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金馬奨、「中国」色濃厚も『あなたなしでは生きていけない』が四冠

2009年11月29日 23時48分59秒 | 芸能

(四冠で気を吐いた『不能没有你』のレオン・ダイ監督。資金面だけでなくロケ地として協力した高雄市と高雄市民に感謝した。テレビから)

台湾のアカデミー賞、第46回ゴールデンホース・アワード(金馬奨)の授賞式典が28日夜、台北県県政ビルで行われた。ゴールデンホース・アワードは1962年からで、華人社会において最も長い歴史を持つ映画賞だ。中国大陸とは政治的な問題のため2000年まで交流は少なかったが、台湾はもちろん、香港の映画界からも重視されてきた「華人映画の最高栄誉」である。今年のエントリー作品は113本。三段階の審査を経て24の賞が授与された。主催者は財団法人中華民国電影(=映画)事業発展基金会で、執行は台北金馬影展執行委員会が担当する。今年の委員会主席は1989年、『悲情城市』でベネチア国際映画祭グランプリを獲得した名監督のホウ・シャオシェン氏。

(会場では一年一度の華人映画の祭典に関係者が集う。テレビから)

(キラ星のように並んだ台湾の映画監督ら。右から周錫瑋・台北県長、ホウ・シャオシェン監督、行政院新聞局長、朱延平・監督、アン・リー監督、李行・監督)

ゴールデンホース・アワードではこのところ、中国大陸の作品がエントリーされるようになってきており受賞作も少なくない。昨年の最優秀主演男優賞は中国大陸の作品『集結号』で中国大陸の俳優、張涵予が受賞した。エントリーの資格は作品の台詞の半分以上が中国語(方言含む)であること。監督が華人で、主演助演男女優、脚本、撮影、音楽、美術のうち半分以上が華人であること。資金の出所についての制限は無い。また、政治的な問題はもはや過去のものといった傾向が今年はさらに強まった印象で、有力作品の多くが中国大陸のものだった。
そんな中、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀オリジナル脚本賞をさらったのは、「純台湾」の『不能没有你(あなたなしでは生きていけない)』。台湾の性格俳優として活躍、監督としては三作目のレオン・ダイ(戴立忍)監督が台湾勢として一人気を吐いた結果となった。

(授賞式の合間には台湾の実力派シンガー二人による映画主題歌メドレーも。左からアスカ・ヤンとスカイ・ウー。テレビから)

全編白黒で撮られた『不能没有你』は、2002年、父親が幼い娘をかかえて歩道橋から飛び降りようとした事件を題材にした社会派作品。現代社会と行政の不合理さ、非情さを淡々と批判、日本の川口スキップシティ国際シティDシネマ映画祭でグランプリを獲得するなど国際的にも評価が高い。最優秀監督賞で、ホウ・シャオシェン監督、アン・リー監督(『ブロークバックマウンテン』でアカデミー監督賞)、スタンリー・クワン監督、ジョニー・トウ監督の台湾と香港の名監督4人からトロフィーを受け取ったレオン・ダイ監督は感激でしばし絶句。両親に感謝すると共に、かつて師事した故エドワード・ヤン監督(ホウ・シャオシェン監督と共に台湾ニューシネマを作り出した)らの名を挙げると共に、審査員が「大胆な決定をした」と喜んだ。

(最優秀監督賞を手にしたレオン・ダイ監督は絶句。テレビから)

(『不能没有你』の脚本は写真の陳文彬氏とレオン・ダイ監督の手による。陳氏はダイ監督に企画を持ち込んで主演を依頼したが、ダイ監督は監督を引き受けて陳氏が主演することに。テレビから)

『不能没有你』は台湾の資金、台湾の俳優、スタッフで製作された「純台湾」の作品。(台湾の作品に与えられる、台湾映画年度傑出作品も受賞して四冠)他の作品の多くが香港や中国大陸、さらにはフランスなどが資金やスタッフを出し合った合作映画であるのに対し、台湾で行われる映画祭として面子を保った形となった。しかし、俳優たちに与えられる賞はすべて中国大陸と香港にさらわれ、ステージでも北京なまりの中国語が目立った。また、恒例だった、海外からのプレゼンテーターが招かれておらず、「中国」の映画祭というイメージが強かった。
ゴールデンホース・アワードはこれまで、華人映画最高栄誉とされながら、実質的には台湾と香港の映画から最高の作品を選び出すコンクールだったように感じる。中国大陸の作品もどんどんエントリーされるようになり、本当の意味で、「すべての華人映画の祭典」となっていくのだろうか。

台湾の社会問題を真っ向から描いて見せた『不能没有你』の受賞は大いに評価されるものだ。しかし、「すべての華人映画の祭典」であるならば、台湾の映画人の受賞は今後減っていく可能性があるのでは。中国大陸の映画産業は驚くべきスピードで発展しており、今やハリウッドに追いつけ追い越せの勢いなのだ。
ゴールデンホース・アワードをかつて主催した行政院新聞局は現在も「指導単位」で一定の影響力を持つはず。また、先ごろ中国大陸を訪れた与党・国民党の蒋孝厳・副主席は、「中華人民共和国」の「建国」を描いた中国大陸の映画『建国大業』を「客観的だ」と称えたことがわかって物議をかもした。政府が先頭に立って中国大陸に接近していく中、台湾の映画人はどこで何をしていけばいいのか。今年の授賞式典を見た台湾の人たちはそんな感想を持ったのではないだろうか。(U)

主な受賞作品・受賞者リスト
最優秀作品賞 『不能没有你』
最優秀監督賞 戴立忍 (『不能没有你』)
最優秀オリジナル脚本賞 戴立忍・陳文彬 (『不能没有你』)
最優秀脚色賞 管虎※ (『闘牛』=中国大陸)
最優秀主演男優賞 張家輝 (『証人』=香港)、黄渤 (『闘牛』)
最優秀主演女優賞 李冰冰 (『風声』=中国大陸)
最優秀助演男優賞 王学圻※ (『梅蘭芳』=中国大陸・香港・台湾)
最優秀助演女優賞 恵英紅※ (『心魔=』マレーシア)
最優秀新人賞 余少群※ (『梅蘭芳』)

※管虎、王学圻、余少群は中国大陸。恵英紅は香港。

(最優秀主演男優賞は史上初の二人同時受賞。左から香港の張家輝、中国大陸の黄渤。台湾の俳優が受賞したのは1999年が最後。テレビから)

(最優秀主演女優賞は中国大陸の李冰冰。台湾の女優が受賞したのは2005年の舒が最後。テレビから)

 (昨年の大ヒット作『海角七号』の魏徳聖・監督、ビビアン・スーもプレゼンテーターを。テレビから)

(台湾出身の国際女優、舒と香港の二枚目、呉彦祖。テレビから)

(左から台湾の若手スター、エディ・ポンとアイビー・チャン。台湾映画『聴説』のコンビだ。テレビから) 

(10月に中央放送局の番組に出演したレオン・ダイ監督。NHKで放送された台湾のテレビドラマ『ザ・ホスピタル』で野心旺盛な心臓外科医を演じている)



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