頑固爺の言いたい放題

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森友問題:忖度はあったか?

2018-05-09 15:49:44 | メモ帳

森友問題で野党が描くストーリーは「安倍昭恵氏が関与したことで、役人が安倍首相に忖度し、小学校建設用地を不当に安く売却したのだから、安倍首相はその責任を取って退陣すべだ」というもの。この問題はまだ燻っているようだ。

野党が主張する「忖度」が実際にあったのかどうかを調べるために、経緯を時系列に概観してみよう。なお、この経緯は「官僚とマスコミは嘘ばかり」(高橋洋一著、PHP新書 2018年4月27日発行)に掲載されているものに私(頑固爺)が手を加えたもの。

H21~H24 国交省大阪航空局は、この土地の地下に埋蔵物(廃材、コンクリート殻など)があることを認識。

H22 当該土地 (8770平米) に隣接する、同じような地下埋蔵物がある9492平米の土地を豊中市に142,300万円で売却。後日豊中市に14億円の補助金が交付されたので、ネット売却額は2,300万円だった。すなわち98.38%の大幅値引きである。なお、この土地は後日、野田中央公園になった。

H25 6月 大阪航空局は近畿財務局(近財)に当該土地の処分を依頼し、近財は取得希望者を公募した。同年9月、籠池氏が森友小学校の用地として土地取得の意向を表明。

H25 10月~H27 1月 大阪府私立学校審議会が審査し森友小学校設立を認可。

H27 5月 森友学園(籠池氏)が貸付契約を締結(但し買受特約付き)。その契約は、正常な土地に対する賃料である年間4000万円から2730万円に減額するもので値引き率68%)値引きは地下埋蔵物の撤去費用に充当するものであった。

H27 11月 総理夫人付き事務官がファックスで財務省に問い合わせ。

H28 3月 籠池氏は杭打ち込み工事の際に、新たな埋蔵物を発見したことを近財に報告。同年5月、正常な土地とした場合の鑑定額9億5600万円から、地下埋蔵物の撤去費用見積り8億2200万円を値引きし、1億3400万円で売買契約締結。値引き率は86%

 ●H29 森友小学校設置申請取り下げ、売買契約は自動的に消滅。

上記の経緯をレビューして「忖度」があったかどうかを推測してみる。

総理夫人付き事務官が財務省にファックスで問い合わせた平成27年5月の時点で、森友学園と近財の貸付契約はすでに締結されていた。したがって、「忖度」があったとすれば、貸付から売買に契約条件が変更された時であるはず。すなわち、9億5600万円から1億3400万円に値引きされた時である。

賃貸契約には買受特約条件がついていたが、「買受特約」とは買い手に独占交渉権を与えることを意味する。それでも売り手と買い手の力関係が均衡していればノープロブレムだが、状況はそうではなかった。すなわち、H27年5月に締結された賃貸契約では、地下埋蔵物があるために賃料が68%に値引きされており、これが売買にも適用される値引きの目安だったはずだが、H28年3月に籠池氏が「新な埋蔵物を発見した」ことから力関係のバランスが崩れ、それ以降は籠池氏によるワンサイドゲームになったと思われる。つまり、売り手の近財には「忖度」する余地はなかったのである。

さらに、近財はH22に豊中市に売却された土地が実質98%引きであったことを知っていたはずで、籠池氏との交渉においても同様の大幅値引きを覚悟していたのではなかろうか。それが結果的に86%引きで決着したのだから、近財としては上出来だった。籠池氏が豊中市との取引のネット売却価格を知っていれば、9億5600万円×2/100= 1912万円を主張したと想像する。

ところが、朝日新聞が平成29年2月9日に「当該土地の売却額は近隣国有地の10分の1…同小学校の名誉校長は首相夫人」と報じたから大騒ぎになり、「忖度だ」という野党の勘繰りにつながった。朝日が14億円の補助金交付を知らなかったのは迂闊だが、野党も朝日の報道を鵜呑みにして、裏付けをとらず突っ走ったのはお粗末だった。

さて、高橋洋一氏は「官僚とマスコミは・・・」の第1章(35ページ)で、「近畿財務局はゴミ(地下埋蔵物)を撤去してから、入札にかけるべきだった」と述べている。それは正論だが、近財(または大阪航空局)には別の思惑があったのではないか。それは

(1)   地下にゴミがあっても構わない買い手(例えば、運動場を作りたい人)がいれば何億円かの撤去費用を節約できるという欲をかいて、それが裏目に出たのではなかろうか。

(2)   ゴミが蓄積されるのを放置したのは大阪航空局の怠慢であり、撤去費用の予算を申請するとその怠慢が表面化するので、保身のために予算申請を憚ったのではなかろうか。

いずれにせよ、近財(もしくは大阪航空局)の落ち度であることには変わりないが・・・。

ところで、不思議に思うことは、ゴミが蓄積された原因を誰も議論しないのはなぜか、である。伊丹空港の航空機発着による騒音被害が発生し、運輸省(当時)が土地を買い上げることになったとき、が絡む大騒動になったらしいが、それでもゴミの蓄積を放置した責任は究明されるべきだ。筋が通らぬ話である。