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ロイス・タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

SS氏の須川岳

2022年01月25日 | 写楽人のお話


Royceのあるところから周囲を365度見回して、
一番遠くにあって高い山が須川岳である。
丑寅の方角から45度にある高い山の、
頂上から下界を見渡すとき、どんな気分になるかな。
腸をこわして3ヶ月絶食したあのとき、病院のベッドで考えたのは
タンノイではなく、カツ丼であったことは内緒だが、
やはり、その場に立たなければ人間はわからない。
SS氏は、半切に引き伸ばした写真を、アタッシュケースから
取り出しながら、先日のバカラデキャンターのことを、
「あれはすばらしかった 」 と申された。
琥珀色の中身のことを、申されているのかもしれない。
写真は、須川山頂から眺めたROYCEの方角が、
絶好の写真日和に写されて、中腹に神秘の昭和湖が見えた。
須川岳という被写体について、以前から多くの写真家が挑戦されているが、
一関では白川義員氏に迫るKS氏の存在がある。
当方は、SS氏も必ず須川岳を撮っていると考えて、その日の来るのを
心待ちにしていたから、内心非常に喜んだ。
10枚ほど拝見した限りにおいてのべれば、
KS氏の肉薄する迫力の作風と違って、
双方ベストアングルでありながら、おだやかな構図と
遠近感が、SS氏の画面に広がっている。
ジャズに例えれば、KS氏がブルー・ノート、
SS氏はimpulseということになろうか。
コーヒーを喫しながら、撮影にまつわるさまざまを伺った。
きょうの昼食は、到来モノの島原素麺をいただいた。
2010.10.1


『アニタ・オディ』

2022年01月23日 | 写楽人のお話


マーティ・ペイチ楽団を唄伴にしたアニタ・オディのスケールは、
壁全体にステージが広がって、大掛かりなサウンドが花である。
58年のクラブ、ミスター・ケリーズを聴くと、トリオで音像もぐっと接近し、
ラリー・ウッズのベースが、ウォルター・ペイジの剛弦ベースのように唸って、
バックロードホーンは凄い。
62年のスリー・サウンズと手合わせしたLPは、唄伴というより交互に
マイペースを聴かせる嗜好がおもしろい。
四枚のLPを聴いて、アニタ・オディの音像をこころゆくまで楽しんだ。
しかし、あるとき偶然、スタジオでコマーシャル用に唄う
フルスイングしているまったく別人のアニタ・オディを
マッキントッシュ・アンプで聴いて、唖然とした。
まるで腕まくりした姉御のアニタの巨体が、タンノイの前で、
豪放に唄っていたのである。
これはいつのまにかついに臨界すらこえて、
ノーブレス・オブリージェになったのかアニタ・オディは、凄い。
しかし、いまもって一番のものといえば、やっぱり56年に
ピーターソンが唄伴をつとめた『シングス・ザ・モスト』 かな。
B面ラストの三曲をタンノイで聴くと、ゆっくりした時間がまどろんでいる、
アニタとピーターソン・トリオの独特の雰囲気が気分である。
夏もいよいよ峠を越えたドアに現れたのは、
「通路の散水弁から水が少々漏れていますが 」
紺色のシャツで決めたSS氏であった。
南三陸の観光船に乗って、夏を撮った海鳥の飛翔の一枚を、
それとなくチラリとテーブルの上にすべらせたSS氏。
写識が遺憾なく発揮されている、後方に飛ぶ一羽の構図も、
唄伴のようで見蕩れた。
しばらく感心するとSS氏は、
「まあ、それほどでもありません 」
ご謙遜である。
2010.9.12
手に入れたいスピーカーが、まだ3つあることに、
気が付いた。

SS氏の蒸気機関車

2021年11月24日 | 写楽人のお話


いまでは、東北本線に蒸気機関車を見ることは、まれである。
SS氏は、記念運行の現場を逃さず撮った。
正面のプレートが、どうして鮮明なのか考えたが、
線路のコーナーに並ぶ撮影集団のフラッシュの照り返しなのか。
機関車は、黒い煙りの背後に白い蒸気を大量に吹き出させて
激しく長く汽笛を鳴らし、団十郎のように一世一代の
見得を切った一瞬のことである。
この写真をみて、なぜか数学の教師の言葉を思い出す。
「オレは列車通学だったから、放課後に先生が熱心に
質問に答えてくれるのはよいが、
最終の汽車が通って行くのが教室の窓から見えて、あのときは、
あぁぁ...とあせったね。
それでおまえたちに、遅くまで教えないことにしている 」
ニューヨークなら、『A列車で行こう』だが、日本では、
線路は続くよ、どこまでも...というフレーズを、
華々しくアレンジするクインシー・ジョーンズの筆さばきを想像してみる。
演奏は、マイルス・クインテットか、ウッディ・ハーマンにお願いするのが良いのでは。
2009.12/5

