
天気予報をながめて、夜の奥大道を一路、北に走った。
花巻街道にさしかかったころ、突然の牡丹雪が
夜空からフロントガラスに盛大に降りかかってきた。
ライトアップして走ると、雪女が衣を翻した白い壁で前が見えない。
おまけに、前方にビルデイングでも立ち塞がっているのだろうか、
屋上に大きなライトが3個点灯し、中央のライトが
バッ!バッ! と赤く点滅している。
突然、夜空をフワッと動いたので気がついたが、
奥大道の傍にある飛行場から離陸した巨大な旅客機であった。
ここが花巻空港らしい。
頭上の点滅するこれみよがしのライトは、
雪の夜の空にみるみる離れて小さくなった。
ヤコペッテイの映画 『世界残酷物語 』 に、
地上に二本の滑走路が見える。
太い一本は外国軍隊の造った本格的滑走路であり、
フエンスの傍にそまつに並んで造られたもう一本の草をむしった滑走路は、
村人が総出で、真似をしてこしらえたものである。
轟音をたてて着陸する隣りの輸送機を見ながら、酋長は、憮然として言う。
「あの天からの贈り物は、ほんらい我々のところに来るはずのものだ 」
なるほど。
すると酋長は一計を案じ、こんどは夜に村人を総出に松明を持たせ、
手製の滑走路の両側に並んでライトアップし、天からの着陸を待っている。
ここは、笑うところなのだろうか。
最近になって、映像はヤコペッテイ一流のジョークではないか、と思う。
奥大道は、いまでは国道4号線と名が付いて、
一里塚や金色の笠卒塔婆のかわりに、点滅する信号機が路面を照らす。
雪道を盛岡から無事に帰宅し、オーディオの席について、
英国のタンノイ社が米国で売りだした「アメリカ・タンノイ」の
音響に興味を持った。
『アメリカG・R・F』であるとか『タンノイ・ロックウッド・メージャー』など、
相当な外見と轟音で鳴ると騒がれて、好事家を悩ませている。
ユニットはモニターゴールド15なので、米松の箱を拵え、
オルトラーニ作曲『モア 』 をいつか聴いてみたい。
2013.12.30