クリアファイルのその中は

何気ない毎日は、何気なく良い。

重い想い

2013-02-26 20:17:32 | 日記
私が父の会社をとりあえず継いで、数年経ったら弟(私の甥にあたるのだが)に会社を任せる。

それが父の描いていた青写真だったと思う。

でも私は仕事を放棄し、離婚までして縁もゆかりも無い遠い奈良に逃げ込んでしまった。

諸事情は勿論あるが、逃げたということに変わりはない。
それが私が一生背負う負い目だ。


盆暮れには帰省したが、その度に「帰ってこい」としか両親は言わない。
しごく当たり前のことだ。

父はいつも私の頭をコツンと叩き、
「このダラ娘」(富山弁でダラはバカのこと)と笑っていた。

本当はコツンではなくゴツンと思いきり叩きたいだろうに・・・と、哀しそうな笑顔を見る度に思ったものだった。


その父が、先週本当にあっけなく逝ってしまった。
文字通り「突然死」・・・大動脈が破裂して一瞬で。
恐らく本人も自分が死んだとは気が付いていないでしょうと、看取った医師が言っていたそうだ。

父の遺志で密葬にしたが、準備や親戚の接待で気忙しくして哀しむ時間を減らした。
そうでもしないとおかしくなりそうだった。


最後の別れの時、家族それぞれが頭をなでたり、握手したり・・・
思い思いのお別れをした。

私も父の冷たい手をとり、私の頭をコツンと叩いてもらった。
帰省した時の私と父の別れの儀式。
そうやっていつも奈良に帰っていったのだから。

でも、悔しい事に、そのコツンにはただの手の重みしか感じられなかった。

悔しさやはがゆさ、そして私を想う気持ち・・・いつも温かい親心を私は楽しんでいたのに。


その時初めて思えた。

父は逝ってしまったんだと。


しばらくは後処理で富山と奈良を行ったり来たりの生活になる。

その度に、もう父は私の頭を小突いてくれないことがどんなにか寂しいか・・・

それを乗り越えられた時、本当の意味で父の死を受け入れられるのかもしれないな、と思う。