メイティング・コール

2021年11月24日 | 写楽人のお話


新幹線の橋脚の下の小さな秋を、
散策途中のSS氏はジャズ風に撮った。
――これはすごいネ。良い腕だネ。
感心すると、
「いやぁ、そんなァ。褒めすぎだから...」
といってSS氏は、ポケットからウーロン茶のボトルを出して、
ちゅっと飲む。 それとも、呑む、かな。
このシーンに聞こえてきそうなジャズは?
ラウンド・ミッドナイトかソウルトレーン(メイティング・コール)
がよいのではなかろうか。
モンクのラウンド・ミッドナイトは、『アット・ザ・ブラックホーク』の演奏があったが、
ペッパーの『再会』やウエスの『ソリチュード』も品書きの上位にあり、
ケニー・ドーハムの『カフェ・ボヘミア』で聞かせる演奏が印象的で、
エヴァンスでは『トリオ65』の陰影がよろしい。
一通り聴いたあとで、
バイタボックスで聴くとどうかな? ふと考える。
2009.12/2

SS氏の厳美溪

2021年10月27日 | 写楽人のお話


SS氏は、あるとき磐井川の上流の名所、
厳美溪にいた。
厳美溪も暦を巡れば、増水期と
渇水期がある。
磐を抉る激しい奔流が、いっとき静まって、
隠れている風景が現れる。
いつもなら立ち入りできない岩棚の
低いところまで下りたSS氏は、逆の方向からレンズを向けると、
空中の あるものの登場を待つ人々をめぐる光景を撮った。
さらに上流の、荘園遺跡も
作品を見てみたいものである。
2009.11/15
水沢から登場の客人は、四国の学者パンドラボックス氏に、
話し方まで瓜二つで驚いた。

二本松市の客

2021年09月23日 | 写楽人のお話


「ジャズはやっぱりハード・バップ」と申されるご婦人連れの客人は、
大捨流の剣豪丸目蔵人といった風圧でロイヤルの前に座った。
ご自宅に、タンノイ・スターリングによってジャズからクラシックから、
汲めども尽きぬ美音の世界があると申されて、
カラスのアリアや、こちらのとうていおよばない秘蔵盤の一端を伺う。
タンノイ・ロイヤルも、いつにもまして大電流が流れているような。
午後から川向うの本陣に向かわれるそうである。
二本松市と聞いて、この季節の湘南の『油壺』に撮影に行ったことがある。
海を背景にしたスチールがよいなぁと思い立って、難解なその女性に
「こんど、どうです」
さいわい、波の高い入江の岩場に三脚を構えることができた。
おおぜいの海水浴客も片々に、マリーンに出入りする大型ヨットの舳先が
波を分けて目の前を横切ってゆく。
昼になったので、眺めのよいレストランで昼食をとった。
軽音楽を耳に食後のコーヒーをゆっくり、全面ガラス張りの
外に広がる青い外洋を見渡していると、
景色の左に聳える高層の建築物が目に入ったのだ。
「あんなところにホテルがある? 」
誰が泊まるのだ。
しばらくして彼女はいつもの快活ぶりと違う、小さな声で言った。
「きょうは、遅くなってもいいんです」
ああそうなの。
そこに深い意味はあるはずも無いのだが、
幼少は二本松市ですと言っていた記憶の、言葉の万葉集か。
『WALKIN』録音の後、ホレス・シルヴァーはジャズ・メッセンジャーズを組み、
マイルスは新しいコンポを組み、クラークはパリへ。
みな蠢動するサウンドの新境地にむけて旅立ったので、
豪華メンバーの最後の演奏になったワンダー・ワールドを聴く。
2009.7/12


