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ロイス・タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

『夜のガスパール』

2022年04月24日 | 巡礼者の記帳


バルザックの短篇音楽談義のなかに、
「リュリがフランスに着いたころ、ドイツで音楽をわかっていたのは
ゼバスティアン・バッハだけだった 」
と書いてあると。
廊下の日溜りで新聞に眼を通しながら、
最初のページの左下段にクスッとやったりする。
そのとき、小さな築山に野鳥がバサバサ音をたてて飛んで来るのは、
パン屑のおこぼれを、よろしく催促しているのである。
音楽がわかる、という意味はともかく、
当方はラベルの作曲した至高の難曲「夜のガスパール 」を聴いて、
ホールから帰路に一輪の薔薇を思い浮かべるような演奏が良い。
夜のガスパールは、ベルトランによって、1830年代のパリの個人的叙情を
110ペ-ジ、53篇にまとめたものだが、
ラベルには芸術的希求であったものか、
ともかく未知の宇宙を多数の音符を並べて、3篇完成させた。
芽吹きを眺める庭に、今年も数輪咲くとして、
めったに見られぬ理想の一輪は名付けて『夜のガスパール 』
3月28日に調べると植物雑誌に薔薇の写真が有った。
2013.4.1


トロンボーン奏者は道奥へ

2020年09月09日 | 巡礼者の記帳


月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
梅雨入りも近い道奥に分け入って、
東北道を新車で駆け登った水戸のタンノイ氏は週末ROYCEに居た。
トロンボーン奏者でもある御仁に尋ねた。
「ブラームスの曲にどうしてフランス人は違和感をもつのですか?」
「それはフランス人にとって、たぶん曲がマジメで田舎くさいからです」
最初は小さく笑い、たまらずハッハ。
ブラームスを気に入って人後に落ちない当方、自分と同時に
池袋のB氏を思い出したのが本当に申し訳ない。
「調べれば解りますが、マーラー好きでブルックナー好きはほとんどいません」
「マーラーは誕生が交響曲一番で、人生の終焉が十番ですから、十番の演奏の時は、われわれトロンボーンは途中から出番が無くなって、次第にコト切れるのをじっと下を向いて
待つしかないのですよ、どんどん終わりにむかって演奏が進行して行くのを...」
穏やかなこの方の、その場の様子が浮かんだ。
「ブルックナーは、教会オルガンのオーケストラ版ですから、再生装置が立派なほど
作品は引き立ちますが中身はからっぽだと言う人もいます。マニアックなフアンもいますが」
ブルックナー開始や、ブルックナー休止、なにかと個性的なブルックナーはジャズ好きも多い。
学生の頃、某所で聴かされたタンノイの音が耳に残って、今ではオートグラフを所有される
水戸のタンノイ氏。どうやらターンテーブルが寿命なのでガラードにするか、新型にするか迷われている。
トーレンスの226は良いですよ。ロングアームの低域は格別ですよ、とささやいた。
隣町にSPレコードを聴く会というのができるそうで、ちょっと参加してみましょうかね、
と申されつつ「では8月にまた」と予告されて車上の人となった。
2006.6/10
柵の瀬橋の手前の農道に多数の車が走っている。堤防を潜り桜町へ抜ける近道だった。


エヴァンスの『ダニー・ボーイ』

2019年02月03日 | 巡礼者の記帳


これ以下はないくらいベースもドラムスも控えめに黙って、
始めからおわりまでエヴァンスの静かな旋律は奏されている。
シェリーマンやM・パドウイックではない面々とでも、
はたしてこの曲の演奏は、どうなのか。
トリオのアイルランド民謡に、巨大な期待感が星雲の
中に空いた穴のように残って、演奏は終わった。
願望を言うと、キープニュース氏的に休憩時間に近寄って、
「ベースもドラムスもこの曲にもうちょっと音符の多いところを
女王陛下は聴きたがっている」
とか言って、むりやりお願いしたい。
レコードでは次の曲にうつりシェリーマンらしい切れ味鋭いブラシの音になるが、
『ダニー・ボーイ』では無理かと、旋律の構成を思い出してみる。
もう一度聴いてみると、エヴァンスのピアノがタンノイの空間に
大きな音像で叙情的に響いて、M・パドウイックが次の間にズイーンと低く唸ると、
シェリーマンが小さく固いカキーンという音を鳴らす。
やっぱりこれでよいのか、テーマはエムパシーである。
客人から、カフェオレのペットボトルをいただいた。
2012.2/22


