
バルザックの短篇音楽談義のなかに、
「リュリがフランスに着いたころ、ドイツで音楽をわかっていたのは
ゼバスティアン・バッハだけだった 」
と書いてあると。
廊下の日溜りで新聞に眼を通しながら、
最初のページの左下段にクスッとやったりする。
そのとき、小さな築山に野鳥がバサバサ音をたてて飛んで来るのは、
パン屑のおこぼれを、よろしく催促しているのである。
音楽がわかる、という意味はともかく、
当方はラベルの作曲した至高の難曲「夜のガスパール 」を聴いて、
ホールから帰路に一輪の薔薇を思い浮かべるような演奏が良い。
夜のガスパールは、ベルトランによって、1830年代のパリの個人的叙情を
110ペ-ジ、53篇にまとめたものだが、
ラベルには芸術的希求であったものか、
ともかく未知の宇宙を多数の音符を並べて、3篇完成させた。
芽吹きを眺める庭に、今年も数輪咲くとして、
めったに見られぬ理想の一輪は名付けて『夜のガスパール 』
3月28日に調べると植物雑誌に薔薇の写真が有った。
2013.4.1