
タンノイ・ウエストミンスターを試聴できると新聞広告でその店を知って、いつか訪ねてみようと思っていたが、時が過ぎた。
ポチが西向けば尾は東、国道4号線を三十キロ北上すると水沢市の佐倉に着く。
しかし佐倉は広かった。
金ケ崎のプールの帰り道、夏の日ざしの照りつける中、道ゆく高校生やらオヤジさんに尋ねてやっとたどり着くことができた『J』である。
モダンな店内に8組ほどセットされた現代スピーカーから、さっそくタンノイを鳴らしていただいた。
アキュフェースのトランジスタアンプによる音は、ジャズもクラシックも整ったバランスである。
これほど多岐に品揃えしてある店はめずらしいが、やはり水沢市の底力というものか。
ガラスドアで仕切られた別室に、ビデオの大型スクリーンとサウンド・トラックをバックアップする装置があった。
この音が、小型スピーカーとは思えない強烈な馬力とスケールで、堂々たるサウンドである。
ジャズ・ビデオでも上映した場合、オーディオの王道はいったいどうなるのか、と心配したが、時間をかけて聴いてみるとそう簡単ではないジャズの音。
ポパイのマンガでハンバーガーをつまむ人がこちらをみて笑っているが、店員さんのようである。
SPUの針交換は一週間で戻るとのことで、ついでにオルトフォンのコネクトケーブルをケースから選んで、凱旋した。
K氏にお話しすると、このハンバーガーさんのことはご存じで、K氏宅にも水沢から出張されたことがあるらしい。
「とてもよい人です」と、話しておられた。
『J』の近くには、30品食べ放題の店があると、呉服商のかたが楊枝を咥えながらお腹をさすってジャズを聴いている。
御仲間と「当分もうけっこう」と言いながら、残したカニとアワビを残念がっているのを聞くと、ロリンズのブローとあわせて、忘れられずに居た。
そこで『J』から足を伸ばし饗宴に参じたところ、寿司から焼き肉、団子にケーキと進んで、時間制限の競技をがんばって、母屋の住人が帰りの車で「苦しい」とハンカチで顔を蔽い、「また行こう」と言っても返事がなかったのが残念だ。
2006.3/29