浅草橋の客

2018年10月22日 | 巡礼者の記帳


冬の橋を渡るとき、一関も、川面で羽根を休める渡り鳥が見える。
ジャズで『橋』といえば、マンハッタンとブロンクスのウイリアムスバーク橋の、
ロリンズ・スポットを、誰でも知っているが。
ロリンズはそこでトレーン、オーネット、ドルフィー達の、
イディオム『モード』の風を哲学していたと。
当方にとって冬の橋は、哲学するには寒い。
シベリアから、越冬に日本をめざし南下する鳥にモードを見た人々が、
朝も早くから渡りをつけ、ついに現在の群れ集まる磐井川の光景になった。
あるとき、小さい子をつれてエサを持ち、岸辺まで行った。
離れた流れにいる鳥集団にむけ、
「勢いよく!」
と言うと、うなずいた子はおかっぱの髪を揺らせて放った瞬間、
勢いに暗黙の完璧を期すあまり、エサごとからだも飛んでザブンと水に落ちていた。
うーむ・・・
隊列を組んで頭上近くをよぎっていく白鳥の、
羽根の風切り音がする胴体を見上げる気分は格別でいたとき、
いつからか、それがあぶない、しばらく息を止めるのが良いという。
渡り鳥の運ぶインフルエンザはわかっていたことだが、
今年はいよいよ撒餌を中止するまでになった。
ブレーズ・パスカルには、人間は考える葦であるが、
ハクチョウには、突然の不義理がわからないであろう。
春になると、葦の生えた岸から一斉に北を目指して離陸する白鳥も、
いずれ何事か考える葦になるのか。
1962年、ロリンズはイディオムの答えをRCAに録音し、
第一作の『The Bridge』など6枚リリースした。
『下北沢のまさこ』に良く行きました、という浅草橋のいなせな男女が登場して、
タンノイでロリンズを聴く年の暮れ。
2008.12/31

亥年のお正月

2018年06月17日 | 巡礼者の記帳


「あれはダイナコ25でしょう。あのくらいの小ささのスピーカーで、
ロイヤルの音を出したいものです」
中央のスピーカーを眺めながら、金鉱脈資源を持たれて悠々自適の、
オーディオ博士は申される。
いずれ中国の人口を考えると、ロイヤルの大きさは資源活用に無理がある。
「オーディオはスピーカーの性能半分、アンプの性能半分です。
その両方を開発して、マスターテープでバン!と鳴らすのが最善です」
ソースはやはりマスターテープに理があるのか。
「わたしは良いマグネットを持っているので、振動系だけうまく開発できると良いのです」
ウエスターンとかハイルドライバー…と口の中で呪文のようにつぶやかれると、
珈琲カップを口に運びおいしそうに飲み干し、
「そうそう、わたしはバッハも聴きますので、ジャズもクラシックも聴けるスピーカーにしたいと思います。
さて、これから秋田の方に廻ってみましょうか」
もう外は暗くなっているが、大丈夫だろうか?
「日本では、500キロの移動も、アメリカなら1000キロです」
WHyAAー、なかなか豪快な人物だ。
そういえば、最近手に入れたコーヒー・グラインダーは中古のナショナル製で、
メッサーシュミットのカウリングのような先に臼刃が摺り合っている。
最初に挽いたら不揃いの妙な粉が落ちてきて愕然とした。
半日がかりで分解清掃し、重いグラインダーは音も静かにビチビチと、
珈琲豆を挽くようになったので、ナショナルを見直した。
最近ハリウッドのMr.ケンが日本向けホームページを開きオーディオ通販を開始したようだ。
2007.1/3

