『CMB実験の現状と今後の展望¶
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の精密観測による物理成果は、宇宙物理学のみならず素粒子物理学においても歴史的に大きなインパクトを与えてきた。観測装置の向上や実験の大型化によって、CMBの偏光観測による宇宙のインフレーションやニュートリノの絶対質量等の重要な課題に大きな進展を迎えつつある。本講演では、現行のCMB実験の現状と将来計画の進展を紹介しつつ、それらの物理成果がもたらす宇宙・素粒子物理学の新展開に関して議論する。
Speaker: 櫻井 雄基 (岡山大): https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4351/attachments/3267/4464/IPNS_WS_CMB_Sakurai.pdf :』
『素粒子物理の今と未来: CMB実験の現状と今後の展望
初期宇宙と素粒子の関係性
「CMB実験から何がわかるのか?」
● 初期宇宙䛿クリーンかつ超高エネルギーな天然の実験場
● その痕跡をたどる最も高感度なプローブがCMB
● CMB 温度 → SM(ΛCDM)の確立
● CMB 偏光 → BSM !?
○ Inflation, Light relic, Dark matter …
CMB Polarization = Science treasure trove
インフレーションの検証
インフレーション由来の原始重力波を捉える → CMB Bモード偏光が最も高感度なプローブ
インフレーション探索の今
測定量 r: テンソル・スカラー比
○ インフレーションエネルギースケールの指標
○ 理論的に興味ある領域 :0.005 < r <0.1
インフレーションモデル
● シンプルなモデル (Large-field inflation) はすでにほとんど棄却済
● 有力候補:Starobinsky R^2 inflation (1980)
○ 修正重力論 f(R)のR^2項からインフレーションを導出
10-15年後のCMB Bモード探索
LiteBIRD (衛星) Forecast ℓ < 200
CMB S4 (地上) Forecast 30 < ℓ < 5000
原始重力波を新たな目とした 量子重力時代䛾幕開けとなるか!?
CMB実験から多くの素粒子物理学に関連する重要な科学成果がもたらされる
● 原始重力波検出によるインフレーション
○ 前人未踏の σ(r) < 0.001
○ Discovery or exclusion of large/intermediate inflation models
ex) Starobinsky R^2
Inflation, Higgs inflation, etc
○ 詳細なモデル選定 → 量子重力検証へ
● Light relics: σ(N eff) ~ 0.03, fermion or vector boson type
● ニュートリノ質量和: σ(Σmν) ~ 25 meV, 階層性の決定感度
● 現行実験䛾データが続々と出始めている → 数年以内に乞うご期待!
● 将来計画も着々と進行中、今後10-15年䛾結果で大きな変革を迎える。』
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『観測的宇宙論: 大規模銀河サーベイの現状と将来(zoom)¶
宇宙マイクロ波背景放射の精密測定を始めとする天文学観測技術の飛躍的な発展によって、宇宙のエネルギー密度のうち、既知の物質はたった約5%しかなく、残りの約26%は未知の物質である暗黒物質、約69%は加速膨張を引き起こす未知のエネルギーである暗黒エネルギーであることがわかった。宇宙の暗黒成分の正体を探るため、世界中で多くのサーベイ観測が実行・計画中である。宇宙の大規模構造は暗黒物質による引力と、暗黒エネルギーによる加速膨張とのせめぎ合いの下で形成される。よって、大規模構造の時間発展を測定することで、暗黒成分の性質を調べることができる。本講演では、すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Camによる広視野深宇宙サーベイデータの弱重力レンズ効果精密測定による最新の結果を中心に、他の競合するサーベイの成果や将来計画について解説する。
Speaker: 宮武 広直 (名古屋大): https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4355/attachments/3276/4474/galaxy_survey_miyatake.pdf :』
『観測的宇宙論
大規模銀河サーベイの現状と将来
H0テンション
• Ia型超新星: 距離梯子に何を用いるかによって結果が変わる。
• 距離梯子に依存しない測定(time delay, 重力波)の結果が待たれる。
大規模構造の進化による標準宇宙論の検証
ΛCDM標準宇宙論における5つのパラメータ:
Ωm• : 現在の物質のエネルギー密度
σ8• : 現在の宇宙構造の凸凹度合い
S8=σ8*sqrt(Ωm/0.3)
S8テンション
Abdalla et al. (2022), SNOWMASS
後期宇宙
初期宇宙 CMBの揺らぎ
弱重力レンズ
(cosmic shear)
弱重力レンズ+
銀河クラスタリング
銀河クラスタリング
銀河団個数カウント
赤方偏移歪み
CMB 大規模構造
• 大規模構造の測定には理論・測定の系統誤差あり。
• 異なる測定は異なる系統誤差を持つにも関わらず小さいS8 をprefer(「好む」や「選ぶ」)しているように見える。<--凸凹度合いが小さい??
