとして9000
万円のビジネスですが、確かにマンション居住者、中で
も一人暮らしの高齢者には、300円くらいでそのサー
ビスが受けられるならありがたいと思う人が多いのでは
ないかとも考えられます。

その募集のやり方、集金の仕方が問題なのです。管理会
社と管理組合の共同名で、暮らしの困りごと、手助けの欲
しいことはどんなことがありますかとのアンケートを配り
回収する。電球の玉切れ交換、水道の水漏れ、トイレの
つまりの解消作業、日常の買い物協力から介護、保育に
至るまでの要望を聞きだし、その事業を管理会社の子会社
が請け負います。題して安心快適なマンション生活をサー
ビスしますというふれ込みです。

管理会社は管理組合と契約し、管理会社の子会社(運営
会社)のサービスの手配、取次ぎ紹介、利用ツールの提供
をするだけで、実際のサービス提供は、運営会社とは別の
サービス提供専門会社が行い、その専門会社の過失、義務
不履行により損害を受けた場合は、利用者が自らの責任と
負担で問題解決に当たり、子会社(運営会社)は問題解決
に努力するだけで、管理会社は責任を負わないとなってい
ます。
 そんな契約を、管理組合と管理会社の管理委託契約に含
めて、管理費に300円追加して徴収するというのです。

本来マンション管理組合も、管理会社も、マンション
の共用部分にのみ管理権限と義務を有し、専有部分に踏
み込むことが出来ないのが法の建前です。マンションの
管理委託契約に、専有部分への立ち入り、居住者の生活
そのものへのサービスを盛り込むことの対価として管理
費を当てることは、そもそも前提とされていません。

同水準の別の大手管理会社も、同様にマンション居
住者の生活上のニーズにこたえる事業を子会社を通し
て展開していますが、この良心的な?会社は、管理組
合との管理委託契約とは別に、管理会社の地位を利用、
あるいは有効活用し、組合の協力を得てマンション内
に別組織を立ち上げ、子会社と契約、会費を集めて、
居住者のニーズに応えています。

 


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