青葉城下

2021年09月04日 | 写楽人のお話


冬の朝、ロ短調でシェービングする。
ふと先日のFM番組の記憶が思い起こされて、
エッセンスで繋がっていく話に耳をそばだて、時の針が早かった。
松岡正剛氏や、オーディオ・マニア立花氏のとき、
伊藤喜多男師など、どのような展開になるのかな、と思う。
この間、伊達藩にいて、所用の合間に激戦のファミレス峠の茶屋で、
五品690文のお膳をいただいて、また深夜のスーパーにて、
寿司パック200文処分也に感涙? した。
青葉城の石垣の道を車で走っていると、
物陰から間合いを計って白黒の車が登場して驚いた。
そういえば昔のモノクロのテレビ画面に、
鞍馬天狗が白刃を一閃のコマーシャルがあった。
『人の噂に、昨日も聞いた、きょうも見た。
風をバッサリ、エスピレチン。
ぴゅー........』
シンプルで、ナレーションが良かった。
マランツ#7はいろいろ試した結果、GE管に落ち着いた。
ジャズの太い音には、よさそうである。
2009.2/26


予期せぬ訪問者

2021年06月03日 | 写楽人のお話


むかしお世話になったところに、いろいろな出来事があった。
「近所のお巡りさんが、通路のドアから身を乗り出しているが、どうしますか」
4階の食堂で夜食を済ませラインに戻ると、ご注進があった。
行ってみると、目黒通りの交番の人である。
毎日通って見知っているその御仁は、世話好きのタメのある人物であるが、
つい先日まで、どうしたことか御自分たちで建物を金網で覆い、
竹篭に入った水沢藩の高野長英のようにしていたから、通勤時の評判になっていた。
見ちゃだめ、と申し合わせていたのが、乱も収まって金網も取れ、
火事とケンカの花のお江戸も太平に戻った。
大所帯のこちらが夜間にどういう仕事をしているか、
工場を見たがっている様子だが、どうしたものか、
近所付合いであり、当方の一存で入ってもらうことにした。
「これが、写真をつくるところですかーぁ 」
明るいなかにさまざま機械が動いて、若い衆が立ち働いているところを、
もの珍しそうにしている。
オーディオ・アンプと同じ国、スイス製グレタッグ社のマシンは、
1時間に7560枚の写真を、矢のように焼き付けていた。
「おやおや、これは 」
ラインで目ざとく見つけた写真を、お巡りさんは感に堪えぬように手に取った。
それは、多才で剛腕な営業のタイアップ「ファンタジック水着撮影会」の1枚で、
傍には不良品の大量に棄てられたダンボール箱がある。
「モデルさんは、自分のところに人を集めようとして○○なこともあるんでしょ 」
などと、写真を手にとって、踊り子のマネージャーのような珍案を繰り出したので、
ただのメガネの制服人ではない。
まじめな社風を思んばかって、箱から選んだ数枚を渡し、
「そういえば出荷基準の参考までに、ご意見を聞きたいのでよろしく」
と言ってみた。
「では、お預かりして本庁に問い合わせましょう」
頷いて帰っていった。
後日、次のようなみことのりが返ってきた。
「この問い合わせに、戦前の検閲の復活になるようなことは
できません。良識の基準でどうぞ 」
あのころは、水着のほかにもスーパーカー・ブームで、
雑誌の付録に付ける『ランボルギーニ』の生写真を、
大量に講○社に納めたり、していた。
2008.1/29


アヴェドン

2021年06月01日 | 写楽人のお話


現像されたフイルムが滝のようにハンガーに釣り下がってブラブラと出てきていたが、
或る時からロール状に処理されるようになった。
通路を通りながら、つい横目で観察してしまうのがよその職場だ。
そこは謹厳で正確な仕事ぶりで昔から鳴らしており、
皆な兵隊のように折り目正しく、何かと絵になっている。
あるとき、フイルムを何本かダメにする事故があって、
念のため神棚も祀られた。
どうも、それにくらべて我々の居るところは、
マイルス8重奏団の録音現場のように....だったか。
ひょろりとした彼が、ゴム手袋にゴムの前掛けで、
腰を低くして業務連絡してくるとき、その迫力の無さに油断していたが、
四階の食堂で一服していると、思いがけず声を掛けてきた。
「こんなの、どうです」
エッフェル塔を遠景にした石畳にハイヒールが乗っている、
大きな写真集のワン・シーンである。
『リチャード・アヴェドン』か。
ほかにどんなお宝が、彼の家にあるのか、
何度か交渉したのだがついに出撃は叶わなかった。
ところで、五味康佑さんにマイルスを聴かせるなら、
バッキングもタメのある、このへんのLPが良いのか。
―― つまるところ、言葉で表現できないところから音楽は始まらなければならない。
タンノイでマイルスを聴けば、痛切なる音色がそう語っている――
彼に『アメリカの音』を書かせたかった。
2008.1/28

