
タンノイ・ヨークにセットした『TVA-1』は、英国Michaelson & Austin社が1979年に初めて発売し、パラビッチーニ氏の設計回路と言われている。
ドイツのケルン・オーディオショーに出品され、管球アンプの黄昏れ時代に世界をあっと言わせた。
選りぬかれたGEC製KT-88出力管と巨大な特注トランスによって出力70+70W、
多くのタンノイフアンが好んで使用する。
今回のトラブル12AX-7球は、メーカーは「それ、消耗品です」ともっともであるが、
自分の使っていた5751球が、なぜか聴き良く、他の球には出せない音がする。
そして今回、
同じ製造の5751球に差し替えたところ、新しく非常にまともな音になって結構だが、
当方はあの壊れた球のほうが良い。
失ったモノの個性に初めて気が付いた。
真空管は長く使っているうちに、かってにセルフコントロールを心得て、
こちらの耳と相談し換骨溶解していたのかもしれない。
音楽は、いろいろな『12AX-7』が、別の演奏をしている。
先日お見えになった客人が、
「自分のクオードのタマもGECです」と、念を押されていたが、
必ずや、そうとう良い音で鳴っていることが想像されて、
低音が勝手に隣家で鳴っているようです、と困られた表情が良かった。
川上と この川下や 月の友