秋田J・P氏の旅

2018年03月23日 | 巡礼者の記帳


かの国が打ち上げた謎の飛翔体は一関の頭上を越え、三陸沖に落下した。
そのさなか、秋田J・P氏がお見えになった。
J・P氏は、愛読書を小脇に各地のジャズ喫茶を渉猟して、
網走のジャズ喫茶に行ってみたり、金沢の喫茶「ロレンス」を訪ねたのも
五木寛之氏が行きつけの店と知ったから。
「なかなか雰囲気がありましたね」と、言葉少なに喜ばれていた。
晴耕雨読の人ときいて「これからは農業の時代でしょう」と申し上げると、
「朝四時に、星を見ながら田圃に出掛ける仕事ですけれど」
先日も「メグ」に遠征されたそうだが、御大はPCMジャズ放送で言っている。
「ジャズ喫茶はオヤジが店に出張っていなければ」
心情はともかく、あまりの忙しさに、思うに任せないのかもしれない。
ベース・テクニックがジャズの選択を変えたジャコ・パストリアスを、
タンノイで聴いてみた。

写真の大先生が温泉からお帰りになった。
柿の木のアマガエルが八叉のおろちに狙われているのでひと騒動。
2006.7/2


赤いボルボの客

2017年10月02日 | 巡礼者の記帳


I氏のことを、その客は言った。
「Kがルートヴィッヒ・フォン・ケッヘルによる作品番号であることをそのIさんから教わったのです」
I氏が初めてROYCEに見えたのは、もう5年ほど前になるが、赤いボルボに乗って突然やってくると
「盛岡のホールで聴いたライブとまったく同じ音です」
とロイヤルから聴こえるキャスリーン・バトルを言った。
「こんなによい音が出るのなら手放さなかったのですが、今はスペンドールで聴いています」
消えたロイヤルを思い、背筋を伸ばし身動ぎもせず吸い込まれるように聴いていた。
久しぶりで姿をみせてくださった今回、持参されたソプラノのCDをリクエストして何枚か聴いた。
そのとき携帯電話が鳴って、食事に間に合うように戻ってほしいと奥方が申されているからと席を立たれた。
3時間ほど離れた海辺の街に住んでおられるそうである。

テテのマスター

2017年09月27日 | 巡礼者の記帳


上落合のJazz喫茶テテの隠れ店主から写真と手紙。
「ビルエバンスが女々しい?ピアニストだというアレですが、ピアノは様々な顔があるのは当然で、じゃー一体女々しいとはどういう意味なのか?あのジョーオーバニーだって立派なハードバッパーだし、バドパウエルだってリリカルな曲を弾くときは女々しくもなる。それが独自の表現力ではないでしょうか?モンクやソニークラークも鍵盤の上で鳴くときもあるのだ。
・・・以上が私なりの解釈です。
春に、またおじゃましますのでよろしく」
テテの隠れ店主は、たしかマランツ社にも居られたことがある。
この人のLP.CDのコレクションの分量を見て、そして全国のジャズ喫茶マッチどっさりのコレクションを見てここまでやったかと、兜を脱いだ。
相倉久人氏は「ジャズからの挨拶」に書いていた。
『カウントベイシーのオーケストラの音が、あんなにソフトなサウンドを持っていようとは、実際にナマの音を聴くまでは無想だにしなかった。サドオーケストラの第一音もまた、ソフトでしなやかだった。十三本の管が、そろってホワーンという柔かな音を出したとたん、背筋を思わず戦りつが走った』
堅い装置から柔らかな音を出し、柔らかな装置から堅い音を鳴らすということか。
KG氏から届けられた芸術新潮の五味康佑さんの言葉に目が点になった。
『はじめに言っておかねばならないが、再生装置のスピーカーは沈黙したがっている、音を出すより黙りたがっている。これを悟るのに私は三十年かかったように思う。それを鳴らすために電気を入れるとしよう、プレーヤーのターンテーブルがまず、回り出す。それへレコードを載せる以前のたまゆらの静謐の中に、すでにスピーカーの意志的沈黙ははじまる。すぐれた再生装置におけるほど、どんな華麗な音を鳴らすよりも沈黙こそは、持てる機能を発揮した状態である。装置が優れているほどこの沈黙は美い。どう説明したら分かってもらえようか』
そのような音があろうとは。
先刻、三陸のほうからお見えになった客があっさりと申された。
「タンノイ・ロイヤルを発注しました。女房には、まだ言ってませんが」
驚いて、これまでのJBLはどうするのかたずねた。
「この音には、びっくりしました。JBLはお休みです」
音色と音楽と両輪に乗って、ページは次の予期せぬ世界へ

