(スーパーでの牛肉コーナー。オーストラリアのものが多く、アメリカ産は少数)
2003年12月、アメリカでBSE(牛海綿状脳症)が広がったため、台湾はアメリカ産牛肉の輸入を停止、2005年に一度解禁したが2ヵ月後には再びBSEで輸入を禁止した。その後、2006年1月に生後30ヶ月以下の牛の肉で骨のついていないものに限って輸入を認めている。アメリカ側は当然、全面的な輸入解禁を求めており、馬英九・総統は今月13日、アメリカからの訪問団と会見した際、アメリカ産牛肉輸入解禁について、「台湾とアメリカの考えは大変接近している」と述べ、早期の輸入解禁を示唆した。
立法委員(国会議員)はただちに「民意代表」として、政府に対して国民の「食の安全」をいかにして守るかを問いただした。行政院の朱立倫・副院長(行政院消費者保護委員会の主任委員も兼務)は14日、「消費者の権益は損なわない。韓国より甘い基準で輸入解禁はしない」と回答。外国との相対的な基準で安全が保障されるかのような言い方は、いかにも「政治家」らしく頼りない。さらに、朱・行政院副院長は、「管理を厳しくしすぎるとアメリカとの経済貿易面での関係に不利な影響がある」と正直な発言も。
そもそも、馬英九・総統は13日、アメリカ産牛肉輸入の全面解禁に触れると同時に、アメリカに対して「容疑者相互引渡し協定締結」や「入国ビザ免除措置提供」を求める考えを重ねて示している。つまり、馬・総統はアメリカに対して、「牛肉輸入は解禁するのでこちらの要求も忘れるな」というメッセージを送ったのだ。
牛肉の輸入解禁問題もすでに食の安全問題から、外交カードの一枚と化している。民間団体の中華民国消費者文教基金会では15日、政府の検査能力を疑うコメントを発表、解禁する前に海外での厳格な検査を行うよう主張した。外交にギブ・アンド・テイクは付き物。しかし、改めて考えてみると、こと「食の安全」や国民の健康問題が取引の道具になることには違和感を感じざるを得ない。(U)