チャットGPT
S8の値が大きい場合、密度ゆらぎの振幅が大きくなります。これにより、以下のような効果が生じる可能性があります:
・大規模構造の形成の促進: S8が大きいと、密度ゆらぎの振幅が大きくなります。これは、銀河や銀河クラスターなどの大規模構造がより速く形成される可能性があります。密度の高い領域がより速く重力によって集まり、宇宙の不均一性が増加することが予想されます。
・宇宙マイクロ波背景放射の異方性の増加: S8の増加は、宇宙の大規模構造の形成によって宇宙マイクロ波背景放射の異方性が増加する可能性があります。これは、宇宙マイクロ波背景放射に含まれる温度のゆらぎが増加し、それによって宇宙の構造がより複雑になることを意味します。
・重力レンズ効果の増加: 密度ゆらぎの振幅が増加すると、重力レンズ効果も増加する可能性があります。これは、光が密度の高い領域を通過する際に曲がる効果であり、宇宙の不均一性を観測する手段の1つです。
これらの効果は、S8の値が大きい場合に生じる可能性がありますが、具体的な効果は宇宙論的モデルや他のパラメータにも依存するため、一般的な効果を正確に予測することは困難です。』
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『重力波と天体と新物理¶
連星ブラックホールや連星中性子星が合体する際の重力波はLIGOを筆頭に地上重力波検出器によって多数検出されており、近年ではパルサータイミングアレイが低振動数での重力波背景放射の兆候を報告している。特に連星が関与する天体物理は不定性が大きく、いずれの重力波信号も標準的な物理で想定される天体物理のシナリオと整合的だと理解されている。今後は天体物理の理解自体が重力波の観測結果を参照する形で進み、整合性はより顕著なものとなり、翻って新物理が許される余地も限定的となることは一つのありうる未来であろう。本講演では、精密観測が得意とは言い難い宇宙観測の一つである重力波観測から、将来的にどうすれば新物理に迫ることができるか議論する。
Speaker: 久徳 浩太郎 (京都大): https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4349/attachments/3269/4466/kyutoku_KEK231222.pdf :』
『理論的に:
超大質量ブラックホールの連星合体を見ることで環境効果から暗黒物質の性質に迫れるかも?
実験的に:
新しい検出原理に基づく検出器を開発することでまだ狙えていない振動数領域を開拓できれば?
今では>30太陽質量も可能という研究も複数ある
観測に合わせて理論が更新されるのは健全ではある
パルサータイミングアレイ (PTA)
重力波の速度
GW170817は40Mpc=1.2億光年の遠方で合体したが
ガンマ線は重力波の1.7秒後にやってきた
1.7秒/1.2億年=0.0000000000000004
重力波は電磁波とほとんど同じ速度で飛んできている
重力波による宇宙論
宇宙の膨張速度、Hubble定数が新たに測定された
𝐻0 = 70^−8+12 <--中間に落ちている!!
Hubble定数問題
初期宇宙観測で得た値と近傍宇宙での値とが有意に違う(とされている)
未知の物理?
宇宙モデルの変更?
観測の系統誤差?
重力波で独立に検証!』
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現代物理学の展望 記事一覧