櫻花の客

2017年09月27日 | 巡礼者の記帳



「コーヒーを飲めますか?」とその老婦人はRoyceに入ってきた。
「ジャズを聴く店ですよ」と念を押すと、子供がジャズが好きで経験がある、大丈夫だからと窓際の椅子に座った。
子供といっても成人で、最近仕事の転勤で一緒に付いて一関にやってきたそのご婦人だが、生まれた家の庭に、親が大切にしていた大きな桜の樹があった。
引越しの整理で庭の手入れのついでに何本かの樹も間引きしてもらった。
そのとき台所にいた老婦人は胸騒ぎを感じた。
庭に出てみると、残しておくはずの大切な桜の木も切り倒されていた。
張り切って働いていた職人達は、なぜ老婦人が桜の樹に手を当てて涙を流しているのか戸惑っていた。
その、花のついた一枝を、まだ花瓶に生けているというので、挿し木にしたら生きるのではないかと申し上げたら嬉しそうだった。
一関に越してきた老婦人は、磐井川の堤防を散歩していて稲の苗を拾った。
家に帰って花瓶に活けたら成長して稲穂が膨らんだ。
ある静かな晩に突然パチン!と金属のような鋭い音がして、それは穂のはじける音でしたと「森田たま」のエッセイのようである。
「和太鼓の音は嫌いではありませんが、敲いている姿を見るのは苦しそうで好きではありません」
と微妙な言い回しに静と動の美を締めくくって、お帰りになった。

セシル・ティラーよ、ちょっと待て

2017年03月29日 | 巡礼者の記帳


セシル・テイラーをバックに、

礼状を書く。

そこに電話が鳴ると、

何年か声を聞いていないS先生であった。

―――50年ぶりに早い降雪のようですが、お変わりありませんか。

「今月の雑誌に、わたしの装置が紹介されていますので、
書店で、まあどうぞ」

ますます名盤ライブラリーを拡充されて、

蒼々たる陣容のS先生は、道をまっしぐらであった。

いざよいの いずれか今朝に 残る菊

鶴見区の客

2017年03月26日 | 巡礼者の記帳


トランペットの鳴っている筒先が、

上を向く時と、下に向く時に、

タンノイは、どこを向いている?

そのとき、

鶴見区の客人が、お見えになった。

―――横浜に、どうして横浜城がないのでしょう?