トゥオネラの白鳥

2021年05月14日 | 写楽人のお話


どこかに忘れた憧れを呼び戻そうとする、
静寂のなかに息づいている呼び声が聞こえてくる。
この写真は、先日の客人がもってきてくださった作品の1枚だ。
当方も、伊豆沼に遠征したことがあって、はたしてこのようなシーンが、
あの沼のどこにかくれていたのかと、びっくりした。
腕におぼえのある人々が、ちょっと刀の鍔をパチンと鳴らしてみせた感じが楽しい。
まだほかにも、大勢の腕利きのひとたちが控えているので、
オーディオ装置だけではなく、絶景のフレームを見せていただきたいものだ。
ラックスの38FDというアンプでジャズを聴くこのドラマーは、
カメラとスティックを自在に操って、あるときはロイスで控えめに珈琲を飲む。
この日は、棚から抜いてきたというソニー・スティットのアルバムを、
写真と一緒に楽しませていただいた至福の一時。
わかりきったことを言うようだが「白鳥の写真」についてこの一枚を選んだ感想を。
絵は寒鴉枯木、歌は雪月花、ゲージツは真善美破。
写真の「真理」は、左上の民家の灯りにあって、
蕪村の「五月雨や大河を前に家二軒」とちがい、
一軒であるところ自然の闇と白鳥との関係に絶妙のバランスを見せる。
「善」は三羽の鳥の物語る平安。
「美」はめずらしい光の角度ともろもろのタイミングという、
真善美のそなわった佳品と感服しました。
もし、家が3軒並んでいたら、黒沢明なら二軒をつぶすのでは。
2007.11/18

宇宙のタンノイ

2020年09月22日 | 写楽人のお話


「アポロは本当に月に降りたのでしょうか」
4チャンネル・マルチ装置を謳歌している『立花隆』氏に、
ジャズのことよりそれを問いたい。
ガラスはアモルファス。
月に持っていくハッセルブラッドにアモルファスはまずい。
そこでツァイスは水晶を磨いて月面用結晶レンズを造った。
これなら宇宙線にも紫外線にも熱膨張にも大丈夫。
では宇宙に行くオーディオマニアのために使われるスピーカーはタンノイ?
月より遠い千葉と埼玉からジャズ好きの御仁が二人、
車でお見えになって「あああ、遠かった」。
昨年おいでの時と、音がまったく変わっていたので、はてな?
「スリー・ブラインド・マイスですね」
お解りの貴殿もオーディオ・マニアでしょう。
☆「息子が帰ってくるので」と缶ビールを購入のおばあちゃん。
「よっこらしょ。膝に水がたまったの、おかねがたまらないで」...ぐふ
☆写真はポルシェ・デザイン研究所のコンタックスRTS。
ハッセルブラッドと同じツァイスのレンズ。シャドーの描写が良いのは、タンノイと同じ。
2006.8/3



全暗室

2020年09月06日 | 写楽人のお話


「こんにちは、」 とROYCEにやってきた男性が、
当方を見てあんまり嬉しそうなので、ちょっと質問させていただいた。
「何がそんなに楽しいの?」
「東京からきて青森まで遊びにいきますが、友人から途中で寄るように言われ、
ずいぶん探しました」
青年が勤務される某会社であるが、むかしその印画紙工場を、
見学せていただいたことを思い出した。
新聞紙大に切断された全倍というサイズの印画紙を、
大きな作業台の上で梱包するラインがあって、
その20畳くらいの部屋には、
「若い女性が10人でチームを組んで真っ暗な何も見えない暗室にして働いている」
と言い含められた。
当方は、それではとおおいに緊張して入室した。
あんのじょう、真っ暗で何にも見えなかったが、
次第にザワザワ、ゴソゴソ聞こえてくる音によって、
前後左右のパースペクティブや人の気配がだんだん明確になっていくのだ。
これは見学ではなく聴学だろうが、
暗い部屋では、新しい美の基準が生まれているというか、
なにか溌剌とした瑞々しい音があのとき溢れていたような気がする。
『タンノイ』もまずは瑞々しい音が嬉しい。
2006.5/3

