Dark matter, Hawking radiation, black holes,

Approaching the Identity of Dark Matter

その4・素粒子物理学の展望:日本の1

2024-05-04 | 日記

[IPNS workshop]素粒子物理の今と未来:Dec 21, 2023, 1:00 PM → Dec 23, 2023, 5:00 PM Asia/Tokyo

https://conference-indico.kek.jp/event/236/timetable/?view=standard_numbered_inline_minutes

『素粒子実験や宇宙の観測によってまとめられた素粒子標準模型や標準的な宇宙の歴史には、多くの綻びが存在します。

理論的に指摘されている真空の不安定性や、暗黒物質の性質、物質の起源などの根本的な問題に挑戦するために、多くの素粒子実験が並行して進められています。

国内では、Belle II 実験、ニュートリノ実験、Kaon、muon, neutronなど素粒子のフレーバーを手がかり新しい物理を探索する実験が進行中であり、国際的には最高エネルギー衝突実験であるLHC実験がヒッグス粒子の性質の測定や、新物理の探索を行なっています。

暗黒物質の探索は、従来からの巨大な測定器を使った探索実験に加えて、軽い暗黒物質を想定したダークセクターの探索が活性化しています。またミューオンg-2のアノマリーのように現在の標準模型では理解できない現象もあります。

本研究会をきっかけに、素粒子物理の現在・未来をあらためて俯瞰し、これからの素粒子・宇宙研究が進むべき方向を見出すことを目指します。

 会場は研究本館・小林ホール(定員248名)です。』

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『誰がためのエネルギーフロンティア¶
このような特別な催しに際して「好きなことを勝手に話す」機会を頂いたということで,お題の「LHC」を少しだけ逸脱して,通常の場ではほとんど扱わないテーマを問いとして掲げてみたい.それはこの方向性の「学問」が存立できる根拠(存立理由)を考えるということである.

この分野の数十年の発展が,一回きりの資源(例:新粒子の発見)を燃焼することで,幸運にも自己再帰的に次の爆発のdriving forceを生み出してきた構造(≒急激に増大するエントロピー)にあったことは否定しにくい.

それが今後も起こる「保証」がもはや失われた現在,問うべきは「内在的な情熱の熱源」をどこに求めるか,ではないかと思う.その熱源の熱量と,物理的に消費するエネルギー+労力のバランスが,フロンティアの到達点を定めると思われるからである.これから何かの戦略を立てる前に,われわれには,この分析・研究が不足していると思っているのだが,それを考えるための正しい方法論を,果たしてわれわれは持ち合わせているのだろうか?

Speaker: 生出 秀行 (KEK): https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4340/attachments/3262/4456/IPNS_WS_Future_EF_Oide.pdf :』

『誰がためのエネルギーフロンティア

• ハドロンコライダーで新物理の直接探索をやるにおいて,各論はいろいろあるが「原則としてできる探索は全部やる」という観点から,あまり大きな論点はない.
• ハドロンコライダーは背景事象が多いので,初期は全方位,ルミノシティが溜まったら,極力背景事象の少ないsignatureに注力する.
• 将来の実験計画で十分尽くされてない議論は,いわゆるorthodoxなCMS-like detectorを今後もやっていくのか,もう少しBSM-specificな測定器を設計するのか.
• 例:ATLAS HL-LHC UpgradeはWino/Higgsino探索を十分に優先しなかった
(最終的には高輝度の恩恵を受けるが,ヒッグスが最優先)
• 2個測定器を作るなら,1個はExotic signatureを視野に入れ,見つけにくいものを補完的に探すような測定器があっても良いと思う.

国民の信託を受けて研究を行っている
「きれいごと」では済まない

時代に取り残されるのではなく,スピリットとして時代を先取りするマインドが必要.
いわゆる「成果」なるものだけではなく,将来世代が生まれた時代を生きる希望を与える事業であることは「必要条件」

• ある計画のゴール(学問的価値)は「内側」の論理
• ある計画が成立するかどうか(社会的価値)は,「外側」の論理

30年後にプロジェクトをつなぐ

20世紀の通奏低音:国家,国際競争,ブーム
• 素粒子物理の発展は国際的にも戦後復興の経済成長と軌を一にしてきたが,1990年代にその流れはすでに終わった.
• 新しい言葉の登場:sustainability, resilience, inclusion
• 短期的な勝ち負けではなく,long-termへの指向:混迷の時代,悩み多き時代.
• 「弱みを見せれば負けてしまう」という時代もあったが,一方弱みのない人はいない.
課題に粘り強く向き合う姿は人々の共感を得る.
• サイエンスはLong-termの人類的な伝統文化であり,知性的な所業である.
• 時代の価値観にalignmentしないことはできない(さもなくば反社会的である)