「それは、東海道から離れていたからです」

絵図は、神奈川宿から保土ヶ谷宿に行っている。

演奏会で録音する機器の性能や、マイクのことが、

ヘルマンスかヴァンゲルダーか、

ただの人ではなさそうである。

中国へ輸出した液晶部品の話など、いろいろ

お聞きしたかったが時間はあっというまである。

―――いったい、ご自宅の音響はどのような。

「38センチウーハーが、各二本と、コーンの中、高域です」

それほどでもありませんとは、これいかに。

鶴見区の人口はいま38万人であると。

青森リンゴの箱届く。
かたじけなし。

タンノイ・エジンバラ

2017年03月24日 | 巡礼者の記帳


A面がソリチュードでB面がフルハウス。

そのレコード盤がどこかに有ったな、と思っている夕刻に、

急いでいる山崎努氏に似た中年客が、

仕立ての良いコートを翻して入ってきた。

「わたしはジャズもクラシックもオーディオもわかりませんが、
ちょっとよいですか」

「恩師の学長がタンノイ好きでした」

「義父の使ったテクニクス・ホーンの装置が家にはあります」

「エジンバラに行って、向こうはウイスキー高いですね」

やがてスピーカーのプレートを傍まで寄って読み取ると、去っていった。

エジンバラには、ホムーズを著した人の学んだ名所がある。

初雪や 水仙の葉の たわむまで

フルトヴェングラー17分48秒

2017年03月24日 | 巡礼者の記帳

マイルス殿が若いコルトレーン氏を楽屋に呼んで、

「ユーのソロは、どうしてフレーズがあんなに長いんだ?
みんな困ってるだろ」

「どこで止めたら良いのかな」

「口から放せば、いいんだよ」

伝聞だが、お二人はジャズの至宝といわれている。

九番合唱の第一楽章を聴いていると、

その話を思い出すのが不思議だ。

ベートーヴェンも、音符を終始嵌合させて、

こちらが針を上げるスキをまったく見せない。

カラヤンは   15分36秒
トスカニーニは 13分30秒
アバドは     17分
マルケビッチは 16分25秒
フルトヴェングラー17分48秒

みな、楽譜どうりにやっているそうだ。

盛岡から、二本差しの使い手がお見えになった。

アメリカタンノイ、
JBL-L200、
ボザーク、
ロイヤルに入替えをねらっておられる御仁、

お話を伺うまでもなく、隙のない御様子は

長い道をひた走ってこられた人々である。

ご自慢の焙煎豆を拝領した。

名月の 見所問はむ 旅寝せん

多摩の客

2017年03月20日 | 巡礼者の記帳


子供の頃遊びに行った家のひとつに、

三反田の当時珍しい4階建てのアパートがあった。

雑然と本に囲まれる家の主は、小学生のこちらを見ていたが、

「煎餅を買ってこい」と、傍にいた生徒に早口で話した。

見かけたのはそれが一度であるが、

いま喫茶に入ってきた客人を見て、

はてな、と思った。

年代的に有り得ないが、風貌が似ている。

むこうも、じっとこちらを見ている。

多摩の客は、水沢のジャズ喫茶を2軒、

梯子してこられた様子を、話してくださった。

スタンリー・タレンタイン氏のブルージーな演奏も、

『ジャズ喫茶こだわりの名盤』には、カウントされていない。

61年といえば、ヴァンガードのエバンス録音もリリースされていたのか。

一時盛大であったフュージョンから、ソウル・ジャズに回帰しておられる。

初雪が、降った。

廊下のうさぎにヒーターを入れるらしい。

温泉

2017年03月20日 | 巡礼者の記帳


朝、ゴミを棄てに行く。

山と積まれた袋の手前に、小学生の答案が見える。

赤ペンで正解に丸があるのは、

50年前と、おなじようである。

なつかしいな。

おっと、点数は90点で、名前まで見える。

午後になって、乗り心地のよさそうな車が停まった。

八幡平市から学園祭を見に来ました、と申される客人。

「盛岡にも、タンノイを聴かせる喫茶店があります」

―――そちらの市に行ったとき、どこを観るのが良いでしょう?

「松川温泉も良いですが、日本一?高い標高にある藤七温泉が有名です。
岩手山が、湯船の眼下に見えるのです」

―――道のりは、どうなっていますか?

「盛岡から1時間で、一関から2時間ですが、
冬季は、登ることができません」

暖かな部屋で、景色を見ながらタンノイを聴く季節になった。

一日に七度も雨が降る「ななしぐれやま」も、

いまころ雪である。