写真家KS氏

2020年08月27日 | 写楽人のお話


四年前の秋に、赤いリュックを背負った人が、青葉町の事務所に入ってこられて
「ハハーッ、よろしく御批評をたまわりたい」
冠っていた帽子をとられた。
それが初対面のKS氏であったが、いったい何ごとか?
KS氏は、リュックを開くと四ッ切りサイズに拡大した山岳写真を何枚もテーブルに陳べ、
軽快な物腰は、これから米寿を迎える人にはとてもみえなかった。
写真から放たれる透明な叙情に、しばらく魅入り、
写真を見て、思い浮かんだ事があった。
駅前から上ノ橋通りをのんびり行くと、坂の上に白い雪を少し残した須川岳があらわれる。
あの山に初めて登山したときのこと、やっとたどりついた温泉の売店には、
山菜、キノコ、栗羊羹、マムシの干物、山女の塩焼き、缶ビール、地酒
などを目当てに、どこからこれほどの人がと思うほど集まった老若男女で賑わって、
皆、のどを潤したり腹ごしらえしている。
隣のレストランに入ったとき、大きなパネルに伸ばされた山岳写真が
20枚ほど壁に飾られているのを見たが、
テーブル上に今ある写真と同じ、KS氏の作風だ。
新作を見ていると、昭和のはじめに、須川岳に登る交通のなかったブンシロウさんが、
地下足袋に麦わら帽のいでたちで二日がかりで登山した話が思い出される。
「天気のよい日には山頂から秋田の鳥海山が見えてナ、その向こうは日本海だ」
昔話にきかされていたが、言葉どおりの風景が画面に写されているのを見た。
須川岳山頂から望む遙か彼方、佐竹藩の方角に、
勇壮な山容をなだらかに伸ばす高い山が、
画面いっぱいに赤富士のように染まっている写真もある。
颱風一過の空気の澄んだ時、初めて撮ることのできるという遠い山、鳥海山であった。
KS氏は、霊峰にひときわ眼を細めて、撮影にまつわるさまざまの経験を
楽しそうに話されると
「プロというのはなんでも大変な仕事です」
おいしそうに一服の茶を喫されたが、茶碗を握る手は、
節くれだってグローブのように大きかった。
一人暮らしのKS氏だが、堤防の道を通ったとき屋敷は灯が消えていたので、
まだ温泉旅行の途中らしい。
2006.2/28



コンタックスを斜めに鑑賞する

2019年05月22日 | 写楽人のお話


蒙古が来る。
子供の時、一緒に遊んでいた子が池にはまって、
母親が着替えをさせながら
「わるいことすると、もっこ来るよ」
と言った。
ローマでは「ハンニバルがくるよ」と叱るらしい。
蒙古の人にはわるいが、古い記憶である。
どしゃ降りで雨戸を閉めきった暗い廊下を回ると、
節穴から外の光が座敷の障子に、庭を写していた。
ピンホールカメラの雑誌付録で、理屈がわかった。
その夜、電話が鳴って
「ジェットストリームを2枚買ったのよ」
都心で、ちかく小学校の同級会があり、
塾の塀の上を歩いている記憶が幹事に残っていた、と。
無敵のコンタックスも、カメラマンは写さないが、
高性能な、他人の記憶はあなどれぬ。
本日の日経平均は、他人の懐中ながら15,919円
2016.6/15

宇模永遠

2019年05月21日 | 写楽人のお話


ほんらい
「夢なら覚めないで」
といった宇模永遠を撮るのが高級カメラで、
音楽を録るのがケネディのナグラレコーダーか。
真剣になると筆や硯や道具を吟味し、過ぎることは無いという。
コンタックスのレンズは、ハッセルブラッドとおなじカール・ツァイスだが、
レンズマウンタ付近にMade in Germanyと刻印が有れば、
何から何まで独逸国にて調整致し候、
のあかしであるのは知られている。
そこに、関が丘の哲人が登場した。
ご本人プチッと携帯画面を押すと、
ご自宅のテーブル上に、二機の零戦が並んでいる。
うーん。
永遠を、お撮りになったも同然である。
そのとき
Shelly's Manne HoleでLARRY BUNKER のドラムスが激しくなった。
2016.6/14
午後から猛烈な雨の中をドライブして経過分析に行った。