Sing Listen Travel 〜歌って、聴いて、旅をして〜

リタイアしてやっと自由を手にしてから、海外を旅行し、合唱を歌い、オペラやコンサートに通っています。

素晴らしいモーツァルトの、宮本亜門さんの、魔笛

2021-09-12 22:59:00 | 東京二期会オペラ
今日は二期会「魔笛」で東京文化会館。宮本亜門さんの新演出なのですごく期待し。ダブルキャストは盛田さんが大好きなので今日を選んで。

失業でヤケを起こしたパパが立ち直って、修復したウチに帰ってきたら、子どもたちとお爺ちゃんも元気で。
そしたら愛想尽かして出ていったママが戻ってきて、のエンディング。
思わずホロっとして涙が滲んだ。

宮本演出の詳細は数日前まで、現代劇風にする位しか知らなかったのですが。
2015年東京公演の頃のインタビューを読んだら、ちょっと衝撃でした。

http://www.nikikai.net/enjoy/vol301_04.html

オファーされたリンツ劇場側への初プレゼンの日のことですが。

「........プレゼンのあとホテルに帰り、もう一度ゆっくり『魔笛』のCDを全曲聴きました。そしたら、もう涙ぐんでしまいました、彼は何と深い人類愛に満ちていたのかと。モーツァルトが目的としていたのは、フリーメイソンに、見事に愛情をもって人間的にぶつかっていくことだったのかもしれないと思った....。
......“人間はそんなに強くない、本当はこうじゃないの”“人間には、男や女がいて、共に生きていく事こそ、意味があるのでは”と考え、『魔笛』を創ったのではないかと。
すると彼の一生懸命さ、人に対する真摯な態度に感動し、僕の涙は喜びに変わったのです」

宮本さんがさまざまな思考を重ね、全身全霊で、新演出を書いていった凄まじさを垣間見た思いで。
そしてぼくはこれまで、魔笛をどんな感じで観てたのか、観てなにを思ったのか、って思った。

で、エンディングで思ったのは、愛が家庭や人類の危機を救うだろう。道徳や正義が世の中の不正や邪悪に勝つだろう。
それを信じたい、ってこと。

序曲の間に、ぼくらは、失業、諍い、夫婦の確執、子供たちの反抗などで家庭が崩壊していくのを見せられます。
そして1幕から3幕で、パパのタミーノとママのパミーノが、さまざまな困難に直面し、あがき、苦しみ、それを乗り越えていくプロセスがある。
このような困難や試練は、オペラ初演の1791年でも2021年にも、変わらずある。
そして人間には、人類には、それらと闘い、のり超える力が有る。
今日の魔笛を、ぼくはこんな風に観た。

さて歌手の皆さんのこと。
盛田さんは、歌はいつも間違いないけれど、今日は芝居がうまくなったなぁと。これならまたオファーが増えるでしょう。楽しみです。
市川さんのタミーノは実質今日のタイトルで、歌も芝居も良かった。
近藤さんのパパゲーノもすごい演技で観せた。ザラの斉木さん、存在感たっぷり。河野さんは芝居がホントうまい。女王の高橋さん、侍女の角南さんらみんな芸達者で、3人の子どもたちとっても良かった。ありがとう。

そしてマエストロ・シュレキーテの読響の奏でるモーツァルトは、瑞々しく、美しく。
素晴らしいモーツァルトの、宮本さんの、魔笛、でした。



































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