エネルギーフロンティア次世代の「基幹」

宇宙開闢の先へ! 素粒子物理100年の計
真にグローバルレベルのコライダー計画の実現へ

次の10年の技術開発の動向が未来の選択を左右する 大いなる準備期間=基幹の「根」の醸成が最重要

• 遠い将来から見れば,現代も古代!!
• 首を傾げるようなこともあれば,驚嘆することもある.
• 「当時において技術 or 資源がないことは彼らにとって不幸であった」と評価されても,
「愚かであった」という評価は避けたい.
• 物理は不変なので,未来人にもこの時代の考えや議論は伝えることができる.
• 「弾丸列車」が「新幹線」に生まれ変わったように,時代状況が実現を許さないことがあっても,
世代を継いで夢が実現することはある.より先進の技術でプロジェクトを塗り替えることもある.

力の統一 、真空の安定性 、ヒッグス場とは?、物質反物質 、標準模型を超える新粒子、暗黒物質の解明』

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『LHCビーム軸方向でのニュートリノ研究および新粒子探索¶
LHCでは陽子・陽子衝突点の周囲に大規模検出器を配置した実験が行われているが、それらの実験ではカバーされないビーム軸方向での研究は進んでいなかった。我々はビーム軸方向での新粒子探索や3世代ニュートリノの研究による新物理発見の可能性に着目し、衝突点から480m地点に小型検出器を配置するFASER実験を立ち上げた。LHC第3期 (2022-2025) に実施しているFASER実験の初期成果、および並行して取り組んでいる高輝度LHCに向けた新たな大規模施設 Forward Physics Facility (FPF) 建設計画について議論する。

Speaker: 有賀 智子 (九州大):https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4341/attachments/3259/4453/20231221_%E6%9C%89%E8%B3%80_FASER_FPF.pdf 』

『LHCにて現在の加速器による最高エネルギーのニュートリノが生成される。
• 1980年代から検討されていたが実現されてこなかった。e.g.,
– A. De Rujula, R. Ruckl, Neutrino and muon physics in the collider
mode of future accelerators (1984)
• 我々はその研究がBSMのヒントになる可能性に着目し、3世代ニュートリノを測定するプロジェクトを立ち上げた。

• タウニュートリノ
– 直接検出例が限られ、詳細な測定がされていない粒子
– 反応断面積に大きな不定性
• 𝜈𝜈𝜏𝜏 ビーム実験: DONUT (Fermilab E872) にて9例
• 振動実験: OPERA, Super-K, IceCube

2018年に小型のニュートリノ検出器を設置してデータを取得 (パイロットラン)
• 膨大な背景事象を処理するために高飛跡密度での飛跡再構成アルゴリズム等の技術開発を行い、ニュートリノ反応候補を探索
• 主要なバックグラウンドである中性ハドロン反応と分離するため、反応点の検出においてtan𝜃𝜃 ≤0.1の飛跡が5本以上あることを要求
• 中性の反応 18事象を検出
– 期待されるシグナル 3.3−0.9
+1.7事象、バックグラウンド 11.0事象
– 幾何学的パラメータを用いた多変数解析により背景事象を分別し、ニュートリノシグナルによるexcessを確認
– null hypothesisを 2.7𝜎で却下
• LHCにおけるニュートリノ反応候補の検出を実現
• これによって、コライダーを用いた高エネルギーニュートリノ実験への道を拓いた

• 国際共同実験FASERは、LHCの陽子衝突点の超前方に検出器を設置して軽い長寿命の新粒子を探索することを目的として提案された。
– FASER (新粒子探索) は2019年3月にCERNの承認を受けた。
• その後、未開拓の高エネルギー領域での3世代ニュートリノの研究について、LHCでのニュートリノ研究を提案する論文およびプロポーザルを執筆 (日本人若手研究者らが牽引)
– FASER𝜈𝜈 (ニュートリノ研究) は2019年12月にCERNの承認を受けた。

FASER新粒子探索
• LHC陽子・陽子衝突起因の MeV-GeV 程度の質量を持った長寿命の新粒子を探索
• たとえば、ダークフォトン (A′)
– 標準模型粒子とダークマターとの相互作用を媒介する新粒子。フォトンと 𝜖′で混合。
– 中間子の崩壊 𝜋0, 𝜂 → A′𝛾 や dark bremsstrahlung 𝑝𝑝 → 𝑝𝑝A′ で生成。
– 480 m 進んで、A′ → 𝑒+𝑒− のように崩壊するものを探索。

FASER実験、FASER𝜈𝜈プロジェクトを立ち上げ、LHCビーム軸方向でのニュートリノ測定・新粒子探索を開拓してきた。現在、データ取得、データ解析中。初期結果を公表し始めた。』

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現代物理学の展望 記事一覧

https://archive.md/L5KrC